中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,215話 カスハラに対して組織がとるべき対応とは

2024年05月15日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

最近の報道によると、厚生労働省は「カスタマーハラスメント」(以下、カスハラ)に対して、従業員を守る対策を企業に義務付けるための検討に入ったとのことです。

カスハラとは、直訳すれば「顧客による嫌がらせ」ということです。カスハラについて各種の機関が行った実態調査によれば、いずれでもカスハラの件数が著しく増加しているとの結果が示されています。

実際に、私自身もこれまでに鉄道会社の駅員や店舗で働く従業員に対して、顧客が執拗にマイナス感情をぶつけているのを何度か見たことがあります。一方的な激しい顧客の物言いを目の当たりにし、もし自分があのようにされたらどういう対応をすればよいだろうかなどと考えましたが、簡単に答えは出せないと思いました。そのように考えると、今後従業員を守るために各企業等が具体的な施策を示し取り組んでいくことは、大変重要なことであり、速やかに進めていくべきものだと考えています。

同時に、最近私自身が顧客の立場として感じるのは、結果的にカスハラを誘発してしまいかねないような、従業員による顧客への対応も少なからず見受けられるということです。

たとえば、先日私がある企業に電話で問い合わせをした際に、電話口で対応してくれた人は質問に対し即答できず、その都度「確認をしてきますので、少々お待ちください」と保留にし、結局3分以上待たされたことがありました。そうかと思うと、いきなり上司と思しき人に電話が替わり、あたかもクレームとしての対応をされそうになったということもありました。

前段のような、業務にあまり精通していない人が顧客対応にあたるケースは、ここ2~3年で急増しているように感じているのですが、それは人手が不足していることが一つの原因かもしれません。しっかりとした知識を得る前に新人が現場に出ざるを得なくなって、顧客に対応する機会が増えているのかと推測します。このようなことが続くと、顧客側にも不満が募ってしまいますから、これは担当者個人でなく組織として対応すべき問題だと考えます。

もう一つ私が気になっているのは、後段のように問い合わせをクレームやカスハラのように扱ってしまうということです。クレームは「苦情を伝えたり、回復を要求する」こと、ハラスメントは「嫌がらせ」であり、使い方やサービス情報等がわからないところや知りたいことを確認する「問い合わせ」とは明らかに異なります。顧客から少々きつい言い方をされたとしても、内容をよく聞いてみればクレームやハラスメントには当たらないケースも実は多いのではないかと思います。それを一緒くたにして対応してしまうと、別の問題が生じてしまうのではないでしょうか。

顧客対応の際には、まずは先入観を持たずにじっくりと話を聞いてみる。その際にはいやいや対応しているのではなく、真摯に話を聞くという態度(非言語)も大切だと考えています。そして、やり取りをふまえ顧客が求めていることを冷静に判断することが大切です。

カスハラは許してはいけない、組織としてきちんと対応していくべきものです。一方でカスハラか否かの判断は、セクハラなどと同様に当事者間の感じ方に大きく左右されるなどの面があります。であるからこそ、今後、行政がきちんと指針を示してどのようなケースが該当するのかをはっきりと示し、各企業はそれに従い従業員を守るための施策を考え、確実に実施していくことが大切だと考えます。

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第1,214話 孤立感をもたせないためには

2024年05月08日 | コミュニケーション

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今から半年ほど前の朝日新聞の「孤立したアリ(蟻)は短命になる (2013年10月23日)」という記事が強く印象に残っています。その記事には、孤立したアリは活性酸素が増え、それが原因で寿命が短くなったということが書かれていました。

さて、ゴールデンウィークも終わり、職場に配属された新入社員は今後本格的に仕事を覚えていくタイミングになりました。当の新入社員の中には、これから職場に馴染めるだろうか、仕事をしっかり覚えられるだろうかなどと心配をしている人も少なくないだろうと思います。一方で仕事を教える側(OJTトレーナーなど)の先輩社員や上司にも、仕事をきちんと教えられるだろうかと心配している人、しっかり育てるぞと思いを新たにしている人もいるのではないでしょうか。

それぞれの職場では、新入社員に早く仕事を覚えてもらうために様々な工夫をしていると思いますが、その中で私が重要だと考えている一つが、先述の記事にあった「孤立させない」ということです。改めて「孤立」と言う言葉を辞書で調べてみたところ「他とかけはなれてそれだけであること。ただ一人で助けのないこと」(広辞苑)とあります。これを職場で考えると、新入社員に全く関心を示さない、気にかけることがないなどにより、周囲からの助けがない状態に置かない。そして何より、そのような雰囲気を作らないということが大切になると考えます。

