東京大学学部正規学生は全体1万4058名中、外国人学生474名、留学生285名の計759名が在籍している。全体比率で5.4%。これが大学院になると修士課程7051名中、外国人1877名、留学生1757名の計3634名となんと修士課程学生の半数が外国人である。さらに博士課程6528名では外国人学生2286名、留学生2167名の計4453名。実にその比率は68.2%となっている。
首都圏では難関校進学を目指す中国人の子弟も…日本のエリート社会の“変化”
秋は旅行シーズンだ。全国の観光地には大きなキャリーバッグを引いた観光客の姿が目立つ。中でも外国人観光客(インバウンド)の姿はもはや日常と言えるものになった感がある。
日本政府観光局の発表によれば、今年1月から8月までに日本を訪れた訪日外国人数は累計で2400万人を超え、対前年比58%の急増ぶりだ。これをコロナ禍前の2019年の同時期と比較しても186万人、8.4%の増加である。このままの状況が続けば、今年の訪日外国人数は年間で3400万人から3500万人と過去最高値に達するものと予想される。
日本を訪れる外国人の顔ぶれをみると、コロナ禍前は首位を独走していた中国人の数が減少し、首位は韓国人だ。1月から8月累計で中国人は459万人、2019年は同時期で658万人であったから30%ほど減少している。最近は回復の兆しが出ているとはいえ、中国人訪日客にひところの勢いはない。
観光地を歩き回るインバウンドの姿ばかりに目が行きがちだが、都内のJRや地下鉄の車両に乗っていて気づくのが、明らかに観光客ではない外国人が普通に電車内に座っている、外国人同士で日常会話をしていることだ。彼らは日本国内を旅行しているわけではなく、日本に在住しているのだ。そして話している言語の多くは中国語である。
社会的なステータスを有する在留外国人
出入国在留管理庁の調べによれば、2023年末現在の在留外国人数は341万人を数え、前年比で33万5000人、10.9%増加している。農業従事者数は116万人。日本は外国人が農業従事者の3倍も居る国だ。
彼らの居住地の多くが東京都だ。東京都の在留外国人数は23年末で66万3000人。前年比で6万7000人の増加だ。東京都全体の人口増はこの期間で7万人であるから、東京の人口増はほぼ在留外国人の増加のおかげとみることもできる。
国別の内訳をみると中国が82万1838人と全体の24%を占める一大勢力だ。以下、ベトナム56万5000人、韓国41万人、フィリピン32万2000人、ブラジル21万1000人と続く。
在留外国人と聞くと、近年政府が設けた技能実習生を思い浮かべる人が多いだろう。技能実習とは名ばかりで、農村などで農業に従事、現地でのトラブルから犯罪に至る実習生の問題などがメディアで喧伝されたこともあり、あまり良い印象を持たない人もいるだろう。
在留外国人はおもに永住者(89万1000人)、技能実習者(40万4000人)、技術・人文知識・国際業務従事者(36万2000人)、留学生(34万人)、特別永住者(28万1000人)に分類されている。近年増加が目立っているのが、技術・人文知識・国際業務従事者や留学生といった相応の知識を持ち、社会的なステータスをある程度有している人たちだ。この事実にまだ多くの日本人は気づいていない。
難関校進学を目指す中国人の子弟も
彼らが今、日本に根を張り、日本社会の中に着実に浸透しはじめている。日常生活の舞台で彼らが普通に電車に乗り、友達と会話し、買い物をする。ちょっとおしゃれな服装で、その辺の日本人よりもリッチに見える人も多い。そして彼らの姿が現在の日本のエリート社会にも広がり始めている。
2023年12月23日の東洋経済オンラインで中国・東南アジアジャーナリストの舛友雄大氏がとりあげた 「中学受験で躍進する中国人『裏SAPIX』の驚愕実態」 では、中学受験塾の名門SAPIXの生徒6000名中、300名から400名が中国人子弟である実態が報告された。SAPIXの入塾には厳しいテストが施され、各小学校でも上位の子しか入塾が叶わない。中国人子弟たちは塾の中でも成績上位を占め、普通に男子は筑波大附属駒場、開成、麻布へ、女子は桜蔭、女子学院、豊島岡などに進学するのだという。
© 文春オンライン
東京大学に在籍する外国人学生、留学生の増加
