掃除機で吸うのは効果ナシ 医師が解説「餅が詰まったとき」の応急処置 2年間で高齢者661人が亡くなる、生存率は17%(東洋経済オンライン) - Yahoo!ニュース
掃除機で吸うのは効果ナシ 医師が解説「餅が詰まったとき」の応急処置 2年間で高齢者661人が亡くなる、生存率は17%
1/1(水) 6:21配信
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コメント81件
東洋経済オンライン
餅を詰まらせたときの対処法は?(写真:Ayleeds/PIXTA)
正月で気をつけたいことの1つに「餅による窒息」がある。
久しぶりに子どもや孫と過ごす一家団欒の最中に突然不幸が襲う。注意すれば予防できるため、残された家族には後悔が残ることが多い。だからこそ、予防法やのどに詰まったときの対策を多くの人に知ってもらい、被害者を減らさなければならない。
【画像で見る】餅を詰まらせたときの対処法の1つ「背部叩打法」
■年間300人近くが「餅」で亡くなる
わが国では、毎年大勢の高齢者が餅による窒息で亡くなっている。消費者庁の調査によると、死者数(65歳以上)は2018年に363人、19年に298人だ。2年間の合計661人中127人が三が日の間に亡くなっている。65%が75歳以上だった。
高齢者が餅を詰まらせると、窒息死する確率が高い。
東京女子医科大学を中心とした研究チームが、2018年に『疫学雑誌』に発表した研究によると、餅によって窒息を起こした場合の1カ月の生存率は、17.2%に過ぎない。
餅が窒息を起こしやすいのは、粘り気があり、付着性が強い(くっつきやすい)からだ。
粘り気や付着性はゼリーの約100倍ともいわれている。これは餅米を構成するデンプンのほぼすべてが、アミロペクチンという成分で構成されているからだ。普通の米(うるち米)のデンプンは、アミロペクチン75%、アミロース25%で構成される。
アミロースは直鎖状の構造であるのに対し、アミロペクチンは枝分かれ構造を持ち、絡みやすい。このため、粘度や付着性が高まる。
さらに、雑煮などで温めた餅は、口に入れた後に温度が下がり硬くなるため、飲み込みにくくなる。飲み込む力が低下している高齢者ではなおさらだ。この結果、高齢者は餅をのどに詰まらせやすい。
1/1(水) 6:21配信
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餅を詰まらせたときの対処法は?(写真:Ayleeds/PIXTA)
正月で気をつけたいことの1つに「餅による窒息」がある。
久しぶりに子どもや孫と過ごす一家団欒の最中に突然不幸が襲う。注意すれば予防できるため、残された家族には後悔が残ることが多い。だからこそ、予防法やのどに詰まったときの対策を多くの人に知ってもらい、被害者を減らさなければならない。
【画像で見る】餅を詰まらせたときの対処法の1つ「背部叩打法」
■年間300人近くが「餅」で亡くなる
わが国では、毎年大勢の高齢者が餅による窒息で亡くなっている。消費者庁の調査によると、死者数(65歳以上)は2018年に363人、19年に298人だ。2年間の合計661人中127人が三が日の間に亡くなっている。65%が75歳以上だった。
高齢者が餅を詰まらせると、窒息死する確率が高い。
東京女子医科大学を中心とした研究チームが、2018年に『疫学雑誌』に発表した研究によると、餅によって窒息を起こした場合の1カ月の生存率は、17.2%に過ぎない。
餅が窒息を起こしやすいのは、粘り気があり、付着性が強い(くっつきやすい)からだ。
粘り気や付着性はゼリーの約100倍ともいわれている。これは餅米を構成するデンプンのほぼすべてが、アミロペクチンという成分で構成されているからだ。普通の米(うるち米)のデンプンは、アミロペクチン75%、アミロース25%で構成される。
アミロースは直鎖状の構造であるのに対し、アミロペクチンは枝分かれ構造を持ち、絡みやすい。このため、粘度や付着性が高まる。
さらに、雑煮などで温めた餅は、口に入れた後に温度が下がり硬くなるため、飲み込みにくくなる。飲み込む力が低下している高齢者ではなおさらだ。この結果、高齢者は餅をのどに詰まらせやすい。
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では、不幸にも窒息してしまった場合はどうすればいいのか。
■詰まらせたときに周りの人がまずすべきこと
窒息した人は苦しいため、のど元に両手をあて、息ができないことを訴えることが多い。顔面蒼白の苦悶症状で、のどが詰まっているので声が出せない。よだれを垂らすこともある。これを専門的には「チョークサイン」という。
