中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,226話 自身の得意分野ではなく、全体最適で考えるとは

2024年07月31日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「メゾソプラノやアルトの人が少ないのなら、私はソプラノではなくどちらかのパートを担当するね」

これは、合唱の練習の前に私の同級生が語った言葉です。

以前にこのブログでも紹介したことがありますが、私は毎年「青春かながわ校歌祭」に参加しています。「青春かながわ校歌祭」とは、神奈川県内の県立高校の同窓生(在校生)有志を中心に、各校の校歌・応援歌等を披露することを通じて親睦を深めることを目的に行われているものです。

校歌祭は毎年秋に行われるため、各同窓会では初夏頃から練習を開始するのですが、私の母校でも同様に今年もすでに練習を始めています。その際に、今年からこの練習に参加することになった2人の同級生が、自身が歌うパートを決める際に言ったのが冒頭の言葉です。

彼女たちは高校の頃から抜群の歌唱力があり、現在でも地元の合唱団に参加するなど日々活躍しているのですが、そこで担当しているパートはソプラノなのです。

因みに、私の母校は当時神奈川県に7校存在していた県立の女子高の一つで、同窓生は圧倒的に女性が多いので、パートはソプラノ、メゾソプラノ、アルトに分けられています。

それでは、彼女たちが自身の得意パートのソプラノではなく、メゾかアルトで歌うことを希望したのはなぜなのでしょうか。その理由は、すでに参加しているメンバーが歌っているパートが主旋律であるソプラノが圧倒的に多いからです。メゾやアルトはこれまで少数のメンバーが頑張って歌ってくれていたのですが、全体のハーモニーとしては今ひとつバランスを欠いていたわけです。

そこで、歌唱力がある彼女たちは日頃自分が歌っているパートではなく、全体のハーモニーを考えて敢えてメゾやアルトを選んでくれたというわけです。その結果、今年からハーモニー全体の完成度が飛躍的に高まったのは言うまでもありません。

これは、彼女たちが自身の専門分野に固執する「部分最適」ではなく、全体のバランスを考えてくれた「全体最適」の結果だと思います。

全体最適とは、組織やチームなどが全体として最適化されている状態を言います。組織全体が最適化されると、業務のムダが排除されることにより組織間の連携が強まり、生産性の向上につなげることができるのです。一方、部分最適とは全体の中の一部分や個人だけが最適な状態を優先する考え方で、組織においては自身や所属部署のことだけを考えて行動すると、部門間で衝突したり壁ができたりしてうまく回らなくなる原因になってしまいます。

そして、このことは会社や企業などに限らず、全ての組織のメンバーの構成においても言えることなのではないでしょうか。組織やチームを全体として最適化するためには、それぞれメンバーがどういう役割を担うのか明確にしておく必要があります。そして異動や退職などでメンバーが入れ替わった場合には、メンバーが担う役割も状況に応じて替えた方が良いケースが出てくるわけです。

先述の合唱のパートの例と同様に、「現在のメンバー構成において、自身はどういう役割を担うと組織全体が最適化されるのか」を考える必要があるのだと思います。自身の得意分野だけを追求するのではなく、全体のバランスとして何が必要なのかを考える視点をそれぞれのメンバーが持つと、その組織は自ずと最適化されていくのではないでしょうか。

ということで、今年の我が母校の合唱のレベルがどのくらい上がるのか、今からとても楽しみにしています。

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第1,225話 何にでも「さん」を付ける人の意識

2024年07月24日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「受講者さんの・・・・」

これは、先日ある研修会社の担当者と打ち合わせをした際に、担当者から何度も発せられた言葉です。私が研修の進め方について説明をした後に、担当者から質問を受けたのですが、その際に「受講者さんが演習を行う時間はどれくらいあるのですか?」と受講者に「さん」をつけて表現されていたのです。それまで受講者に「さん」を付けて表現したことがなかった私としては、その表現に少々驚いたのですが、同時に新鮮に感じたことも確かです。