職場で上司や先輩社員をはじめ大勢の人がいるのにもかかわらず、自身への関心が示されず、困っているときにも助けてもらえない。また、周囲が絶えず「忙しいオーラ」を出して周囲の人に話しかけにくい、質問をしにくいような雰囲気があると、新入社員にとっては周囲の人たちに話しかけようとするハードルが高くなってしまいます。その結果孤立感はどんどん深まっていってしまうのではないでしょうか。

それを防ぐためには、職場においては積極的に周囲に話しやすい雰囲気を作るように心がけることが大切です。具体的な取り組みとして仕事時間中に質問の有無にかかわらずディスカッションタイムを設けること、新人とOJTトレーナーの組み合わせのみならず、様々な組み合わせで、双方向のやりとりができるようなフリーディスカッション時間を設けるなどから始めてみてはいかがでしょうか。もちろん、その際には聞き手は話し手の話に対して頷くなどの関心を示したり、タイミングよく反応したりすることが大切なことであるのは言うまでもありません。

そして、先述の記事の終わりには「今後、社会的な関わりが生き物の健康を左右することを、アリを使って解明していきたい」とも書かれていました。このように職場で孤立をさせない、職場での良好な雰囲気や人間関係を作っていくということは、新入社員だけでなく職場のすべての人の健康にも関わる重要な問題だと考えています。社員が心身ともに健康で働くことができるようにするためにさらに職場でできることがないのか、改めてこの機会に見直してみてはいかがでしょうか。

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第1,213話 待遇改善要求は古くて新しい

2024年04月24日 | 仕事

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今年3月、日本IBMに対して定年後再雇用の賃金減額について具体的に説明することを求めた救済命令が東京労働委員会から出されたとの報道がありました。

記事によると、日本IBMでは60歳以降も勤務を希望する場合には「シニア契約社員」として再雇用されるものの、賃金は正社員の2割に減額されるとのことですが、それに対してきちんと待遇差の説明をするように会社に対して求めたとのことです。これに対して、会社側は再審査を申し立てており、中央労働委員会の判断が注目されているとのことです。

日本の企業等における、いわゆるシニア社員(定年後の再雇用等)の賃金が定年前に比べ低く抑えられることについては、モチベーションの低下をはじめ様々な影響が指摘されるようになっています。私が見聞きしているところでも、現役時代の7割~4割程度に減額されるところが多いようですが、そうした中で大手企業である日本IBMが2割にまで減額していることについては、記事を読んではじめて知り正直少々驚くとともに、今後日本IBMがこの件にどのように対応するのかについて関心を持っています。

今回のような賃金をはじめとした、労働者の権利向上や労働環境改善に向けた運動については、私はこれまで日本では明治時代ごろからはじまったものではないかと考えていました。しかし実はその歴史はもっと古く、なんと天平11(739)年には行われていたという記録が残っていることを、先日訪れた千葉県佐倉市にある国立歴史民俗博物館の展示を見て知りました。その展示によれば、当時の役人による「劣悪な職場環境や労働条件に対しては、作業着の支給、定期的な休暇、食事の改善、酒の支給など、6ヶ条の待遇改善を要求した」文書の下書きが残っているとのことです。

こうしてみると、実は古くて新しいこの問題ですが、今回の日本IBMの件に関しては、賃金を2割としている理由を「シニア契約社員が担当する業務の重要度・困難度を勘案し決定した」との説明のみにとどまっていることが、賃金そのものの低さだけでなくシニア社員から会社への信頼の失墜という、さらなる問題を生んでしまっている原因のように感じます。

今後、この問題を解決するためには、まずは会社側が減額の決定に至った経緯をはじめとする情報を雇用されている側に提供すること、あわせてこの問題に真摯に向き合おうという姿勢が求められているように思います。前述の中央労働委員会もまさにそのことを指摘しているのではないかと感じています。

前述の「天平時代の待遇改善要求」については、展示には時の雇い主側がどのような対応をしたのかまでは示されていませんでしたが、当時の役人の生々しい声が聞こえてくるようでとても興味深く見ました。話は戻りますが、労働人口の減少が指摘される現代において様々な知見を有するシニア社員は、組織にとってますます貴重な労働力となることは確かなことです。流失を防ぐためにも、待遇をはじめとする様々な事柄について、まずは誠意をもって説明をするということが大切であると改めて考えています。