のどを詰まらせて「チョークサイン」が出ている場合に、周囲がまずやるべきことは、呼吸ができているか否かを確認することだ。
息をしているなら、気道が完全には閉塞していない。まずは、咳をするように促すのがいい。これだけで餅による気道がふさがれた状態が解除されることがある。
一方、息をしていない場合は深刻だ。気道が完全に閉塞していることを意味するからだ。呼吸が止まると2分程度で脳にダメージが生じ始め、4~6分程度で元に戻らない状態になる。そして多くは7~10分で命を落とす。
すぐに救急車を呼ぶと同時に、以下の方法を試してほしい。通報するか迷ったら、「#7119」で相談してみるといいだろう。
■餅を詰まらせたときの対処法2つ
■餅を詰まらせて、息ができない場合①「背部叩打(こうだ)法」
この場合、周囲の人がまずやるべきことは、患者を前屈みにさせて、肩甲骨の間を手のひらでパンパンと強く叩くこと。これを専門的には「背部叩打法」という。衝撃により、気道を閉塞していた餅が外れることがある。
■餅を詰まらせて、息ができない場合②「ハイムリック法」
背部叩打法で詰まりがとれないとき、次に試みてほしいのは「ハイムリック法(腹部突き上げ法)」だ。1974年にアメリカの医師、ヘンリー・ハイムリックにより提唱された手法で、腹部を圧迫して異物を除去する。腹部を圧迫するので、妊婦や乳児には行えない
■詰まらせたときに周りの人がまずすべきこと
窒息した人は苦しいため、のど元に両手をあて、息ができないことを訴えることが多い。顔面蒼白の苦悶症状で、のどが詰まっているので声が出せない。よだれを垂らすこともある。これを専門的には「チョークサイン」という。
のどを詰まらせて「チョークサイン」が出ている場合に、周囲がまずやるべきことは、呼吸ができているか否かを確認することだ。
息をしているなら、気道が完全には閉塞していない。まずは、咳をするように促すのがいい。これだけで餅による気道がふさがれた状態が解除されることがある。
一方、息をしていない場合は深刻だ。気道が完全に閉塞していることを意味するからだ。呼吸が止まると2分程度で脳にダメージが生じ始め、4~6分程度で元に戻らない状態になる。そして多くは7~10分で命を落とす。
すぐに救急車を呼ぶと同時に、以下の方法を試してほしい。通報するか迷ったら、「#7119」で相談してみるといいだろう。
■餅を詰まらせたときの対処法2つ
■餅を詰まらせて、息ができない場合①「背部叩打(こうだ)法」
この場合、周囲の人がまずやるべきことは、患者を前屈みにさせて、肩甲骨の間を手のひらでパンパンと強く叩くこと。これを専門的には「背部叩打法」という。衝撃により、気道を閉塞していた餅が外れることがある。
■餅を詰まらせて、息ができない場合②「ハイムリック法」
背部叩打法で詰まりがとれないとき、次に試みてほしいのは「ハイムリック法(腹部突き上げ法)」だ。1974年にアメリカの医師、ヘンリー・ハイムリックにより提唱された手法で、腹部を圧迫して異物を除去する。腹部を圧迫するので、妊婦や乳児には行えない
具体的には、患者をうしろから抱え、みぞおちにこぶしを当てたら内側かつ上方向に強く押し上げる。
この2つの方法を救急隊が来るまで交互に行う。
やり方については、YouTubeの「東京消防庁公式チャンネル」の動画がわかりやすいので、ご覧いただきたい。また、掃除機による吸引は効果がないとされているので、やらないでほしい。
背部叩打法やハイムリック法で窒息が解除されなければ、胸部圧迫など応急処置をしながら、病院に搬送されるのを待つ。胸部圧迫の方法も東京消防庁公式チャンネルの動画を参考にするといいだろう。
■救急搬送しても手遅れのことが多く
病院での詳しい処置はあとで紹介するが、簡単に説明するとこうだ。
まず、気道を展開(気道を確保して呼吸を助けるために、頭部を後ろに反らせて、下あごを上げた状態にして気道の通りをよくすること)して、目で見ながら鉗子(かんし:ものをつかむときに使う医療器具)を用いて、餅を除去する。
慣れた医師なら1分以内で処置は完了するが、病院に到着したときにはすでに手遅れのことが多く、このような処置をしても、患者の回復はあまり期待できない。
以上が、餅による窒息対策の概要だ。
実は、筆者も餅を詰まらせた患者を診たことがある。初めて経験した患者は、70代の男性だった。昔の話になるが、その光景が今も忘れられない。
筆者は医学部を卒業したあと、2年目の研修を大宮赤十字病院(現:さいたま赤十字病院)で行った。当時も今も、埼玉県は医師不足だ。医師は忙しく、当直をしていると毎晩10人以上患者がやってくる。救急車で運び込まれる患者もいる。一睡もできないことも珍しくない。