近年、これまでは「さん」を付けることがあまりなかった言葉に「さん」を付けた表現を聞くことが多々あります。たとえば、派遣社員やアルバイトのことを「派遣さん」や「アルバイトさん」と表現したり、農家のことを「農家さん」と表現したりするのもよく聞きます。また、若い人達の会話の中では彼氏や彼女のことを「彼氏さん」・「彼女さん」と表現するのはもはや普通のことのようです。

この「さん」について、私は本来は人の呼称に付けるものだと思っていたのですが、最近では前述のように会社名や大学名、店舗名に至るまで、何にでも「さん」を付ける人が増えてきたように感じています。このような、いろいろな場面で「さん」付けをする最近の言葉遣いを、皆さんはどのように感じていますか。

そもそも「さん」にはどのような意味があるのでしょうか。改めて広辞苑で調べてみると、「人名などの下に添える呼称。「さま」よりもくだけた言い方。また、丁寧にいうときにつける語」とあり、例として「ご苦労さん」「お早うさん」とありました。

このように「さん」は人名などに添える呼称ですから、先述の「受講者さん」や「派遣さん」などの表現は、本来の意味とは異なる使い方であると考えられます。

それにもかかわらず、「さん」を付けることがこれほど多いのはなぜでしょうか。

これにはいろいろな理由があると思いますが、一つには「丁寧にいうとき」という意味合いからの、相手に対する配慮の現れなのだと考えられます。相手に対する尊敬や丁寧さ、または親しさを表現するために「さん」を付けているということもあり、今の若い人たちがさん付けを多用するのも分かるような感じがします。

また同様の意味で、ビジネスパーソンが会社名などに「さん」を付けるのも、取引関係や競合関係など仕事上で関係がある会社であることを踏まえ、会社を人物のように捉えて敬意を示して丁寧に表現しているということです。

このように、「さん」は相手に敬意を表す言葉としてとても大切な表現ではありますが、とは言え何にでも付けるというのも、またちょっと違うような気がします。こちらは丁寧に言ったつもりでも、相手に違和感を持たせてしまうような言葉遣いをすることは、少なくとも交渉事などをはじめとするビジネスシーンなどでは、できるだけ避けるほうがいいと考えています。

最近では、ちょっとした言葉遣いが大きくニュースで報道されるなどの例もあり、言葉を適切に使うことは簡単なようで実は結構難しいものだなと思います。また、言葉そのものもその時々の社会情勢などを反映しつつ、時代時代で意味合いや使い方などが移り変わっていくものだと思います。だからこそ「今ここでこの言葉を使うのはおかしくないかな」という視点もあわせて持ち続けていきたいと考えています。

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第1,224話 役職定年廃止による影響は如何に

2024年07月17日 | キャリア

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「上司の役職定年が延長されなければ、退職しようとは考えなかったです」

これは、ある企業に20年以上勤務し、監督職として働いていたAさんが自らの退職を決断した際に、その理由として私に語ってくれた言葉です。私はAさんが勤める企業の研修を以前から担当させていただいていたため、Aさんとは何度かお会いしたことがありました。Aさんの研修中の発言や研修に取り組む姿勢を見ていて、前向きに仕事に取り組む人であると同時にリーダーシップもある人ではないかと考えていましたので、将来が楽しみな逸材だと感じていました。

そのAさんが冒頭のように今回、退職を決断したということなのです。話によると、Aさんは自分たちの世代が管理職になったら「今よりも、もっとよい会社にしたい」と考えていたとのことで、彼なりの夢があったとのことです。そしてそれを実現するためには、監督職よりさらに大きな権限が必要となることから、早く管理職になってプラスの影響力を発揮したいと考えていたそうです。しかし、この度会社が役職定年の廃止を決めたため、上の世代が会社に残っている以上、会社を変えていくのは簡単なことではないと判断して、退職の決断に至ったとのことでした。

