連休明けの雨の一日、思い立って上野の国立博物館。
「名作誕生〜つながる日本美術」が開催中であった(5月27日まで)。
”名作はゼロから突然生まれるわけではない”というコンセプトに興味を持ち、ならば、その繋がりはどこから?と、日本美術の全体の流れすら知らない自分のお勉強も兼ねて(?)である。
会場に入ってまず眼を奪われるのが、薬師如来と衆宝王菩薩の二体の巨大な立像。奈良時代の8世紀に、中国から渡来した仏師達が、石の代わりに木材を使って掘り出した一木彫りの仏像である。これがその後、日本の仏像彫刻に繋がっていく。。その大きさはもちろん、衣のヒダやまろやかな顔の表情、柔らかい身体の線などを観ると、木から掘り出していくその工程を思うと、それだけで信仰心が生まれようというもの。
この二体の仏像に続いて、数点の薬師如来立像が並ぶのだが、その次のコーナーにある「普賢菩薩騎象像」を目にした時、胸の奥から、何かじんわりした感動が湧いてきたのである。
象の背中に乗った普賢菩薩の慈愛に満ちた顔、全体が完全に整った像のバランス、正面から観ていると、まるで、相対している人間をそのまままるごと包み込んでくれるような、静かな深い表情。。じっと観ていたら、涙が出て来た。。
それから、「第2章 巨匠のつながり」では、雪舟と中国の水墨画や花鳥図との繋がりをテーマに国宝や重要文化財の作品が並ぶ。
中でも感動し、見直したのが、俵屋宗達。宗達って凄〜いっ!
扇を散らした屏風に描かれている扇の絵は、別のすでに著名な日本画の作品の一部を切り取って描いてあり、それは今で言うところのカット&コピーの手法。それを手書きで(江戸時代だからデータなんてない!)行っているのも凄い!
さらに、「第3章 古典文学につながる」では、宗達の「蔦細道図屏風」が展示されているのだが、これが、伊勢物語の一部「山辺の道で人に出会って〜」とかいう話しを描いたものだが、人物は一切なし。線と面と色で山道、木々、空などを表現している。。。今でいう現代美術や、アートディレクターの作品を思わせる大胆な構成である。元のストーリーの知識があれば、すぐに分かるのね〜きっと。
近年人気がある江戸時代の伊藤若冲も、先達の中国の画家達の作品と若冲の作品の絵を並べてあ〜そうか〜、こうやって観るんだ〜、と納得したり、新たな作品の中に、過去の自分の作品を再現したり、といった流れが分かって興味津々。
他にも、源氏物語の夕顔や初音、といった平安時代の物語をモチーフとした江戸時代の絵や手箱などの工芸作品も展示され、どれも、物語がある上での背景や自然や趣きを画描いていて、あらためて日本画や日本美術の素晴らしさと繊細さに感歎する。
”天才の創造という考え方は魅力的だが、実際は、剽窃、模倣、継承、その上での創造”という解説を読むと、まさしく名作が生まれるまでの作家の格闘や闘争をダイナミックに感じた展覧会でありました。
それにしても、岡倉天心が創刊した「國華」という美術誌の存在も知らなかったし、それが創刊130周年(!)というもの知らなかった。
天気のいい日は外に出かけよう!気分が落ち込んだ日も外にでかけよう!まだまだ知らない世界がいっぱいある!〜の気分でありました。
ありがたい〜普賢菩薩騎象像
雨上がりの博物館庭と上野公園