一方で、年末年始の病院はがらんとして、普段の病院とはまったく違う。入院患者の多くは外泊して、家族とともに新年を迎えるからだ。とにかく患者さんが少ないので、医師や看護師ものんびりとした気分を味わえる。筆者は、この雰囲気が好きだった。
正月の当直を迎えるにあたり、先輩医師から必ず指導されることがある。それは餅による窒息への対応だ。迅速な処置が求められるからだ。
元日の夜8時頃、救急隊から「餅による窒息で心肺停止です」と連絡があった。筆者はどう対応してよいかわからず、一緒に当直していた1年先輩の医師を呼んだ。
この2つの方法を救急隊が来るまで交互に行う。
やり方については、YouTubeの「東京消防庁公式チャンネル」の動画がわかりやすいので、ご覧いただきたい。また、掃除機による吸引は効果がないとされているので、やらないでほしい。
背部叩打法やハイムリック法で窒息が解除されなければ、胸部圧迫など応急処置をしながら、病院に搬送されるのを待つ。胸部圧迫の方法も東京消防庁公式チャンネルの動画を参考にするといいだろう。
■救急搬送しても手遅れのことが多く
病院での詳しい処置はあとで紹介するが、簡単に説明するとこうだ。
まず、気道を展開(気道を確保して呼吸を助けるために、頭部を後ろに反らせて、下あごを上げた状態にして気道の通りをよくすること)して、目で見ながら鉗子(かんし:ものをつかむときに使う医療器具)を用いて、餅を除去する。
慣れた医師なら1分以内で処置は完了するが、病院に到着したときにはすでに手遅れのことが多く、このような処置をしても、患者の回復はあまり期待できない。
以上が、餅による窒息対策の概要だ。
実は、筆者も餅を詰まらせた患者を診たことがある。初めて経験した患者は、70代の男性だった。昔の話になるが、その光景が今も忘れられない。
筆者は医学部を卒業したあと、2年目の研修を大宮赤十字病院(現:さいたま赤十字病院)で行った。当時も今も、埼玉県は医師不足だ。医師は忙しく、当直をしていると毎晩10人以上患者がやってくる。救急車で運び込まれる患者もいる。一睡もできないことも珍しくない。
一方で、年末年始の病院はがらんとして、普段の病院とはまったく違う。入院患者の多くは外泊して、家族とともに新年を迎えるからだ。とにかく患者さんが少ないので、医師や看護師ものんびりとした気分を味わえる。筆者は、この雰囲気が好きだった。
正月の当直を迎えるにあたり、先輩医師から必ず指導されることがある。それは餅による窒息への対応だ。迅速な処置が求められるからだ。
元日の夜8時頃、救急隊から「餅による窒息で心肺停止です」と連絡があった。筆者はどう対応してよいかわからず、一緒に当直していた1年先輩の医師を呼んだ。
先輩医師は患者が救急外来に到着すると、気道確保を試み、その最中に鉗子を用いて、気道に詰まっていた餅を除去した。直径が3センチほどの小さな餅の切れ端だった。その後、心臓マッサージや点滴で血圧を上げる薬を投与したが、心拍が再開することはなかった。
こうした蘇生措置を30分ほど行ったあとに、筆者は死亡を宣告した。
患者は、正月に帰省した息子一家と夕食の最中だった。小学校1年生と幼稚園児の孫に、本格的な正月を経験させるため、祖母が手作りのお節料理を準備したそうだ。その中に餅が入っていた。
楽しい食事の最中に祖父が亡くなってしまった。同行してきた息子は落ち込み、どんな言葉をかけていいかわからなかった。
■救命が難しいからこそ予防を
一度餅による窒息を起こした場合、訓練した医師がいなければ、餅を取り除いて呼吸を再開させることは難しい。そういう医師がいたとしても、高齢者では救命が難しい。
餅による窒息は予防が重要だ。高齢者の飲み込みの機能をしっかり見極めて、窒息しないような料理、食べ方を心がけてほしい。
こうした蘇生措置を30分ほど行ったあとに、筆者は死亡を宣告した。
患者は、正月に帰省した息子一家と夕食の最中だった。小学校1年生と幼稚園児の孫に、本格的な正月を経験させるため、祖母が手作りのお節料理を準備したそうだ。その中に餅が入っていた。
楽しい食事の最中に祖父が亡くなってしまった。同行してきた息子は落ち込み、どんな言葉をかけていいかわからなかった。
■救命が難しいからこそ予防を
一度餅による窒息を起こした場合、訓練した医師がいなければ、餅を取り除いて呼吸を再開させることは難しい。そういう医師がいたとしても、高齢者では救命が難しい。
餅による窒息は予防が重要だ。高齢者の飲み込みの機能をしっかり見極めて、窒息しないような料理、食べ方を心がけてほしい。