近年、役職定年制を廃止する企業が増えています。パーソル総合研究所の役職定年制導入の有無などについてのヒアリング調査によると、役職定年制の制度があるとした企業は31%、新設した企業は13%、反対に制度廃止が16%、廃止予定が13%、制度なしが28%とのことです。(2024年7月15日 朝日新聞 朝刊)

調査から見えてきたのは、今後も役職定年を廃止する企業は増える傾向にあり、その割合は約6割になるとのことです。役職定年を廃止する理由には、給与が下がることによる役職者の仕事に対するモチベーションの低下、管理職の不足、また労働人口の減少により若手を採用することが難しくなっていることから、労働力の補足などがあると言われています。こうした状況の中では、役職者のこれまでの経験により培われた様々なノウハウを維持できることは、組織とって魅力があることは確かだと思います。

しかし同時に、組織には定期的に人が入れ替わることで次の世代が育つという面や、それによる活性化が期待できるという面があります。先述のAさんの例ように、役職定年の廃止によって組織の新陳代謝が阻まれることになり、人事が硬直化してしまう結果になってしまうことや、次世代を担う人材のモチベーションが低下してしまうなどの弊害が生じる可能性があることも、また事実です。

人件費の抑制や組織の活性化などを目的に始まった役職定年制度ですが、人手不足やモチベーションの低下をはじめとする現在の状況は、制度の導入当初の想定を超えるものになり、企業などでは様々な試行錯誤をしながら、そのバランスを探っている状況だと思います。

今後、役職定年制度がどのように推移していくのかは今の時点では定かではありません。仮になくしていくような流れであるにしても、単純に以前と同じ形に戻すのではなく、どのような形が一番合っているのか、それぞれの企業にはさらなる工夫が求められるのではないかと考えています。

前述の新聞記事でも、各社様々な取組みを既に行っているとのことであり、今後どのような形にまとまっていくのか、引き続き注視していきたいと考えています。

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第1,223話 研修中の休憩は何回、そして何分あるとよいのか

2024年07月10日 | 研修

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「休憩時間の回数を増やしてほしい」、「休憩は10分では短い。電話対応したいので30分にして欲しい」

研修が終わりアンケートを撮った際に、このように書かれることが時々あります。

研修の際の休憩は何回程度が、また1回あたりどれくらいの時間が適切なのか。これは私が研修業界に身を置くようになった30数年前から定期的に話題になってきていることの一つです。

これについては、研修のテーマや時間、研修の進め方は講義中心なのかディスカッションやロールプレイングなどを採り入れるのかなどによって変わってくることから、唯一絶対の正解というものはないと私は考えています。

勤務時間中の昼休みは、労働基準法の定めもあって通常は1時間とることが大多数でしょうが、研修での休憩については、どのように考えればよいのでしょうか。

これにはいろいろな考え方があり、前述のように一概には言えないとは思います。まず休憩を入れる目的を考えてみると、お手洗いなどの用足しのためや、集中力を維持するためなどと言われています。

それでは、人間の集中力が続くのはどれくらいの時間なのでしょうか。集中力が高い人とそうでない人とでは違いがあるかとは思いますが、これを考える際の参考になるのが、ボブ・パイク氏が提唱する「90/20/8の法則」です。

ボブ・パイク氏は、ボブ・パイクグループ創設者・元会長で「参加者主体」の研修手法についての著作があります。(中村文子、ボブ・パイク著「2021年」『オンライン研修ハンドブック』(日本能率協会マネジメントセンター)。この書籍によると、人が集中をキープして話を聞ける時間は90分、記憶をしながら話を聞ける時間は20分、さらに人が受け身の状態で興味を持って話を聞ける時間は8分とのことです。これに基づけば、研修では長くても90分以内に1回は休憩を入れた方が良いということになります。

