日々発表される統計や調査の結果を読み解けば、経済、健康、教育など、さまざまな一面がみえてきます。今回は、「子どもを私立大学に通わせるなら」を考えていきます。 【都道府県「大学進学率」ランキング】1~47位をすべて見る
私立大学に下宿しながら通ったら、いくらかかる?
1/3/2021
合格!(※画像はイメージです/PIXTA)
[図表1]大学の学費 出所:文部科学省『国立大学等の授業料その他の費用に関する省令』『私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査』より作成
[図表2]大学生の収支 独立法人日本学生支援機構『平成30年度学生生活調査』
人生の3支出である「教育資金」「住宅購入資金」「老後資金」。 文部科学省『平成30年度子供の学習費調査』によるとの結果について」によると、幼稚園から高等学校までの学費(平均)は以下の通りです。
【幼稚園~高等学校の平均学費】
■幼稚園(3年)
公立幼稚園:67万941円
私立幼稚園:158万3748円
■小学校(6年)
公立小学校:192万7686円
私立小学校:959万2146円
■中学校(3年)
公立中学校:146万5191円
私立中学校:421万9299円
■高等学校(3年)
公立高等学校:137万2140円
私立高等学校:290万9733円
そして今春から子どもの大学進学を控え、いよいよ子育ても大詰め、という人も多いことでしょう。 文部科学省『国立大学等の授業料その他の費用に関する省令』、『私立大学等の令和元年度入学者に係る学生納付金等調査』によると、
初年度、
国立大学の納付金は81万7800円、
公立大学は92万8493円。
私立大学となると、
文系で117万2582円、
理系で154万9688円と、
プラス数十万円の出費となります(図表1)。
さらに4年間、子どもを大学に通わせるとなると、
国公立大学で250万円ほど、
私立大学文系で400万円、私立大学理系で550万円程度の費用がかかると覚悟する必要があります。
ちなみに、私立大学医歯系の初年度納付額は480万円、6年間で2000万円超えと、少々浮世離れした世界観となります。
大切な我が子のためですから、多くの家庭ではコツコツと、この日のために貯蓄をしてきたことでしょう。
「子どもが大学合格をしたけど、入学金が足りず……」などという悲劇は、そうないはずです。しかし子どもを大学に通わせるには、それだけでは足りません。 自宅から通える大学なら、子どもの大学入学以降の生活費は、それほど心配する必要はないでしょう。「大学生なんだから、自分のこづかいくらい、アルバイトして稼ぎなさい」などといえばいいわけですから。
しかし自宅から通うのが難しい、地元以外の大学に合格したら、学費プラスαの費用は絶対です。
独立法人日本学生支援機構『平成30年度学生生活調査』によると、国立大学の場合、家計からの仕送りは116万円強、国立大学は99万円強、私立大学は170万強。学費と合わせると、国立大学の場合は178万円、公立大学では162万円、私立大学では310万円が、家庭が1年間で負担する額となります(図表2)。
それが4年間続くとなると、
国立大学で712万円、
公立大学で648万円、
私立大学で1240万円となります。
あくまでも平均値であり、学費の高い私立大学は、年収の高い世帯が選ぶ傾向にあり、仕送り額も大きいなど推測できますが、1200万円というと会社員世帯にとっては大きなインパクトです。
ーー俺、東京の私立大学に行きたいんだ そう、子どもから打ち明けられた、地方の高校生の親がいたとしたら、子どもが夢を叶えたのと同時に、4年で1200万円をキャッシュで用意する必要がある、というわけです。
学費、1500万円を払えるのか?
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[図表3]家庭からの給付のみで大学に通えるか 出所:独立法人日本学生支援機構『平成30年度学生生活調査』
[図表4]大学生をもつ世帯の平均年収の分布 出所:独立法人日本学生支援機構『平成30年度学生生活調査』
このような巨額な費用を払えるのか、といえば、多くの家庭で“NO”でしょう。実際、前出の『平成30年度学生生活調査』によると、「家庭からの給付のみでは修学に不自由」が大学の区分限らずで15~16%、「家庭からの給付のみでは修学継続困難」が11~14%。奨学金やアルバイトをしてもらい、やっと大学に通ってもらっている、それが多数派です(図表3)。
また実際に大学生を子どものに持つ家庭とはどのような家庭なのか。同調査の結果をさらに見ていきます。 国立、公立、私立別に家庭の年間収入ごとに見ていくと、
国立大学に通う学生の世帯年収で最も多いのが「年収800万~900万円世帯」、
続いて「700万~800万円世帯」、
同率で「600万~700万円世帯」
「1000万~1100万円世帯」と続きます(図表4)。
公立大学の場合は、
「年収600万~700万円世帯」が最も多く、
「500万~600万円世帯」「
800万~900万円世帯」と続きます。
私立大学の場合は、「年収600万~700万円世帯」が最も多く、
「700万~800万円世帯」
「800万~900万円世帯」と続きます。
国立大学と私立大学では「700万~800万円世帯」で、公立大学では、「600万~700万円世帯」で学生の半分を占めます。出身地の公立大学であれば入学費が安くなるなどの事情もあり、学生の世帯年収は公立大学で若干安いですが、「世帯年収700万~800万円」というのが、一般的な大学生家庭です。
国税庁『令和元年分民間給与実態統計調査』によると、令和元年12月31日現在の給与所得者数は5,990万人で平均給与は436万円。
また厚生労働省『令和元年賃金構造基本統計調査』によると、
男性会社員50~54歳の平均月給は42万3700円。
これらに比べると、大学生の子どもを持つ親の収入は、平均以上と言えます。 では「世帯年収700万~800万円」がどのような暮らしぶりなのか、総務省『家計調査』(2020年)から見ていきましょう。
【世帯年収700万~800万円の平均像】
世帯主の年齢:48.3~49.1歳
共働き率:55.0~62.4%
世帯人数:3.33~3.40人
持ち家率:83.2~84.0%
可処分所得額:48万7899~53万6851円
消費支出:26万1218~26万4020円
非消費支出*1:10万6783~11万7554円
返済*2:11万7283~12万1168円 *1収入の中で、税金および健康保険料、雇用保険料、年金の社会保険料として強制的に支払わされる支出 *2 土地家屋借入、クレジット購入、その他借金返済 家計の収支を見ても、余裕のなさが伺えます。
コロナ禍では、アルバイト代が稼げず、また親も頼れず、退学を余儀なくされた学生が多くいます。コロナ禍は、数年で収束すると言われていますが、我が子が大学に通うタイミングで、このような事態に再び見舞われるかもしれません。子どもの夢を叶えるために、親は頑張るしかなさそうです。