1961年に制作され、その年の「ベネツィア国際映画祭」金獅子賞を受賞した「去年マリエンバートで」。
映画史に燦然と輝くその映画が、半世紀の時を経て、シャネルの全面サポートのもと4Kデジタルリマスター上映された!
監督が、当時”ヌーヴェル・ヴァーグを先導した”アラン・レネ。脚本が、”ヌーヴォー・ロマンの騎手"と称されたアラン・ロブ=グリエ。そして衣装は、当時78歳のココ・シャネルによるオリジナルデザイン!!
知性と感性と、自由な想像力に満ちた時代を切り開いた3人。。。その名前を聞くだけでワクワクしてくる。ヒロインを演じるデルフィーヌ・セイリグはまさにシャネルのイメージそのまま!シンプルで飾らず、エレガント、そして謎めいている。
絢爛豪華で奢侈を極めたようなバロック風の建物ーー彫刻や金箔で縁取られた壁や天井や柱、前庭に整然と広がる直線的で人工的な庭園、ヒロインが着ている「これぞシャネル!」と言えるモダンでクラシカルなドレスの数々。。。計算されつくした圧倒的な美しさにため息が出る。
登場人物は女と、男と、女の夫と思われる男の3人。去年、同じ場所で出会い心を通わせた女と男。女はまるで覚えていないという。男は記憶を積み重ねるように去年の約束を思い出させようと語る。。思いが通わない、交わらない会話、ストップモーションのように静止した時間と場所。。。夢と現実の間を彷徨うように行きつ戻りつする二人。。まどろむような女の表情(そういえば、当時”アンニュイ”という言葉があった)、時に苛立ち、それでも静かに情熱をもって語り続ける男。。。どのシーンをとっても完璧に構築された映像と言葉がある。
「去年マリエンバートで」を観たはいつ頃のことだったのだろう。。。ほとんど幻のように思える映画だったが、ワタシにとっては、一度観ただけで、数十年経ってもその記憶やイメージが時折り浮かんでくる、特別な存在だ。
この映画について、ジャコメッティは「めくるめくような夢。何週間経っても私は、あの世界のことを考え続けている」と記しているが、まさに、一度観ただけで魂の奥深くに残る。”一度は観ておく価値がある映画”と言える作品であります。
恵比寿ガーデンシネマで上映中。