振り返れば、私が小学生の時の授業時間は1科目40分でした。中学・高校は50分、大学では90分でした。さらに、社会人大学院に至っては、一コマの授業は180分でした。今にしてみれば随分と長時間でしたから、どれくらい集中できていたのかと考えると自信はありません。

また、同時通訳などは15分程度が限界だそうですし、自治体での研修で手話通訳者がつく時にも、3人位の方が約15分ごとに交替されています。このあたりの時間も、ボブ・パイク氏の説にかなっているように思えます。

以上のことから考えると、研修の途中で入れる休憩は60分から90分に1回くらいの頻度が適切だと考えます。次に1回あたりの休憩時間は、全体のプログラムとのバランスなどによって決めるのが良いと思いますが、通常は10分もあれば用足しやリフレッシュするには十分なはずです。そもそも研修の休憩時間には、営業職の人などが顧客への連絡をするというようなことは想定されていないのです。

そうは言っても、では営業職の人などの研修中の顧客への連絡はどうすればよいのか。その対応についての考え方もいろいろあるかと思います。しかし研修中に顧客へ急いで連絡をしなければならないような状況ができるだけ起こらないように、事前に顧客と段取りしておく、また職場の人にフォローを依頼していく等の対応をしておくことに尽きるのではないでしょうか。

年に何日もないせっかくの研修です。事前準備を十分にして、集中して研修に臨んでいただきたいと考えています。

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第1,222話 ライバルの存在は必要か否か

2024年07月03日 | キャリア

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「AにとってBはライバルなんですよ。たぶん双方が意識していると思います」

これは、先日弊社がある企業の中堅社員研修を担当させていただいた際に、研修終了後にご担当者から聞いた言葉です。

私は以前にもAさんとBさんにお会いしたことがあるのですが、今回研修で再会したところお二人とも実に溌溂とした表情で研修に参加し、演習にも終始前向きな姿勢で取り組んでいらっしゃいましたので、頼もしさを感じると同時に着実に成長されているように感じました。そのことをご担当者にお伝えした際にお聞きしたのが、冒頭の言葉です。

ご担当者のおっしゃるように、AさんとBさんは互いにライバルとして、日々切磋琢磨しているのかもしれません。ライバルとは言うまでもありませんが、競争相手、対抗者、好敵手という意味です。AさんとBさんが普段からお互いに相手をどのように思って仕事をしているのか、直接聞いたことはないので実際のところは定かではありません。しかし共に生き生きとした表情でリーダーシップを発揮しながらグループ演習に参加していましたので、お互いの存在が良い意味での刺激になっているのではないかと想像しています。

私は、様々な企業などの昇格や採用試験の面接官、また研修を担当させていただく中で、Z世代と言われる近年の若手社員の特徴の一つに、「競争心の低下」があるのではないかと感じていました。それは、採用試験の集団討議や研修中のディスカッションの中で、相手を気遣いすぎるあまり自身の発言を控えたり、しっかり話し合わずにジャンケンで結論を出したりするような場面を見ることがしばしばあるからなのです。

しかし、AさんやBさんのような前向きに研修に取組む中堅社員に出会い、その理由の一つにライバルの存在があるとしたら、それはライバルが身近にいることによるプラスの刺激によるものであり、とても素敵なことだと感じました。

あらためてライバルの存在について考えてみると、メリットとしては何と言っても競争心が刺激されるということがあると思います。「負けたくない」という思いが、自身が積極的に努力をする動機づけになるのであり、それによって自身の目標が明確になります。そしてそれが具体的な行動につながり、その結果としてパフォーマンスの向上に結び付いていくように考えています。

しかし一方では、ライバルのことを過度に意識しすぎてしまうと、自身との相対的な比較に囚われてしまい、相手が新たな役割を得たり活躍しているようなことを見聞きすると、嫉妬心を燃やすようなことになってしまいます。それは本末転倒な状態であり、自身のモチベーションやパフォーマンスの低下にもつながりかねないものだと思います。

ライバルの存在にはこのように多くのメリットがある一方、デメリットもあるわけです。ネガティブな感情に陥らないように意識し、ポジティブでバランスの取れた競争心を保ちながらライバルとの健全な競争関係を築き、それを自己の成長や目標達成に向けたモチベーションとしていくことが大切だと考えています。

ライバルとの良き出会いを!