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第1,212話 多数決ではなく、対話して議論を深めよう

2024年04月17日 | コミュニケーション

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「では、多数決で決めましょう」

弊社が研修を担当させていただく際には、テーマにかかわらず多くの場合、講義と演習を繰り返しながら進めていきます。演習では3名から6名で1つのグループになっていただきますが、初対面の人同士のグループでも最初は少し遠慮がちにしていても、演習を進めていく中で徐々にうちとけて意見交換が盛んになっていきます。そのためグループ演習に取り組んでいただくことは各テーマの理解を深めるだけでなく、チームワークを作り上げる上でもとても有効な手段です。

しかし最近では、そのグループ演習での討議の様相が少々変わってきているように感じることが増えてきています。それは、メンバー同士で積極的に意見交換をしたとしても、最終の意見のまとめはそれまでの議論の経緯とは別に、多数決で決定することが多いのです。

多数決は民主主義の基本と言われているように、多くの人が子どものころから慣れ親しんできている方法だと思います。たとえば小学校の学級会などで何かを決める際には、みんなで意見を出し合った後に多数決で決めるという経験をした人はたくさんいると思います。このように、多数決は物事を決定する際の最も基本的な方法ということなのでしょう。

しかし、前述のとおり最近ではグループ討議を観察していると、「最後は多数決で決めればよい」ということを前提に話し合いをしているように見えることが少なくありません。たとえば、演習であるテーマについて話し合いをしてもらうような場面では、まず一人一人順番に意見を言い、それを聞いた周囲のメンバーはその意見に「いいね」や「なるほど」などと同調はするのですが、その意見に対して「なぜそのように考えたのか」を聞いたり、それに対して「自身はどのように思うか」などを発言することは少ないのです。こうした結果、議論の中でメンバー間の実のあるやり取りが少なく、最後のとりまとめも多数決で決めるため、あまり議論が深まらないということになってしまいます。

多数決は一見公平な方法のようにも見えますが、よく言われるように、多人数が支持する意見が必ずしも正解とはかぎりませんし、少数意見に耳を傾けないことにもなってしまかねないという一面も持っています。日本人の多くが多数決を好む理由には、文化的な要因や社会的背景、歴史的な影響などが関係しているようにも言われています。確かに周囲との衝突を避けてうまくやっていくことを重視するあまり、自分とは異なる意見に対して自分の考えを主張することを控えてしまうということが少なくないように思います。こうしたこともあって、結論を出す場合にもわかり易くかつ反対も出にくい多数決という方法を選択するということなのかもしれません。

仕事に限らず、コミュニケーションの重要性は日々様々な場面で叫ばれていますが、そのためにはまずは積極的に対話をしていくことが大切です。意見の異なる相手ともお互いの立場や意見の違いを理解し、その上で簡単に多数決などに流されることなく一致点を探っていくという努力が必要不可欠だと思うのです。

以前、どこかのメディアで「最近の若い人は周りから浮いてしまうことをおそれるあまり、自らは強い主張をしない」というような話を聞いたことがあります。「出る杭は打たれる」ことを恐れずに、意見の異なる相手とも積極的に対話していくことを意識していくことが大切なのではないでしょうか。

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第1,211話 アクティブ ・バイスタンダー(行動する傍観者)になろう

2024年04月10日 | 仕事

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「OJTトレーナーになった先輩が積極的に仕事を教えてくれる人ではなかったので、とても困りました。そして、周囲もそれを見て見ぬふりをしていました」

これは先月、弊社がある企業のOJTトレーナー研修を担当させていただいた際に、受講者のAさんから聞いた言葉です。Aさんは入社4年目の社員として、この4月に入社した社員のOJTトレーナーになるために研修を受講したのですが、そのときに話してくれたのが冒頭の言葉です。

Aさんが3年前に入社し配属された部署でトレーナーとして会ったのが、先輩社員のBさんでした。Bさんは仕事はできる人だったのですが、Aさんに積極的に仕事を教えてくれるようなことはないなどトレーナーとしてはあまり熱心ではなかったため、Aさんが仕事を教わりながら覚えていく機会は多くなかったのだそうです。Aさんとしては、当時を思い返すとBさんがトレーナーとしての責務を全うしていないことは問題だったと感じるけれど、同時にBさん以外の先輩や上司もAさんをフォローすることはなかったため、とても孤独に感じたとのことです。

