中小企業のための「社員が辞めない」会社作り

社員99人以下の会社の人材育成に役立つ情報を発信しています。

第1,175話 褒められることを、求めすぎていないか

2023年07月19日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「他者から褒められたときです」

これは、弊社が研修を担当させていただいた際に、演習等で「仕事において、やる気が出るのはどういうときか」を考えてもらう際に、多くの受講者が口にする答えです。

確かに、他者からほめられたり認められたりすると嬉しい気持ちになったり、前向きな気持ちになったりするのは年代に関係なく、共通するところだと思います。私の祖母は104歳まで元気に手芸を嗜みながら暮らしていましたが、手先の器用さや手作りした品を周囲にプレゼントしていることを周囲が褒めると、とても嬉しそうな表情をしていたことを覚えています。また、私が子どもの頃に飼っていた犬は17年生存しましたが、老犬になってから長老であることを市から表彰されたときは、誇らしげな表情になっていたように感じました。

このように考えると、褒められると嬉しいと感じるのは、私たち人間を含む生き物の本質なのかもしれません。

学術的には、動機付け理論の大家のエドワード・L. デシ(Edward L. Deci)が「外発的動機付け」と「内発的動機付け」の関係性を理論化しています。内発的動機付けには3点の方法を示していますが、その一つが「他者受容感」です。他者受容感とは、周囲の人から「受け入れられている」と感じる気持ちであり、「自分自身がどれだけ他者や社会の役に立つことができるか」という感覚とされています。褒められることによって、他者や社会の役に立てていると感じることができるため、やる気やモチベーションが上がることにつながっているのだと思います。このように、「役に立っている」ということを周囲から告げられたり、褒められたりすることで前向きな気持ちになれるのは、とても素敵なことだと思います。

しかし一方で、最近私は他者から褒める言葉をかけてもらうことだけでなく、自分自身を客観視して「以前よりもできるようになった」、「私なりに頑張った」というようなことを自らが評価して、それ肯定的にとらえ、やる気を上げられるようになるということも、同じように大切なことなのではないかとあらためて考えています。

振り返れば、1996年アトランタ五輪女子マラソンで銅メダル手にした有森裕子さんが、ゴール後のインタビューで「自分で自分を褒めたいと思います」と話していました。当時流行語にもなるほど多くの人の共感を呼んだ言葉でした。最近では「頑張った自分へのご褒美」として、好きなものを買ったり、おいしいものを食べたりといったコマーシャルなどを目にする機会が増えてきているように思いますが、今の社会の「空気」のあらわれではないかと感じているのです。

他者から褒められることはとても嬉しいことであり、ありがたいことでもあります。しかし、それがないと不安になってしまったり、いつでも他者からのほめ言葉を待っているようになってしまっては、ある意味での他者依存の状態になってしまうのではないかと、少々心配になってします。

このブログでもこれまで何度も人材育成の観点から、たとえば上司や先輩社員の役割について触れる中で、「褒める」ことの大切さをお伝えしてきています。それはこれからもますます重要になっていくと思っています。しかし、同時に他者からの誉め言葉は「もらえたらラッキー」というくらいに考え、過度に気にしすぎない、あわせて、自分で積極的に自己を評価し、がんばったときにはきちんと肯定し褒めていくということが、自身を成長させるうえでも、大切なのではないかと考えています。

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第1,167話 親しい間柄ではない相手が、友達言葉を使用する心理とは

2023年05月24日 | コミュニケーション

「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「馴れ馴れしい言葉遣いが気になりました」

これは、私の知り合いが自身が勤めている会社の階層別研修に出席した際に、外部講師の言葉遣いが非常に「フレンドリー」であったことに違和感を覚えたと話をしてくれたときの言葉です。

その研修を担当した講師は50代後半くらいの男性で、30代が中心の受講者に対して成長してもらいたいということを繰り返し熱く語っていたとのことです。そうした気持ちが強く働いたためかどうかはわかりませんが、受講者への語り口は「ここがポイントだよ」「これの目的はここにあるんだ」など終始「フレンドリー」だったそうです。そのため、知り合いは講師のその言葉遣いの方が気になってしまい、研修内容はあまり頭に入ってこなかったとのことでした。