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第1,221話 ジェンダーの平等が進む将来はいつ来るのか

2024年06月26日 | キャリア

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「管理職研修は男性講師に担当していただきたいと考えています」

これは私の知り合いの女性講師のAさんが、今から30年ほど前にある企業の研修担当者から告げられた言葉です。Aさんはその企業で長年マナー研修とコミュニケーション研修を担当してきた経験があるのですが、打ち合わせの中で話が管理職研修に及んだ際に冒頭の言葉を言われたそうです。Aさんが研修担当者に理由を尋ねたところ、「マナーやコミュニケーションは易しいテーマだから女性講師でも担当できるが、管理職研修は難易度が高いから女性講師には無理。そして管理職になっているのは男性だけであり、女性は管理職にはなっていない。にもかかわらず女性講師から研修を受けることは、受講者が到底受け入れらないはずだ」と言われたとのことでした。

この話をAさんから聞いたのは20年以上前のことですが、今回思い出すきっかけとなったのが、現在放映されているNHKの朝ドラ(連続テレビ小説)「虎に翼」でのやりとりでした。そこでは、主人公は日本初の女性弁護士となったものの、弁護士を探している依頼者から「弁護士は男性にお願いしたい。女性はちょっと・・・」と何度も言われてしまい、活躍する機会になかなか恵まれないという場面が描かれていました。

「虎に翼」の主人公がこうした経験をしたのは、今から80年以上も前(1940年頃)のことですが、それから50年経過した今から30年前にも先述のようにAさんも同様の経験をしていました。

さらに30年が経過した現在、はたして女性の活躍は進んだのだろうかと考えると、最近でも大学の医学部入試において女性差別があったことが報道されるなど、相変わらずの状況が残っていることは記憶に新しいところです。

そして、さらに先日(2024年6月12日)世界経済フォーラムが、世界各国の男女平等の度合いを数値化した「ジェンダーギャップ指数」2024年版報告書発表し、日本は146か国中118位だったとのことです。この順位に驚いた人も少なくないとは思いますが、日本は特に政治と経済の分野で女性の進出の遅れが際立っているとのことでした。

報道では特に議員や政府高官、それに企業の管理職に占める女性の割合は14.6%であり、各国の中では130位と「日本の重要な役職における男女格差は依然として顕著だ」と指摘されているとのことでした。日本でも女性活躍の重要性が叫ばれるようになって久しいですが、それに向けた歩みが遅々としていることが改めて顕在化したわけです。

報道の中で私が特にショックを受けたのは、現在のペースだと日本だけでなく世界全体で男女格差を解消するには134年かかることから、男女平等の実現に向けた取り組みを強化する必要性があるとしていた部分です。その実現は長く大変な道のりと言わざるを得ないと思います。

今後、日本においてジェンダー平等を実現していくためにはどうすればよいのか。その答を実現していくのにはまだまだ時間がかかるだろうと思います。たとば組織においては女性役員や管理職の登用のための目標を改めて設定して、具体的な行動計画に基づいて取り組みを進めていくしかないのだと考えます。現在は法曹界で活躍している女性も数多くいますし、私自身も女性講師として日々管理職研修を担当しているなど、歩みは遅々としているように見えるかもしれませんが、確実に前進はしているのです。

将来、2024年を振り返ったときに、当時は女性の活躍は進んでいなかったけれど「ジェンダーの平等が大きく進んだ」と言える時代が来るように、周囲に委ねるだけでなく私自身が今できることは何かを絶えず問いかけ、一つ一つの課題に取り組んで後進のための道を開く一助になるように取り組んでいきたいと考えています。