Aさんの話を聞いて思い浮かんだのが、「アクティブ ・バイスタンダー」と言う言葉ですが、直訳すると「行動する傍観者」という意味です。ハラスメントや暴力や差別が起きたときや起きそうな場面において、「その場に居合わせた人が傍観者としてただ見ているのではなく、何らかの行動を起こす人」のことを言いますが、ハラスメントを防ぐなどの効果もあり注目されています。

この「傍観」については、たとえば職場において同僚がハラスメントを受けていることに気が付いても、見て見ぬふりをしてしまうことなどは中立の立場ではなく、本人にはそのつもりはなくても結果として自身もハラスメント行為に加担してしまったことになるとされています。そして、そのような場面では直接ハラスメント行為を止めさせることはできなくても、たとえばやり取りを記録することや別の人に助けを求めたりするなど、被害者の力になるために勇気をもって一歩を踏み出し行動することで、そうした場を変えていくことができるともされています。

冒頭の話のBさんの行為は、ただちにはハラスメントに該当しないと考えられます。一方でAさんが困っていてることに周囲が気づいていたのであれば、Bさんへ何らかの助言をしたり、Aさんへ「大丈夫?」などと声をかけたりすれば、Aさんが孤独感を持ってしまうようなことにはならなかったのではないかと思います。

4月も10日ほどが経過し、来週以降は早くも新入社員研修を終えた新人が徐々に職場に配属されていく時期になります。当然、新入社員を受け入れる側の各部署ではOJTトレーナーを決めるなどの準備を進めていることと思います。同時に受け入れにあたってはくれぐれもトレーナー1人にすべての責務を担わせるのではなく、周囲の人間も「行動する傍観者」として積極的に関わりを持つようにしていただきたいと考えます。

こうした職場の関係性が新入社員にやる気を起こさせ、成長を促し、やがては巡り巡ってその新入社員が成長した暁に積極的に後輩を育てていくという好循環につながっていきます。それに加えて周囲の人間の成長という点でも大きな意味を持つものだと思います。

新年度がはじまり、いよいよこれから本格的にスパートをかけていく時期です。だからこそこのタイミングで今一度、職場の全員で「行動する傍観者」の重要性を再確認してみてはいかがでしょうか。

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第1,210話 新人を希望する部署に配属することは離職防止に有効か

2024年04月03日 | 研修

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新年度が始まり、各地で企業等の入社式が行われました。私は毎年それぞれのトップが訓示の中でどのような話をするのかを楽しみにしているのですが、今回報道されたトップの言葉は「チャレンジ・挑戦してほしい」、「失敗や変化を恐れずに」、「明るく前向きに」などが多かったと感じています。これらの言葉は取り立てて目新しさはないものの、とても大切なことでありますので、しっかり新入社員に届いて今後の指針の一つとなるとよいと考えています。

また、今年は久しぶりに入社式を対面で行った企業が多かったようですが、これまでとは違い様々な部分で変化が見られたところもありました。たとえば、入社式に臨む新入社員の服装について、それぞれの個性を表現できるようにとスーツやネクタイの着用が義務でなくなり、カジュアルな服装を認める企業がこれまで以上に見られました。

また、労働人口の減少が始まり採用活動に苦労している企業が多くなってきているためか、新入社員の定着を重要視してこれまで以上に様々な配慮をしようとする企業が増えたことも、大きく異なるところだと思います。実際、企業新卒内定状況調査によると、今春卒業の採用充足率は75.8%であり、これは2016年卒以降で初めて8割を下回り過去最低になったとのことです。そのように考えると、せっかく採用した人が退職してしまうことがないように様々な工夫をすることは大切です。具体的には、初任給を上げる、全員を希望する部署に配属する、直属の上司に申告せずに今後希望する部署へ異動希望を出すことができる等々の対応を新たに始めているとのことです。

しかし、このような企業の対応については否定するものではもちろんありませんが、一方で全員を希望する部署に配属するということは、必ずしもその新入社員の成長を促すものにはならないとも考えます。入社前には想像すらしていなかった仕事を担当したり、本人が希望していなかった部署に配属されるなどしたことで、思いがけず本人も気づいていなかった能力が発揮されたり、結果的に新たなスキルを身に付けることができたなど、当人の成長につながるといった例も少なくないと思います。

