政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は7日の参院決算委で、東京五輪に関し「開催によるリスク、どう低減できるかの選択肢を含めて示すのが責務だと思っている」と述べた。
36人もの犠牲者を出した京都アニメーション放火殺人事件は、自身も大やけどを負いながら一命を取り留めた青葉真司被告(42)が2020年12月に殺人などの罪で起訴され、大きな節目を迎えた。
こうした中、青葉被告が「京アニにパクられた」と主張してきた小説のシーンがどのようなものか、具体的に見えてきた。アニメのオリジナリティーを巡るトラブルは過去にも起きているが、関係者は「京アニ事件が起きたことで、全てを『笑いごと』として切って捨てるわけにはいかなくなった」と対応に苦慮する。(岸本鉄平、本田貴信)
【写真】事件2日前、防犯カメラがとらえた青葉被告
拘置所のベッドで捜査員に打ち明けた
京アニ作品の展示会場に並んだテレビアニメ「ツルネ―風舞高校弓道部」のグッズ。青葉被告は「京アニにパクられたのは、ツルネの主人公たちが安売りの肉を買うシーン」と供述したという(徳島市の書店、2019年7月24日撮影)
「京アニにパクられたのは、ツルネの主人公たちが安売りの肉を買うシーン」 事件後に入院した病院で手術を受け、九死に一生を得た青葉被告は、逮捕後に勾留された大阪拘置所のベッドに横たわり、目の前の捜査員にこう打ち明けたという。 京都アニメーション(本社・宇治市木幡)が制作したアニメ「ツルネ-風舞高校弓道部」は弓道に青春をかける男子高校生たちの物語で、2018年から19年にかけてテレビ放映された。
青葉被告が言及したとされる場面は、第5話「矢の使いで」に登場するわずか2分半ほどのシーン。合宿中にスーパーマーケットを訪れた主人公たちが、値引きされた豚肉や牛肉などの食材を選びながら会話を交わすという、ごくありふれた描写だ。
京アニ側「盗用余地なかった」
「他の作品と違いを生み出すのは難しい」と語る上宇都さん
京アニ事件後、青葉被告が京アニの原作公募事業「京都アニメーション大賞」に小説を応募していたことが明らかになった。 だが、京アニ側は、青葉被告の小説は形式的な1次審査で落選していたとし、中身を確認する前に除外されていて「盗用の余地はなかった」と断言する。 「京アニに小説をパクられた」とは一体、何を意味するのか。
「シナリオを作る際に多少の工夫を凝らしても、他の作品と明確な違いを生み出すのは本当に難しい」
大阪アニメ・声優&eスポーツ専門学校(大阪市)講師で、フリーアニメーターの上宇都(かみうと)辰夫さん(56)が例に挙げるのは、ツルネと同じ「学園もの」と呼ばれる人気のジャンル。
その多くは、登下校や授業風景、放課後のクラブ活動、友人との交流など普遍的な枠組みの中で展開する。他の作品と似ている場面が登場するのも、当然と言えば当然だ。
「それにもかかわらず自分の発想を『独創的』と錯覚してしまうと、あらゆる創作物が『盗用』になりかねない」 上宇都さんは、京アニが創業して間もない1985年から2018年まで同社に在籍した。 事件で犠牲になった仲間とともに表現活動の最前線に身を置いてきた立場だからこそ、「小説をパクられた」とする青葉被告の主張に違和感を抱く。
エヴァンゲリオンでも「盗作話」
「エヴァ」制作時のトラブルを回想する武田さん
アニメのオリジナリティーを巡るトラブルは、京アニに限った話ではない。1990年代に社会現象を巻き起こしたSF作品「新世紀エヴァンゲリオン」でも同様の問題は起きた。
同作では、少年少女が人型兵器を操り、「使徒」と呼ばれる生命体と激闘を繰り広げる。 手掛けた「ガイナックス」設立メンバーの1人で、現在は別会社「GAINAX(ガイナックス)京都」(京都市左京区)を経営する武田康廣さん(63)は、会社に分厚い手紙が送りつけられてきた時のことをはっきりと覚えている。
「エヴァは自分のアイデア」「高校生の頃、鉛筆で教室の机の上に落書きした物語を盗まれた」 便箋には突拍子もない恨みつらみが書かれていた。
脅迫や業務妨害…逮捕者出るケースも
煙を上げる京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)
2019年7月の京アニ事件後にはこんな出来事もあった。
「エヴァ」シリーズ監督の庵野秀明さんが代表を務める会社に対し、ツイッターで放火をほのめかす投稿をしたとして、威力業務妨害などの容疑で男が警視庁に逮捕されたのだ。 共同通信の配信記事によると、男は「アニメの著作権は自分の家族が保有している」と主張し、数年前から誹謗(ひぼう)中傷を繰り返していたという。
トラブル未然に防ぐ手立て必要
放火された京都アニメーション第1スタジオを見つめるファンら(京都市伏見区、2019年7月31日撮影)
京アニ事件はアニメ業界にリスク管理の再考を促す。 東京の中堅スタジオは2020年夏、ホームページをリニューアルするのに合わせ、外部から送られてくる「創作物」の取り扱いに関する注意書きを掲載。