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第1,220話 アイディアが思い浮かぶタイミングとは

2024年06月19日 | 仕事

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「ウォーキングをしていると、研究の新たな視点やアイディアが思い浮かぶことが多いので、毎日必ず歩くようにしているんです。」

これは、先日放射線によるがん治療の研究をしているある研究者が話していた言葉です。学術的な研究をしている人に限らず、多くのビジネスパーソンも仕事とは全く異なる場所やタイミングに、ちょっとしたきっかけで良いアイディアが浮かんできたなどという経験をもっているのではないでしょうか。たとえば、家のお風呂で湯船に浸かっているときや、寝床に入ってうとうとしているときなどに、突然具体的な発想やアイディアが浮かんでくるということがあります。私自身はこのひらめきのような感覚を、「目の前にアイディアが下りてくる」といった感じでとらえています。

古今東西、同じような経験をしている人の話はよく聞きますが、このように仕事から少し離れたタイミングで良いアイディアなどに恵まれるということがあるというのは、どうしてなのでしょうか。

医学的にどこまで解明されているものなのかはわかりませんが、これに関して私が思っているのは、仕事から少し距離を置くことでストレスやプレッシャーから解放され、リラックスした状態になれているということが理由の一つにあるのではないかということです。

仕事に集中し続けてこそこうしたひらめきが生まれると思いがちですが、実際には私たちはそうなるとかえって集中力が低下したり、思考が固定化されてしまったりすることが多いように感じます。

逆に、前述のような仕事を離れてリラックスできている状態では、自由にさまざまな発想を働かせることができるようになり、脳が無意識のうちに様々な情報を処理し、関連性のある情報を結びつけ「ひらめき」につながることが起こるのではないでしょうか。その意味では、この一連のプロセスは意識的にひたすら物事を考えつづけるよりも効率的であるといえるのかもしれません。

「いつでもどこでもアイディアが湯水のように沸き続ける」という人はそうそう多くはないかと思いますが、仕事に追われ余裕がないときほど、逆に意識的にいったん仕事を離れて休息を取るようにすることが必要なのかもしれません。そうすることにより、脳がリフレッシュされて集中力が回復し、再び仕事に戻ったときに新鮮な視点で課題に取り組むことができるようになります。その結果、自分でも思いがけないような新しいアイディアが目の前に現れるということになるのではないでしょうか。

しかしそうは言っても、ただ単にリフレッシュ・リラックスすれば誰でもすぐによいアイディアが浮かぶというものではないのは明らかです。もともと持っていた様々な情報が、それまではばらばらになっていたものが、あるきっかけで一つに結びつきそれが新しいアイディアになっていくわけです。そうなるための前提としては日ごろから一見仕事に直接結びつかないと思えるような情報であっても積極的にストックし、整理するなどの備えをしておくことも必要なのだと思います。

私たちビジネスパーソンは、仕事中はそれに集中することはもちろん重要なのですが、何事にもメリハリは必要です。日ごろ、物事に追われてしまい気が付いたら余裕がない状態になっていたということになりがちですが、だからこそ忙しい中でも意識的にメリハリをつけ、少しの余裕をもって物事にあたれるように心がけていきたいと考えています。

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第1,219話 研修の成果はどれくらいあるのか

2024年06月12日 | 研修

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「研修効果はもちろんあるほうが良いけれど、研修を1回やったからって、そんなにすぐ効果は出ないでしょう」

これは弊社が研修を担当させていただいている、ある企業の経営者A氏から言われた言葉です。

一般的には、経営者や研修部門の担当者も研修を行ったらすぐに効果が出ることを期待する人が多いです。研修の前と後で社員にどれくらいの変化があったか、どれくらい成長し、それが会社の売り上げや利益にどれくらい影響するのか、という点にのみ関心を持つ人が圧倒的に多い中で、この経営者はそういう意味では特別な人と言えるのかもしれません。