また、仮に希望した部署に配属されたとしても、そこで上司や先輩社員が新人を丁寧に育成しようとしなければ、目に見える成長にはつながらないことが考えられますし、最悪は離職につながってしまうこともあり得ます。

今後、新入社員が定着し、しっかり成長していってもらうためにも、企業全体としても、また受け入れる側の部署でも、長期視点でじっくりと新入社員の育成に向き合ってほしいと思います。

また、新入社員にとっては希望しない部署に配属されるということは、ある意味で挑戦的な状況だと思うことがあるかもしれません。しかし、そんな状況の中でも前向きな姿勢と柔軟性を持って仕事に取り組むことで、必ず成長の機会につなげることができます。

今後私も新入社員への研修をとおして、そのことを丁寧にお伝えしていきたいと考えています。

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第1,209話 経験を自らの財産として蓄積していけるか否か

2024年03月27日 | キャリア

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「良い店に出会うまでには、あまたの失敗経験があるんですよ」

これは、おいしいお店を見つけるのが上手な知り合いのビジネスパーソンA氏からよく聞く言葉です。A氏は美味しくて雰囲気が良く、値段もあまり高くない店を見つけるのがうまい人です。私もこれまでにA氏から紹介された店で何度か食事をしたことがあるのですが、毎回期待以上のお店だと感じており、その後A氏に会ったときにその旨を伝えた際に聞くのが冒頭の言葉なのです。

A氏はそうしたお店を探すのに絶えずアンテナを張っているのだそうですが、それでも良い店に出会う確率は決して高くはないそうです。長年の勘に基づき良さそうだと思って入った店であっても案外普通だったり、値段が高かったりお店の人の感じがあまりよくなかったことも少なくないそうで、実際に良い店に出会える確率はせいぜい1割位だそうです。この数字が高いのか低いのかはわかりませんが、一つ言えるのは「良い店との出会いはたくさんの失敗経験の結果」なのだということでしょう。

そして、同じことはビジネスや人生においても言えるのではないかと思います。それを裏付けるように「成功するまでにはたくさん失敗している」という意味合いの諺は古今東西たくさんあります。日本の諺には「失敗は成功のもと」というのがありますし、発明王のトーマス・エジソンも「天才とは、1%のひらめきと99%の努力である」、「私は失敗したことがない。ただ、1万通りのうまくいかない方法を見つけただけだ」と言っています。さらに現代においても「経営の神様」と言われた松下幸之助も「失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければそれは成功になる。」と言っています。

これらの言葉が示しているように、成功することは決して簡単なものではなく、そのためには失敗や挫折がつきものであるということです。あらためて言うまでもないでしょうが、成功するためには失敗から学ぶことが不可欠であり、そのプロセスにおいては挫折を経験したり試行錯誤をしたりすることがつきものなのだということだと思います。

冒頭のお店探しの例に限らず、私たちの仕事などでも何度も何度も失敗や挫折などを繰り返しつつ、その経験からいろいろなことを学ぶことによって成長し、最終的に成功につなげることができるというものなのではないでしょうか。

成功に至る道のりは決してまっすぐなものではなく、しばしば曲がりくねっているもののように思います。それ故にその過程での失敗や挫折は目標に向かって進む上で価値のある経験であり、最終的な成功への重要な一歩と言ってもいいのではないかと思います。

失敗を過度に恐れることなく、A氏の例のように前向きに取組んで、その中から絶えず学びを得ながら、さらに進み続ける。諦めずにそうした取り組みを続け経験を自らの財産として蓄積していけるか否かが、成功への鍵なのだと考えています。

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第1,208話 イレギュラーな事態の情報の周知はどうすればよいのか

2024年03月20日 | 仕事

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「運転再開の目途は立っていません」

鉄道事故が起きたときに、駅でたびたびこのような案内のアナウンスが流されます。令和3年度の国土交通省の鉄道統計年報によると、民鉄269件、JR238件、合計507件もの鉄道事故が起きているとのことです。1日に1件以上何らかの鉄道事故が日本のどこかで起きていることになりますので、これは決して少なくない数だと思います。鉄道事故には列車衝突や脱線や火災をはじめ、踏切障害、道路障害、そして人身傷害があるようですが、いずれの理由の事故であっても復旧にはそれなりの時間を要すると考えられますから、もちろん事故は少ないにこしたことはありません。

