宮澤俊義の『八月革命説』では、旧新憲法間で主権の移行があったと主張しています。
それはポツダム宣言受諾を根拠にしています。
では、ポツダム宣言に主権に関する記述があったのでしょうか?
我が国が停戦をする条件を連合国、とりわけ米国はしっかりと分析しています。
①日本人は天皇の地位が保障されない限り
降伏を受け入れない
②戦後日本の秩序維持には天皇の存在が極
めて重要である
と、理解していました。
つまり天皇の地位の保障さえあれば『降伏』するとわかっていたのです。
しかし実際にはポツダム宣言で天皇の地位や國體について言及しなかったのです。
それは日本に原爆を使用する為であった事は皆さんご存知の通りです。
当初、米国は日本降伏に関して
天皇の地位の保障
ソ連参戦
原爆投下
のいずれかで降伏するだろうと考えていました。
しかし、戦局が悪化していた7月1日マッカーサー率いる南西太平洋司令部がまとめた研究リポートによれば以下の様に分析しています。
『今日、天皇と軍幹部、軍全体、全国民は一つにまとまっている。最後の勝利、或いは死に至るまで戦い抜く覚悟をしている。兵士達は戦場で狂信的な行動をし、人々は必要とあらば、自爆も辞さない覚悟と不屈の精神で戦い続けている』
それまでに66都市を空爆され、67番目68番目が原爆で焼かれ様と、日本の降伏の決定には何ら影響はないと考えていました。
実際、原爆が落とされたけれど降伏の決定に影響はせずに、ソ連参戦が影響していたのです。
また、米国にしても原爆は二つしかなかったのですから、ソ連参戦による日本の降伏にはホッと胸を撫で下ろした事は容易に理解できるでしょう。
もし日本が降伏しなければ、日本本土での戦闘となります。
そうなれば、米国とてタダでは済みません。
先にマッカーサーが分析した通り、自爆も辞さない一億の日本国民を相手にしなければならず、例えそれで勝ったとしても、終わりなき日本人のテロの脅威が、数十年或いは100年を超えて続くかもしれない。
そんな事になれば、米国とて一体どれだけの犠牲を払わねばならないか。
トルーマン大統領はじめ米国高官達は、日本の降伏には『天皇の地位を保障する』こと、『ソ連参戦により日本は状況が一変し手に負えない状況になる』そして『原爆投下では降伏しない』と知っていたのです。
昭和20年7月26日ポツダム宣言。
しかし、天皇の地位については曖昧で明言はなく、日本としても受諾し難いものでした。
例えば6項と7項に、日本占領、占領目的が明記されています。
六、吾等ハ無責任ナル軍国主義ガ世界ヨリ
駆逐セラルルニ至ル迄ハ、平和、安全
及正義ノ新秩序ガ生ジ得ザルコトヲ主
張スルモノナルヲ以テ、日本国国民ヲ
欺瞞シ、之ヲシテ世界征服ノ挙ニ出ヅ
ルヲ過誤ヲ犯サシメタル者ノ権力及勢
力ハ、永久ニ除去セラレザルベカラズ
七、右ノ如キ新秩序ガ建設セラレ、且日本
国ノ戦争遂行能力ガ破砕セラルコトノ
確証アルニ至ル迄ハ、連合国ノ指定ス
ベキ日本国領域内ノ諸地点ハ、吾等ノ
茲ニ指示スル基本的目的ノ達成ヲ確保
スル為、占領セラルベシ
『世界から軍国主義がなくならぬ限り、平和や安全、正義の新秩序が成立する事はない。日本国国民を騙し、世界征服の暴挙に出る過ちを犯した権力者達は永久に除去されなければならない。この様な新秩序が成立し、且つ日本の戦争遂行能力が失われるまで連合国は日本を占領する』
この様な意味となるでしょう。
ポツダム宣言で連合国が求めた新秩序とは何なのか?
①軍国主義の排除
②戦争遂行能力の喪失
③戦争犯罪人の処罰
この三点により、新秩序は実現するものと認める、と言う中身です。
次回へ続く