本当だろうか。そこで東京大学における外国人学生の実態を調べてみた。東京大学では外国人学生については留学生と外国人学生に分けて集計している。このうち留学生は2024年5月1日現在で5104人。2000年では1996名であったからなんとこの四半世紀の間に2.55倍に急増していることがわかる。
東京大学にもいろいろな機関があるので、研究生や聴講生を除いた学部正規学生と大学院修士課程、博士課程でみると、やはりその数の多さに驚かされる。
学部正規学生は全体1万4058名中、外国人学生474名、留学生285名の計759名が在籍している。全体比率で5.4%。これが大学院になると修士課程7051名中、外国人1877名、留学生1757名の計3634名となんと修士課程学生の半数が外国人である。さらに博士課程6528名では外国人学生2286名、留学生2167名の計4453名。実にその比率は68.2%となっている。
留学生の内訳をみると正規学生数285名のうち136名、修士課程は1757名中1330名、博士課程は2167名中1536名と大半が中国人留学生だ。外国人学生数の国別の内訳は公表資料には存在していないが、かなりの割合を占めていることが想像される。
東京大学に入るのが比較的簡単な理由
中国の受験競争は熾烈を極めるといわれる。古来、科挙制度があり国家官僚となるには厳しい選抜が行われてきた歴史を持つ国だ。
英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション発表の世界大学ランキング2025によれば、中国の清華大学が12位、北京大学が13位にランクインしているが、東京大学は28位。彼らから見れば日本の最高峰である東京大学に入るのは比較的簡単なのだ。
いまや日本の大学を卒業した在留外国人卒業生は企業社会でも引く手あまただといわれる。彼らは、中国語はもちろん、流ちょうな英語や日本語を話し、きわめて勉強熱心で向上心も強い。日本のエリート社会に食い込み、席巻する日も近いかもしれない。
日本社会では学費の無償化ばかりが議論され、政治家が選挙で当選するための常套句のようになっている。いっぽうでどのようにして日本の教育の質を高め、諸外国に太刀打ちできる人材を育成するかの議論が置き去りにされている。のんびりしている日本人がこれ以上アジアの後塵を拝することのないように、国ばかりでなく日本人自身が褌を締めなおす時代になっているのである。
(牧野 知弘)
日本政府観光局の発表によれば、今年1月から8月までに日本を訪れた訪日外国人数は累計で2400万人を超え、対前年比58%の急増ぶりだ。これをコロナ禍前の2019年の同時期と比較しても186万人、8.4%の増加である。このままの状況が続けば、今年の訪日外国人数は年間で3400万人から3500万人と過去最高値に達するものと予想される。
日本を訪れる外国人の顔ぶれをみると、コロナ禍前は首位を独走していた中国人の数が減少し、首位は韓国人だ。1月から8月累計で中国人は459万人、2019年は同時期で658万人であったから30%ほど減少している。最近は回復の兆しが出ているとはいえ、中国人訪日客にひところの勢いはない。
観光地を歩き回るインバウンドの姿ばかりに目が行きがちだが、都内のJRや地下鉄の車両に乗っていて気づくのが、明らかに観光客ではない外国人が普通に電車内に座っている、外国人同士で日常会話をしていることだ。彼らは日本国内を旅行しているわけではなく、日本に在住しているのだ。そして話している言語の多くは中国語である。
社会的なステータスを有する在留外国人
出入国在留管理庁の調べによれば、2023年末現在の在留外国人数は341万人を数え、前年比で33万5000人、10.9%増加している。農業従事者数は116万人。日本は外国人が農業従事者の3倍も居る国だ。
彼らの居住地の多くが東京都だ。東京都の在留外国人数は23年末で66万3000人。前年比で6万7000人の増加だ。東京都全体の人口増はこの期間で7万人であるから、東京の人口増はほぼ在留外国人の増加のおかげとみることもできる。
国別の内訳をみると中国が82万1838人と全体の24%を占める一大勢力だ。以下、ベトナム56万5000人、韓国41万人、フィリピン32万2000人、ブラジル21万1000人と続く。