研修に限ったことではありませんが、様々な接客の場面、たとえば病院での医師や看護師、老齢の親に付き添って訪れた美容院や介護施設などでも、「友だち言葉」で話をする人が少なからずいるように感じています。もちろん、相手は親しみを込めてそのような言葉遣いをしていることは想像がつくのですが、面識の程度にかかわらずさほど親しい間柄ではない相手からそのように話しかけられることについては、私自身は正直あまり居心地がよくありません。皆さんはこの点はいかがでしょうか。

それでは、前述のように顧客や患者、利用者に対して友達言葉で話をする人がいるのはなぜなのでしょうか?職種や個人により様々な考え方があるかと思いますが、多くの人は意識するしないにかかわらず相手との心理的距離を縮めたい、親しみやすさを表現したいという気持ちから、フレンドリーな友だち言葉を使用しているのではないでしょうか。

フレンドリーな対応を違和感なく受け入れられる人ももちろんいるかと思いますが、必ずしもそのような人ばかりではありませんので、受け取り方は様々なのではないでしょうか。

 それでは、話しかけた相手がどのように受け取っているのかを確認するためには、どうすればよいのでしょうか。相手に直接聞くことができれば話は簡単ですが、冒頭の例のように外部から来た研修講師の言葉遣いを受講者が指摘することは簡単にできることではなさそうです。また、そもそも相手に「どう受け取っています?」と確認すること自体が簡単なことではありません。

そこで、相手の受け取り方によって対応を変えるのではなく、親しみやすいことと馴れ馴れしい言葉遣いは別のこととして、一線を引いて考えてみてはいかがでしょうか。もし相手に対して親しみやすさを表わしたいと考えるのならば、言葉遣いをフレンドリーにするのではなく、親しみを込めた小さな対応を少しずつ、時間がかかってでも積み重ねていくのが一番確実ではないかと思います。

親しい関係は「焦らずじっくり」構築していくことがお勧めです。そして、信頼関係が構築できた結果、気が付いたらお互いが親しみやすい言葉遣いで話ができるようになっていたというのが理想なのではないでしょうか。

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第1,156話 リスペクトされる人は、まず相手を尊重している

2023年03月01日 | コミュニケーション

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「リスペクトしています」

これは、FIFAワールドカップ2022でサッカー日本代表チームを率いた森保一監督に対して、多くの選手が異口同音に発する言葉です。ワールドカップ終了後、はやくも2か月が経ちましたが、現在も様々なメディアが森保監督を取り上げており、今も変わらず注目されていることがわかります。

私自身も森保監督のリーダーシップには注目をしていたのですが、先日、生配信のオンライン講座である「NHKアカデミア」を聴講する機会を得ました。「NHKアカデミア」は各界のトップランナーが「今こそ共有したい」を語り尽くす講座なのです。当日は森保監督の人気を象徴するかのように、スペインやイングランドなど海外から参加した人も含め、1、000名を超える参加者が聴講したとのことでした。

番組は、参加者が申し込み時に予め質問した内容を基に、「チームをまとめる」から「決断力を鍛えるために」などの4つのプログラムで構成され、森保監督が指名した人の質問に答える形で進行していきました。

森保監督が指名したのは10代から20代の若い人が中心で、質問はサッカーに関することだけでなく多岐に及びましたが、そのときの森保監督の対応に人間性がとても出ていたと感じられ、なぜこれほど多くの人を魅了し尊敬されるのかがわかったような気がしました。

番組で監督は、1. 質問者からの話に傾聴する、2. 質問へのお礼を言う、3. 質問者が置かれた立場や役割に対して「すごい、すばらしい」と賛辞を送る、4. 質問に懇切丁寧に応える、5. コメント後に質問に対する答えになっていたかを確かめる、6. 最後に「頑張って」などのエールを送るという流れで進めていました。

こうした対応は、まさに森保監督自身が質問者である他者を尊重していることの現れだと思います。どの質問に対しても、決しておざなりに応えるようなことはなく、真摯に丁寧に対応し、一人一人に対してかなりの時間をかけていました。事前に時間は1時間30分間と聞いていたのですが、森保監督はその1時間30分が経過した後も「アディショナルタイム」と称して引き続きたくさんの質問に答えており、結局番組が終了したのは30分延長した開始2時間後でした。これには参加者は皆、大満足だったと思います。

番組の中で私が特に印象的だったのは、質問内容にかかわらず監督が質問者へ対し「楽しんで」、「楽しむことを忘れずに」、「難しいことを含めて楽しむこと」などと、「楽しむ」ということを繰り返し強調していたことで、森保監督の姿勢として「楽しむ」ことをとても大切にされていることが伝わってきました。そして時間を気にせず真摯に対応する姿勢に、相手に対するリスペクトを感じました。