事故の状況によるため、一概に言えるものではないとは思います。特に人身事故は負傷者の救出や警察による現場検証をはじめ、複数の対応が必要になるようですので、復旧までには相当の時間を要するケースが多いのではないかと考えられます。

私自身も、これまで電車の利用中に大なり小なりの事故に遭遇していますが、最近では昨日(3月19日)に京浜急行電鉄で発生した人身事故により電車が止まり、大きな影響を受けました。最終的に2時間半ほどで運航が再開されたようでしたが、おおよそ4万人に影響が出たとのことですから、大きな事故だったと言えるのではないでしょうか。

この事故に関しては、発生直後から具体的な復旧見込みなどの報道はされず、私自身もネットの情報などを頼りに、そろそろ復旧するのではなかと思い最寄りの駅に向かいました。ところが、改札の中の電光掲示板には「遅れが出ています」との表示が出ている一方で、構内放送では「あと15分は復旧しない」との案内が流されていました。片方は電車は動いているように捉えられる(「遅れている」)一方で、「復旧までしばらくかかる」という情報が混在し、私を含めた乗客達は改札を出たり入ったりと右往左往することになり、結局はいたし方なくJRの駅まで歩くことになったのです。(おそらく、この「遅れている」は当時運行できていた区間の状況のことであったと思われます。)

以上が今回の私の経験ですが、同様の経験をしたことがある人もいるのではないでしょうか。残念ながら事故が起こってしまうことは仕方がないとしても、その後の対処、たとえば運転が再開するまでの案内アナウンスの方法や精度にもう少し工夫はできないものかといつも思うのです。前述のようにまだ運行が再開していないのにもかかわらず、「遅れが出ています」というような表示が出ていれば、当然乗客は運転が再開されたのだと考え、改札を通ってホームまで行ってしまいますし、その時に逆の内容の放送が流されれば混乱を招いてしまうだけです。

もちろん、事故対応の現場では刻一刻と状況が変化するため、それをリアルタイムで把握して周知していくということは容易ではないだろうとは思います。しかし少なくとも誤解を招かないように「〇〇駅~○○駅間は運転中止、その他の区間は遅延しています。」などの表現にすることはできるのではないかと考えます。

鉄道会社にかかわらずどういう業種であっても、事故やイレギュラーな事態は起こりえるものです。その際に、関連する情報をどのように周知するのか、レギュラーの仕事であるならばルールが徹底できているようなものであっても、いざ事故などのイレギュラーな事態が発生した場合にも対応しうるものなのかということを定期的に点検しておく必要があるのではないか。どうすれば対応の精度を上げられるのかについて、日ごろから準備をしておくことが大切であるということを、今回の事故を経験して改めて思いました。

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第1,207話 『大丈夫です』が多用されているのはなぜか

2024年03月13日 | 研修

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「大丈夫です」

これは弊社が担当させていただいた研修の中で、受講者に「何か質問はありますか」と声をかけた際に返されることが多くなった言葉です。また、同様にコンビニなどで買い物をした際にも、店の人から「袋は大丈夫ですか?」と聞かれることも多くなったと感じています。

このように「大丈夫」という言葉は様々な意味や場面で使われることが多いのですが、改めてその意味を調べてみると、「①立派な男子。 ②しっかりしているさま。 ごく堅固なさま ③間違いなく。たしかに。(広辞苑)」とあります。

もちろん、私自身もたとえば体調が良くなさそうな人には「大丈夫?」と声をかけたりするなど日常的に使っています。一方で何でもかんでも「大丈夫」で済ませてしまうかのような、最近の使い方には少々違和感を持っています。

そこで先日、若手社員の研修を担当させていただいた際に、休憩時間に数人の受講者にこの点について質問してみました。彼らの返答によると、「大丈夫」は返答する際も、質問する際も、とても便利な言葉だそうで、人を気遣う際など様々な場面で応用しやすい言葉とのことです。それに対して、冒頭の例のように「質問はありますか?」への返答として「ありません」と答えるのは相手への気遣いが足りない表現だと感じてしまう。同様に「袋はよろしいですか?」と質問するのではなく、「大丈夫ですか?」と質問してしまうのも、自然な表現だと感じるとのことでした。

この話を聞いて思い出したのが、最近はメールやSNSなどの文言の末尾に句点「。」がついていると、威圧的・冷たいと感じ怒っているように感じることがあるという話で、これを「マルハラ」(マルハラスメント)と言うのだそうです。

