「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「発言を否定されないので、安心して発表することができました」
これは弊社が研修を担当させていただいた際、終了時の受講アンケートでいただくことの多い感想の一つです。
具体的には、研修の中で受講者に発言を促し答えてもらったり、発表してもらったりするような場面はたくさんあるのですが、その際の私からのフィードバックが否定的なものではなく、肯定的な表現だったことを評価してくれた感想のようです。
近年、アンケートで「発言を否定しない」ことに対する記述が増えたように感じます。こうした記述が増えた背景には、自身の発言に対して否定されることを過度に心配したり、発言後の周囲の反応に過敏になったりしていることがあるのかもしれません。
自身の発言を否定されるより肯定をしてもらった方が嬉しい気持ちになるというのは当然のように思えます。しかし、それがあまりに過剰になってしまうと発言することへの敷居があがってしまい、同時に窮屈な気持ちにもなってしまいます。
このように発言の結果に過度なほどに敏感になってしまうのは、SNSの普及などによる「情報の即時性」が影響しているのかもしれません。その結果、否定的な反応を恐れるあまり自分の意見を言えなかったり、自己表現が難しくなったりしているようにも思います。
これについて、先日ある企業の研修終了後の懇親会に参加する機会がありましたので、その際数人の受講者にその理由を尋ねてみたところ、次のように答えてくれました。「そもそも自分に対して自信がないため発言が否定されるようなことがあると、自分の価値や判断が否定されたように感じてしまうんです。少人数であればともかく、研修時に大勢の前で発言して、間違ったことを言ってしまったらどうしようと考えてしまいます。間違った発言をしたことで、周囲のメンバーから笑われてしまうのではないかと心配になるのです」とのことです。
これは「心理的安全性が欠如している状態」であると考えられます。以前、本ブログでも取り上げていますが、「心理的安全性」とは組織行動学を研究するハーバード・ビジネススクールのエイミー・C・エドモンドソン教授(Amy Claire Edmondson)が1999年に提唱した心理学用語で、「心理的安全性」を自身の考えや気持ちを安心して発言できる状態、つまり「チームのメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」と定義しています。
それは、チームの中で自分の意見を(仮にそれが的外れだったり、間違っていたりする意見であったとしても)臆することなく発信できる状態であり、心理的安全性が高くなれば、組織にとっても様々なプラスの要因が働くことになるのです。具体的には、コミュニケーションが活発になり、仕事の生産性が上がったりエンゲージメントが高くなったりすることなどが期待できるのです。
そして、私はこの心理的安全性は研修においても大変重要な要素であると考えています。それは、自身の考えや気持ちを安心して発言できる状態が担保されていないと、大勢の中で自分の考えを発言することに気後れしてしまうようになりがちです。そうなるとせっかくの研修で得られるはずの成果が減じてしまうことになりかねないからです。
こうしたこともあり、私は研修の冒頭には必ず主体的に発言していただくことを推奨しています。同時に、「こちらが行う質問に対して唯一絶対の答えがあるわけではありませんから、どういう発言であってもダメ出しをするようなことは決してしません」と伝えています。今後も担当させていただいた研修においては心理的安全性を担保していきたいと考えています。