今回この2時間の講座を聴講して、森保監督がなぜ選手をはじめ多くの人からリスペクトされているのか、その理由がよく分かったような気がしました。それは、監督自身が何よりもまず相手をリスペクト(尊重)し、それが相手に伝わるからなのだと感じました。

誰しもが、時として周囲との信頼関係について思い悩んだ経験があるのではないかと思いますが、信頼されるためには、まず森保監督のように相手を尊重することから始めることが大切であることをあらためて認識しました。私自身、まずは相対する人を大切にすることから始めてみたいと思います。

(「NHKアカデミア」によると、本講座は4月5日と12日にEテレで放送予定とのことです。)

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第1,144話 口癖は直した方がよいのか

2022年11月30日 | コミュニケーション

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「ご提案をするかたちで」、「個人情報に則ったかたちで」、「エリアマーケティングというかたちで」

これは、先日ある企業の営業担当者のプレゼンテーションの際に聞いた言葉です。同じ会社から2名が出席し説明をしたのですが、どちらの人も「・・・・かたちで」という言葉を次々と連発したため、私は途中からこの言葉が気になってしまい、肝心の話の内容があまり耳に入ってこなくなってしまったのです。

この「・・・かたち」は口癖の一つだと思いますが、口癖には様々なバリエーションがあります。一般的に多いのは、話の冒頭に「えー」、「あのー」などの音を入れてしまうものですが、いずれであっても、使用頻度が多くなると耳障りに感じてしまう人が多いのではないでしょうか。

口癖が全くない人もいますが、では口癖がある人はどうしてそれを発してしまうのでしょうか?私のこれまでの経験から考えてみると、口癖を連発してしまう人も飲み会の席など比較的リラックスしているような場面では、口癖を発することは少ないように感じています。

そう考えると、やはり緊張感が原因の一つなのかもしれません。確かに、プレゼンテーションやスピーチなど、大勢の人を前にした際に、口癖を連発してしまう人が多いように思いますので、緊張感は大いに影響がありそうです。

ちなみに、私自身は聞き手の人数に関係なく、頭の中で整理できていないことを説明するときに「あの」と発してしまうことがあることを自覚しています。

では、これらの口癖をなくしたいと考えている人はどうすれば良いのでしょうか?

それには、まず自身の声を録音し、どのくらいの頻度で口癖を発しているのかをきちんと自覚することから始めてみることがお勧めです。弊社が行ったプレゼンテーション研修の中で実際に録音をしたことがありますが、自分がこれほど口癖を連発しているのかと驚く人が何人もいるなど、本人が自覚するにはとても有効な方法です。

次にすることは、プレゼンテーションの準備をしっかりと整えることです。緊張を強いられる場面で口癖が出てきてしまう人が多いのですから、逆に言えばそうならないようにあらかじめ丁寧に準備をしておくことには大きな効果があります。あわせて話す際に句読点で間を入れる、一語一語ゆっくり話すことを意識するのも有効です。

また、冒頭の例のように同じ部署で仕事をしていると、いつの間にか口癖が伝染しまうということもあるようです。そういうときには、思い切って部署全体の課題事項として改善に取り組む事項に位置付けるというのも一つの手かもしれません。

もちろん、「口癖は問題ない、愛嬌だ、話す中身が大事だから直す必要はない」という考え方もありますので、絶対に直さなければならないとまでは言えないとは思いますが、あまりに連発されると気になる人も多いと思います。

口癖があるのか、ないのかを含めて、まずは定期的に自身の話し方を振り返ることから始めてみることが良さそうです。自戒の念をこめて。

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第1,141話 面接か!集団討議か!