研修の成果はどれくらいあるのか、これは古くて新しい議論です。私が人材育成の仕事を始めた32年前には既に議論されていましたし、それ以降もずっと繰り返し議論されてきているものの、その答えはいまだに明確にはなっていないように思います。

しかしながら、できる限り研修の成果が発揮されるように発注者側(研修担当者)と研修を担う講師で議論を重ね、事前課題や事後課題を行ったりと、手を変え品を変え様々な工夫を重ねながら現在に至っているのです。

一方、私がこれまでに担当させていただいた企業の中には、たった一回の研修で社員が「変わらなかった」と言って、導入したばかりの研修を単年度で止めてしまったところもありました。一度の研修で「社員が見違えるように変わる」ことを期待したくなるという気持ちはわからなくはないのですが、特定の知識やテクニックなどを伝授するというようなケースを除けば、研修にはそこまでの即効性はないのも現実なのです。もし劇的な変化があったという場合には、その研修の中身はまさに劇薬のようなものかもしれませんし、そこで得られた効果も長続きが期待できるようなものではないのではないかと想像します。

多くの研修では、受講者自身が様々な気づきを得ること、自らが成長するきっかけとなることなどを目的に、そのためのものの見方や考え方、取り組み方などを学ぶことが一般的です。

まず、講師の講義や演習に複数人で取り組む中での受講者同士の意見交換や議論を通じ、異なる視点や経験に触れることによって、たくさんの気づきを得ることができるのです。そして、互いに触発したりされたりすることで学びあう場となり、それらを通じて自身を成長させるきっかけとなるのです。 

冒頭でご紹介したA氏は、「研修は繰り返しやらなければ意味がない」とおっしゃっています。「1日や2日話を聞いたり、演習を行ったりするだけではだめで、やり続けることだ。コストはかかるけれど、社員を育てないで会社の成長があるわけがない。だから研修はやる。そうすることが社員へのメッセージになる。うちは教育を大切にし、やり続ける会社だ。それを受け入れられないのであれば、辞めてもらって構わない」とまでおっしゃっています。

これだけのことを社員に言い続けるA氏のような覚悟を持っている方がどれくらいいらっしゃるのかはわかりませんが、研修はやり続けることが大切だという言葉を担当させていただく者として改めてしっかり受け止めさせていただくとともに、そうした企業の研修を担当させていただく機会に恵まれることに感謝し、誠心誠意務めたいと考えています。

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第1,218話 現場こそが出発点でありゴールでもある

2024年06月05日 | キャリア

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学生優位の「売り手市場」が続いており、計画人数通りに新入社員を採用できない企業が中小企業を中心に増えているとの報道にたびたび接します。

こうした状況の中、学生を惹きつけるために入社直後の職種や勤務地を確約する企業がここ数年相次いでいるとのことです。6月4日の朝日新聞の記事では、コース別採用を導入し入社後に経営企画や商品開発などに進むコース、企業営業などに進むコースなど、配属先によって4つのコースに分けて募集している企業が紹介されていました。

こうしたコース別採用には、学生にアピールして計画どおりに人を採りやすくする狙いがあるのだとは思いますが、その一方で応募者が集中する人気コースがある一方、応募者が少ないコースができてしまうのではないかという、新たな懸念も考えられるのではないでしょうか。

私は定期的に、入社1年目から10年くらいの若手社員の話を聞く機会があるのですが、彼らが入社時に希望していた配属先は、経営企画や商品企画を中心にマーケティングやグローバル〇〇部というように、比較的華やかなイメージの部署が圧倒的に多いのです。それらの部署は、テレビドラマなどで取り上げられることもあるため、仕事経験がない若手にとってもイメージがしやすく、同時にかっこよく見える部署だと感じられるからということのようです。

