国立近代美術館で開催中の「ゴードン・マッタ=クラーク展」。1970年代にN.Yを中心に活躍し、35才で夭折したアーティストのアジアで初めての回顧展。
彫刻・映像・写真・ドローイング・関連資料など約200点が展示された会場は写真撮影OK。自分で作品に仕上げるコーナーもあったりして、まさに楽しいプレイグラウンドのような会場だ。
取り壊し前の建物を真っ二つに切断したり、床や壁や天井を円形にくり抜いた時に差し込む光の線やそこに表れる情景・・・見慣れた日常をまったく違う空間に変える「ビルディング・カット」や、木の上で(本当は”生活”をしたかったらしいが)寝転んだり歩き回ったりする様子を撮影したビデオや、「エネルギーの樹」シリーズのデッサンやドローイングや写真。。。”万物は土、水、火、空気の四大元素から構成される”という考えに興味を抱いたマッタ=クラークにとって、それらを媒介する樹木は、重要なモチーフでもあったようだ。
「建物の北側の壁に直径4メートルの円が開けられ、その穴は円錐形に狭まりながら45度上方に進むと、隣の建物の壁をつらぬいて屋根へ向かいました。切断によって通行人に対してあらわにされたって者の内部は、部屋のカバ、床、天井がくい破られることで、線が複雑に交錯しています。」という解説がつけられた作品(写真)は、パリのレアール地区の大改造(ポンピドーセンターの建築)を考え合わせると、より一層意味が深くなる。
アート、建築、ストリートカルチャーのみならず、食堂「フード」の経営など、1970年代を特長付ける爆発的な発展と革新的なマッタ=クラークの活動が、ニューヨークというもっとも先端の実験場で(パリやドイツでも)圧倒的なスケールをもって成されていたことに(それを受け入れていた社会・時代に)、あらためて驚嘆する。
真っ二つになった建物や、下から上階に向けて円錐形にカットされた建物の内部や、ゴミの山を掻き分けるブルドーザーのビデオ、隣り合う高い高い煙突(?)を鎖のような網をかけて繋ぐ、登る等々、展示されている作品を見ていると脳みそが揺さぶられシャッフルされているような爽快な気分。自分が今おかれている状況をもう一度考えることにも通じる(寝てるかな??の脳ミソを刺激する)良い混乱だ。
70年代の改革へのノスタルジー。。。だけでは決してない!のでありました。
▼美術館前庭の展示物は「ごみの壁」。1970年にマッタ=クラークが作成したオリジナルが、その後、各土地のゴミで再制作されている。これは早稲田大学建築科の学生との共同制作。
▼1977年「パリの土の下」レ・アール
▼オフィス・バロック1977年
▼1977年のポスター