在留外国人と聞くと、近年政府が設けた技能実習生を思い浮かべる人が多いだろう。技能実習とは名ばかりで、農村などで農業に従事、現地でのトラブルから犯罪に至る実習生の問題などがメディアで喧伝されたこともあり、あまり良い印象を持たない人もいるだろう。
在留外国人はおもに永住者(89万1000人)、技能実習者(40万4000人)、技術・人文知識・国際業務従事者(36万2000人)、留学生(34万人)、特別永住者(28万1000人)に分類されている。近年増加が目立っているのが、技術・人文知識・国際業務従事者や留学生といった相応の知識を持ち、社会的なステータスをある程度有している人たちだ。この事実にまだ多くの日本人は気づいていない。
難関校進学を目指す中国人の子弟も
彼らが今、日本に根を張り、日本社会の中に着実に浸透しはじめている。日常生活の舞台で彼らが普通に電車に乗り、友達と会話し、買い物をする。ちょっとおしゃれな服装で、その辺の日本人よりもリッチに見える人も多い。そして彼らの姿が現在の日本のエリート社会にも広がり始めている。
2023年12月23日の東洋経済オンラインで中国・東南アジアジャーナリストの舛友雄大氏がとりあげた 「中学受験で躍進する中国人『裏SAPIX』の驚愕実態」 では、中学受験塾の名門SAPIXの生徒6000名中、300名から400名が中国人子弟である実態が報告された。SAPIXの入塾には厳しいテストが施され、各小学校でも上位の子しか入塾が叶わない。中国人子弟たちは塾の中でも成績上位を占め、普通に男子は筑波大附属駒場、開成、麻布へ、女子は桜蔭、女子学院、豊島岡などに進学するのだという。
© 文春オンライン
東京大学に在籍する外国人学生、留学生の増加
本当だろうか。そこで東京大学における外国人学生の実態を調べてみた。東京大学では外国人学生については留学生と外国人学生に分けて集計している。このうち留学生は2024年5月1日現在で5104人。2000年では1996名であったからなんとこの四半世紀の間に2.55倍に急増していることがわかる。
東京大学にもいろいろな機関があるので、研究生や聴講生を除いた学部正規学生と大学院修士課程、博士課程でみると、やはりその数の多さに驚かされる。
学部正規学生は全体1万4058名中、外国人学生474名、留学生285名の計759名が在籍している。全体比率で5.4%。これが大学院になると修士課程7051名中、外国人1877名、留学生1757名の計3634名となんと修士課程学生の半数が外国人である。さらに博士課程6528名では外国人学生2286名、留学生2167名の計4453名。実にその比率は68.2%となっている。
留学生の内訳をみると正規学生数285名のうち136名、修士課程は1757名中1330名、博士課程は2167名中1536名と大半が中国人留学生だ。外国人学生数の国別の内訳は公表資料には存在していないが、かなりの割合を占めていることが想像される。
東京大学に入るのが比較的簡単な理由
中国の受験競争は熾烈を極めるといわれる。古来、科挙制度があり国家官僚となるには厳しい選抜が行われてきた歴史を持つ国だ。
英国の教育専門誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーション発表の世界大学ランキング2025によれば、中国の清華大学が12位、北京大学が13位にランクインしているが、東京大学は28位。彼らから見れば日本の最高峰である東京大学に入るのは比較的簡単なのだ。
いまや日本の大学を卒業した在留外国人卒業生は企業社会でも引く手あまただといわれる。彼らは、中国語はもちろん、流ちょうな英語や日本語を話し、きわめて勉強熱心で向上心も強い。日本のエリート社会に食い込み、席巻する日も近いかもしれない。
日本社会では学費の無償化ばかりが議論され、政治家が選挙で当選するための常套句のようになっている。いっぽうでどのようにして日本の教育の質を高め、諸外国に太刀打ちできる人材を育成するかの議論が置き去りにされている。のんびりしている日本人がこれ以上アジアの後塵を拝することのないように、国ばかりでなく日本人自身が褌を締めなおす時代になっているのである。
(牧野 知弘)