私の年代は文章の終わりに句点を付けることには何の違和感もなく、むしろ「。」がないと落ち着かない、文字どおり締まりがないように感じられるのですが、最近の若い人たちは逆に感じているということなのです。このように、句読点一つの使い方をとっても年代によってこのように違いがあるものであり、これらは今後も時代とともに移り変わっていくものなのかもしれません。 

この点については、弊社が行う研修の主要なテーマの一つである「コミュニケーション」についても、同じことが言えるのではないかと思っています。コミュニケーションは仕事の場面に限らず、人と人が意思疎通を図るために欠かすことができない、日常的に行っているものではありますが、同時に人と人が行うものである以上、「大丈夫」や「。」の例と同様に、使う言葉や表現ぶりについての理解が年代によって違いが生じてくるのかもしれません。今後時代が進んでいけばコミュニケーションそのものの在り方も変わっていくのかもしれません。

とはいっても、コミュニケーションの中で互いの解釈や理解に齟齬が生じないように、押さえるべきポイントはきちんと押さえていかなければいけないのは当然です。同時に、それでも様々な齟齬が生じてしまうケースは決して少なくないなど、私自身も未だに「コミュニケーション」は難しいものだと思うことが多々あります。

今回、「大丈夫」という言葉から言葉の持つ意味合いの深さとともに、改めてコミュニケーションの難しさにも思い至ったわけですが、研修の際には押さえるべきポイントはきちんと押さえていく。しかし同時に、相手や時代に合わせて変えていくべきところは柔軟に変えていくこともまた大事であると感じました。

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第1,206話 自分とは何者なのか

2024年03月06日 | キャリア

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「私は穏やかな性格です」

ある私の知り合いは、かつて自身の性格を評してこのように言っていました。確かにその人は普段はわりと穏やかではあったのですが、追い込まれて余裕がなくなったりすると、一転して激しく怒鳴ったりするなど、周囲はその変貌ぶりに驚かされることが度々ありました。

この例のように、人は自分のことをわかっているようで、案外わかっていない生き物なのかもしれません。もちろん人間はいろいろな面を持ち合わせているわけですから、一概に「〇〇だ」と言えるような単純な存在ではないことも、また確かだと思います。

これに関して、古代ギリシアの哲学者タレス(Thales)は、人から問われた際に「自分を知ることが一番難しい、反対に容易なことは他人に忠告すること」と答えたとのことです。また日本にも同様の意味の諺「遠きを知りて近きを知らず」がありますから、古今東西、人は「自分のことを知る難しさ」を感じてきたのではないでしょうか。

話は変わりますが、近年就職活動をしている新卒者や入社間もない若手社員から、「就職活動において最も大変だったことは何か」という質問に対して、「自己分析をすること」という答えを聞くケースが多くなってきています。

自己分析とは、文字どおり自身の性格、考え方の傾向、興味の対象や嗜好などを顕在化させ、把握・分析して強みを見出すことです。中には早い段階でできている人もいるのでしょうが、まだ20代前半とさほど人生経験が多くはない若者が自己分析をし、それを文章化することはさぞかし難しいであろうことは、想像に難くありません。

では若者に限らず私たちは、どうすれば自分のことをより深く知り、それを分析することができるのでしょうか。その答えは簡単なものではないのだろうとは思います。たとえば自分にとってあまり歓迎しないような事柄が起こったときや難題にぶつかったときなどの場面において、自らがどのように感じ、考え、その事柄に対峙するのか、そうした自分にしっかり向き合うということが大切なのではないかと私は考えています。そうすることで自分にとっても普段は見えない、意識していない自分の姿が見えてくるということがあるのではないでしょうか。そして、定期的に自己をリフレクションしたり、他者からのフィードバックや専門家の助言を得ることも、自身への理解を深めた上で分析をする際の手助けとなってくれるのではないかと思います。

このように考えると、私たちは普段あまり意識していなくても、人生のいろいろな節目節目で「自分とは何者なのか」という問いを続け、その答えを探し続けるものなのではないだろうかとも思えてきます。

話を若い人の就職活動に戻すと、受け入れ側の組織に求められるのは、応募者の自己分析はまだ人生における「発展途上」の段階での分析にすぎないことをきちんと押さえておくこと、そしてそれを踏まえてどのように育成していくかをしっかり考えて当人と共有していくことが、いるのではないでしょうか。

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