セーヌ河沿いにだらだら、休みながら歩いていたので、パリ市立近代美術館に着いたのは夕方になってしまった。
中に入り、ぼくらの展覧会を行う場所にたどりつく。
2階の広い、U字型のフロアが、みんなのスペースになる。
ここをみんなの作品で埋める、といえば聞こえはいいが、所詮は場所の奪い合いになってしまう。
噂では結構でかいオブジェを作ろうとしている学生もいるらしい。
下手をすれば予備審査で落とされてしまう。
ぼくのそんな心配をよそに、ヨウコは「私の作品はこの辺ね」と勝手に決めてしまっている。
入り口から少し入った、部屋のど真ん中の特等席だ。
可愛くないなあ。
ぼくは重い気持ちで、部屋の中をうろつく。
壁際沿いにとぼとぼ歩く。
ふとそばを見ると、ぼくの背丈より少し高い窓があった。
ちょうど向こうに、もう一つ同じ大きさの窓が見える。
このフロアでは、その二つの窓しかない。
そして、ふと外を見上げる。
「これだ」と思わず叫んでしまった。
ヨウコはぼくの突然の喜びように驚いて、「どうしたの」と尋ねる。
ぼくはニコニコしながら、「なんでもないよ。でも、この窓はぼくのものだからね」と応える。
ヨウコが自分の原風景を追い求めているように、ぼくも自分の原風景を描き出してみよう。
早速下宿に帰り、予備審査用の報告用紙に、自分の作品を描いていく。
テーマははっきりした。すっすと筆がすすむ。
提出して2、3日、すぐに結果は出た。
出展OKとの知らせだった。無事決まってほっとする。
ヨウコは「当たり前でしょ」てな感じで悠然としていた。場所も予想していたところだったので満足そうだった。
早速準備に取り掛かる。
まず電気店に行って、センサーで音の出る装置を買ってくる。
更になじみの画材店に行き、ガラスに貼り付けられる黒いセロハンを買う。
音色を吹き込み、セロハンをいろいろ切ってみる。大まかには決まっていたものの、細かいところが気になり、何度も切っては捨て、切っては捨てを繰り返す。
いよいよ設営の日がやってきた。
みんな自慢の作品を持ってきている。
ヨウコは透明なテントを天井から吊るした。その中に女の子用の机や引き出しを置く。机の上は小物で散乱させ、引き出しから衣類を飛び出させている。大体のことは決めていたが、実際現場になると、「こうじゃなくって」などぶつぶついいながら細かく動かす。
そして机の上には自分の体操している姿のビデオが映る。体操し、そしてだめだめだめとやめる彼女の姿が何度も繰り返される。
その他、北京の古い家並を再現しようとしている生徒や、ガラクタの電気製品を集めてなにやら組み立てている奴など、いろいろ訳のわからないオブジェが揃っていった。
ぼくも窓際に陣取り制作に取りかかる。
中に入り、ぼくらの展覧会を行う場所にたどりつく。
2階の広い、U字型のフロアが、みんなのスペースになる。
ここをみんなの作品で埋める、といえば聞こえはいいが、所詮は場所の奪い合いになってしまう。
噂では結構でかいオブジェを作ろうとしている学生もいるらしい。
下手をすれば予備審査で落とされてしまう。
ぼくのそんな心配をよそに、ヨウコは「私の作品はこの辺ね」と勝手に決めてしまっている。
入り口から少し入った、部屋のど真ん中の特等席だ。
可愛くないなあ。
ぼくは重い気持ちで、部屋の中をうろつく。
壁際沿いにとぼとぼ歩く。
ふとそばを見ると、ぼくの背丈より少し高い窓があった。
ちょうど向こうに、もう一つ同じ大きさの窓が見える。
このフロアでは、その二つの窓しかない。
そして、ふと外を見上げる。
「これだ」と思わず叫んでしまった。
ヨウコはぼくの突然の喜びように驚いて、「どうしたの」と尋ねる。
ぼくはニコニコしながら、「なんでもないよ。でも、この窓はぼくのものだからね」と応える。
ヨウコが自分の原風景を追い求めているように、ぼくも自分の原風景を描き出してみよう。
早速下宿に帰り、予備審査用の報告用紙に、自分の作品を描いていく。
テーマははっきりした。すっすと筆がすすむ。
提出して2、3日、すぐに結果は出た。
出展OKとの知らせだった。無事決まってほっとする。
ヨウコは「当たり前でしょ」てな感じで悠然としていた。場所も予想していたところだったので満足そうだった。
早速準備に取り掛かる。
まず電気店に行って、センサーで音の出る装置を買ってくる。
更になじみの画材店に行き、ガラスに貼り付けられる黒いセロハンを買う。
音色を吹き込み、セロハンをいろいろ切ってみる。大まかには決まっていたものの、細かいところが気になり、何度も切っては捨て、切っては捨てを繰り返す。
いよいよ設営の日がやってきた。
みんな自慢の作品を持ってきている。
ヨウコは透明なテントを天井から吊るした。その中に女の子用の机や引き出しを置く。机の上は小物で散乱させ、引き出しから衣類を飛び出させている。大体のことは決めていたが、実際現場になると、「こうじゃなくって」などぶつぶついいながら細かく動かす。
そして机の上には自分の体操している姿のビデオが映る。体操し、そしてだめだめだめとやめる彼女の姿が何度も繰り返される。
その他、北京の古い家並を再現しようとしている生徒や、ガラクタの電気製品を集めてなにやら組み立てている奴など、いろいろ訳のわからないオブジェが揃っていった。
ぼくも窓際に陣取り制作に取りかかる。