この観点からコース別採用を考えると、学生には仕事の内容が想像しにくい部署は応募者が少なくなってしまうのではないかということが心配されます。

一般的に、企業にはバリューチェーンという考え方(ある製品を世に送り出す際の一連のプロセスを価値のつながりとして捉える考え方。業務(仕事)の連鎖のこと)があります。

「購買物流」→「製造」→「出荷流通」→「販売マーケティング」→「サービス」という一連のバリューチェーンの主活動や、「全般管理」、「人事・労務管理」、「技術開発」、「調達活動」といった主活動を側面から支援する活動などです。それに関わるどの部署もなくなっては困る働きをしているわけですから、部署の間で人気に偏りが生じるのは問題です。そのように考えると、今後コース別採用を導入する企業が増加した結果、組織内の部署の人数にアンバランスが生じてしまうなどの新たな問題の発生が懸念されるのではないでしょうか。

私は、応募者数を確保するとともに、入社後に引き続き活躍してもらうためには、採用の部分だけを手厚くするのではなく、従来から多くの組織が取り入れているように、業種に限らずまずは「現場」に配属して経験を積んでもらうことが大切だと考えています。サービス業であれば顧客と接する最前線の現場に、製造業であれば製造現場などですが、直接顧客と触れあったり企業の製造現場の最前線を経験することを通して企業や組織の土台・基本を知ることができるのです。その意味で、現場こそが出発点でありゴールでもあると言ってもいいのではないかと考えています。現場で十分に経験を積んでから経営企画や商品開発などの部署で仕事をしたいと考えても遅くはないですし、より活躍ができるのではないでしょうか。

キャリア形成や成長は、配属された部署が担ってくれるものではなく、個々の日々の取り組みが未来の自分を作るということを忘れないでいただきたいと考えています。

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第1,217話 役職定年を廃止する組織の成長とは

2024年05月29日 | 仕事

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「役職定年」を廃止。

近年、役職定年制度を廃止した企業等に関する報道が続いています。言うまでもありませんが、役職定年とは予め定められた年齢に達した社員が部長や課長などの役職(主に管理職)から退く制度であり、大企業を中心に導入されてきました。

この役職定年制度は、大きくは若手社員の育成と人件費の抑制の2つを目的として導入されたものです。しかし制度の導入後時間が経過する中で、シニア層のモチベーションの低下、人手不足で若手社員の採用が困難になってきていること、さらに働き方をはじめとする環境の変化等により、制度の運用を見直し始めた組織が増えてきたことは、当然のことだと思います。

また、こうした動きは企業に限らず、自治体でも制度の廃止ではないものの、定年を迎えた職員を引き続き参与などの肩書で、それまでと同じ仕事を担当させるという例も増えてきているようです。こうした例も、実質的には同様の動きだと思います。

こうした動きに関して私が気になっているのは、いわゆる組織の若返り、世代交代の観点からの取り組みも同時にしっかりと進める必要があり、そこを決しておろそかにしてはいけないということです。 

役職定年を廃止し、シニア社員がそれまでと同様に管理職のポジションで同じ仕事を続ける場合、当人はモチベーションを維持できますし、安定してかつ確実な成果も期待できます。しかし、それは次にそのポジションを担っていくことになる若手社員にとっては、そうした経験を積み成長していくキャリア形成の機会が限られることになります。その結果、若手社員のモチベーションをどう維持し育成していくかが、これまで以上に大切になっていくと考えています。

そのためにも、若手社員に今後のキャリアプランを示して本人と企業で共有し、それに向けて計画的・継続的に育成を行い、シニア層からのスムースなバトンタッチができるように同時に手を打っておくこと。この観点でしっかりと取り組んでいくことが欠かせないと考えています。

同時にシニア社員にも継続して「会社がバックアップしている」「これからも成長していける」と実感できるようなキャリア開発の機会を提供することも必要です。

組織全体が成長していくために、若手社員、シニア社員の一方に力点を置くのではなく、双方にモチベーションを維持してもらえるような機会をいかに提供できるかが、今後の鍵になると考えています。

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