パリとアヴィニョン
西洋中世の知と政治
樺山紘一 著
人文書院 発行
1990年3月30日 初版第一刷発行
題名は「パリとアヴィニョン」という曖昧なものになっていますが、具体的な内容は
・1285年から1314年のパリにおけるカペー朝のフィリップ四世王政府
・1309年から1377年のアヴィニョンにおける教皇庁
という二つの組織とその主要人物を、詳細に取り上げています。
小説家ならこういう史料から物語を紡ぎだしていくのでしょうね。
第一部 パリ フィリップ四世王政府
第一章 問題のありか
フィリップ四世期に官僚制形成過程が成熟に達した四点
・官僚団が数的に成長したばかりか、固有の組織と意思決定機構を持つ集団として姿を現した
・官僚団の多くが、行政上の専門知識を身に着けている
ローマ法学をはじめとする法学上の知識、技術を習得し、これに基づいて中央、地方を問わず国王行政に参与する人びとのことをレジストとよびならわしている。
・官僚団のイデオロギー的側面が問題となる
・官僚たちの個々の社会的出自と境位
第二章 事件の時代史
1 国王と王家
2 外交的諸関係
3 教皇庁の教会政策とフランス王権
4 フランス教会
5 内政と財政
第三章 構造と機能
1 国王とその家族
2 国王家政
3 国王顧問会
4 高等法院
5 会計院
6 地方行政
7 パリの勤務空間
第四章 人間たち
1 慣習法の集成 フィリップ・ド・ボーマノワール
2 大書記官長 ピエール・フロート
3 練達のイデオローグ ギョーム・ド・ノガレ
アナーニ事件
1303年、教皇ボニファティウス八世が、ローマの南東、アナーニの別荘に滞在するのに狙いを定めて、教皇に直接、談判を持ち込んだ。
二、三百名といわれる兵士が別荘を急襲し、フランス国王の要求をつきつけた。
4 明晰なレジスト ピエール・ド・ベルペルシュ
5 分裂する忠誠 ジル・エスラン
6 王権の至上性 ギョーム・ド・プレジアン
7 改宗ユダヤ人 フィリップ・ド・ヴィルプルー
8 解放農奴 ラウル・ド・プレスル
9 法官僚の財政策 ピエール・ド・ラティイ
10 南方(南フランス)からの登用 ポン・ドームラ
11 法曹一族 モルネー家
12 大宰相への道 アンゲラン・ド・マリニ
十四世紀前半のある時期に成立したと思われる諷刺詩『フォーヴェル物語』は、マリニの没落の状況証拠とみなされる。
13 財務官たち
14 ユートピアの構想 ピエール・ド・デュボワ
デュボワはレジストとしては凡庸であったが、政治的著作は多数にのぼり、しかもユニークな性格をもっている。
第五章 補遺と総括