「開封せずに廃棄する」とした上で、あえて「アイデアの全部もしくは一部が、意図せず一致や類似してしまう可能性がある」と明記した。
人気アニメを手掛ける同社には、郵送やメールで創作物が届けられることも少なくない。担当者は「後々のトラブルを未然に防ぐ手立てが必要だ」と危機感を募らせる。 武田さんがため息交じりにつぶやく。
「アニメやスタジオが有名になればなるほど、この手の『盗作話』は必ず出てくる。でもね、だからと言って『放火する』とか『殺す』とか、それは明らかにおかしいでしょう」
世界で最も権威ある医学誌も東京五輪に痛烈なダメ出しだ。
>開幕まであと2か月。専門家もびっくりの対策で「安心安全の開催」と連呼していたとは、驚くばかりだ。
米医学誌ニュー・イングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(NEJM)は、新型コロナウイルス感染拡大下での東京五輪についての論文を掲載。
国際オリンピック委員会(IOC)について「五輪を進めるという決意は、最高の科学的証拠に裏付けられていない。プレーブックは、選手に自己責任で参加することを強いながら、選手が直面するさまざまなレベルのリスク評価が不十分。他の大規模なスポーツイベントからの教訓にも耳を傾けていない」と糾弾した。
IOC自慢のコロナ対策本「プレーブック」に記された策と、専門家が考えうる望ましい策を項目ごとに表で対比し説明。「選手は自分のマスクを持参」という危機意識ゼロの項目に対しては「医学的に認証されたフェイスマスク、医療用マスクの配布」としている。
東京五輪については「中止が最も安全だろう」としながらも、「世界をつなぐきわめて稀なイベントである」と五輪の力を評価。「安全に我々がつながるために、迅速に適切な議論が行われるべきだ」と提案。
「世界保健機関(WHO)は直ちに安全衛生、感染症疫学の専門家、および選手の代表者を含む緊急委員会を招集し、これらの要因を考慮し、五輪リスク管理アプローチについて助言することを推奨する」と緊急会議招集を訴えた。
開幕まであと2か月。専門家もびっくりの対策で「安心安全の開催」と連呼していたとは、驚くばかりだ。
>世界が直面している最大の脅威はウイルスそのものではなく、「地球規模の結束とリーダーシップの欠如」と指摘
【AFP=時事】(更新)世界保健機関(WHO)のテドロス・アダノム・ゲブレイェスス(Tedros Adhanom Ghebreyesus)事務局長は22日、オンライン上で開催された会議で、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)はいまだに加速しており、その影響は今後数十年も感じられることになると述べた。
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)当局が主催した保健分野に関するビデオ会議で同事務局長は、世界が直面している最大の脅威はウイルスそのものではなく、「地球規模の結束とリーダーシップの欠如」と指摘。
「分断された世界ではパンデミックを打ち負かせない」「パンデミックの政治問題化が事態を悪化させている。われわれが皆安全になるまで、われわれの誰もが安全ではない」と話した。
さらに同事務局長は、「パンデミックはいまだに加速している」と発言。
「パンデミックは保健分野の危機を超えたものであり、経済的危機、社会的危機、また多くの国々では政治的危機でもある。その影響は数十年にわたって感じることになる」と語った。
2020年6月22日 20時41分 AFPBB News
アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ(Dubai)当局が主催した保健分野に関するビデオ会議で同事務局長は、世界が直面している最大の脅威はウイルスそのものではなく、「地球規模の結束とリーダーシップの欠如」と指摘。
「分断された世界ではパンデミックを打ち負かせない」「パンデミックの政治問題化が事態を悪化させている。われわれが皆安全になるまで、われわれの誰もが安全ではない」と話した。
さらに同事務局長は、「パンデミックはいまだに加速している」と発言。
「パンデミックは保健分野の危機を超えたものであり、経済的危機、社会的危機、また多くの国々では政治的危機でもある。その影響は数十年にわたって感じることになる」と語った。
2020年6月22日 20時41分 AFPBB News
2020年東京五輪を巡り招致委員会がコンサルタント契約を結び、2億円超を振り込んだシンガポールの会社の口座から、国際オリンピック委員会(IOC)委員だったラミン・ディアク氏(87)=セネガル=の息子、パパマッサタ氏(55)とその会社に約37万ドル(当時のレートで約3700万円)が送金されていたことが20日、分かった。
ラミン氏は当時、開催地決定でアフリカ票取りまとめに影響力がある有力委員だった。
招致委の入金まで休眠状態だった口座からの送金は、五輪開催都市が決定した13年9月のIOC総会の前後に集中。招致委の資金が不正に使われた可能性がある