2022年11月09日 | コミュニケーション

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「採用時に最初に面接をしたのは私なんです。コミュニケーションスキルが高いように見えたので採用したのですが、違いました。私に見る目がなかったのか・・・」

これは、先日ある企業で長年採用担当をされている方から聞いた言葉です。その社員は採用時にはとても感じがよく、コミュニケーションもきちんととれる人だと思い採用したそうですが、採用数か月後に行っている面談ではコミュニケーションがうまく取れず、全く話がかみ合わなかったとのことです。

日本経団連が2018年まで毎年実施していた調査に、「経営者が大卒(高卒)新人を採用する際に重要視すること」があるのですが、16年連続して回答のトップになるのがコミュニケーションでした。以前は就職活動中の学生の中にはこの調査を踏まえて、自らのコミュニケーションスキルの高さをアピールする人が相当程度いたということを幾度となく聞いていました。この調査は中止されて久しいのですが、現在もコミュニケーション力をアピールする学生は少なくないようです。

それでは、この応募者のコミュニケーション力について、採用する側はどのように見極めると良いのでしょうか?実際のところ、コミュニケーションスキルの有無を見極めるのは決して簡単なことではありません。それには様々な方法があると考えますが、私のこれまでの経験からは面談のみならず集団討議が有用だと考えています。

集団討議では、基本的には事前準備ができない中、本番では限られた時間で最大限の成果を出すために初対面のメンバー同士が役割を分担して協力し合い、テーマについて結論を出すことになるわけです。そのため様々な制約条件が多い中で相当なプレッシャーになっているはずです。

その中で、どうやってチームとしての結論・成果を出していくのかはなかなか難しい課題です。伝えるべきことは発言し、他者の話もしっかり聞く。自分とは異なる意見の人に対しては、質問したり、状況に応じて共感したり、発言が少ない人には発言を促ししたりすることが必要です。複数の面接官を前に成果を出すわけですから、それは大変なことだと思います。

しかし、私はこのような制約やプレッシャーの中で行う集団討議には、とても意味があると思っています。それは、当日知らされるテーマに対してインターネットで調べることもできず、周りにいるメンバーの属性もほとんどわからない中で議論を行うことになるため、成果を出すためには取り繕ろっていないありのままの自分を出さざるを得ないからです。まさに「その人らしさ」がはっきり出るわけです。

私は、これまでたくさんの集団討議の場に立ち会ってきました。教科書的な対応をする人、指示していないことをやり始める人、板書係に立候補したもののホワイトボードの前で立ち尽くしてしまう人、そして予定外の行動をとり始めた人を前に呆気に取られている人がいたり、感じよくフォローする人もいたりする人もいます。また、流ちょうではあるけれども聞き手には全然伝わらないような話をする人もいれば、逆にしどろもどろで汗をかきながら話している人が説得力をもってその場に影響力を発揮したりする例もあります。

もちろん、集団討議のみで全てを確認できるわけではありませんが、それでも集団討議は人間の本質を確認することができる一つの有効な手段だと私は考えています。今後も採用選考時に集団討議の面接官の機会をいただいた際には、精一杯務めさせていただこうと考えています。

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第1,136話 謝罪は何のためにするのか

2022年10月05日 | コミュニケーション

「到着が遅れましたこと、誠に申し訳ございません」

電車が遅延した際、車掌からのお詫びが放送されることがあります。最近では、複数の電鉄会社の路線が相互乗り入れするようになった結果、便利になった反面で遅延も以前と比べ頻繁に起きるようになってしまっています。そのため、冒頭のお詫びの言葉も日常的に聞いているような印象があります。しかし、遅延の原因が必ずしもその電鉄会社にあるわけではない場合も少なくないことが影響しているのか、お詫びの言葉やトーンはときにマニュアル的であり、あまり申し訳なさそうに聞こえないと感じることもあります。

また、企業が不祥事を起こした際に、報道などで経営陣が一斉に頭を下げている様子を見ることもありますが、謝罪の気持ちがあまり伝わらないことがあるだけでなく、その後も同じような不祥事が繰り返されてしまうこともあります。

このような例を見ると、ややうがった見方かもしれませんが、とりあえず事態を収めるために形式的に謝まっているのではないかと感じることさえあります。

謝罪の言葉は、仕事のみならず私たちが日常生活をしている中で、こちらに非がある場合に相手に申し訳ないという気持ちを伝えるものです。しかし、この申し訳ないという気持ちを伝えても状況が改善されないことがあったりすると、謝罪する意味がないのではないかと感じるようなこともあると思います。

そのようなことを考えていたところ、「折々のことば」(朝日新聞10月3日)で、鷲田清一さんが三木那由他さんの言葉を紹介している記事を見て、謝罪についての整理ができたように感じました。

「謝って解決するのではない。むしろ、謝罪は新しい始まりなのだ。」 三木那由他

「謝罪の言葉を口にすることで事が終わるのでも禊(みそぎ)がすむのでもない。その言葉がどこまで真摯なものかが問題だ。が、それが真摯なものかどうかは誰も確かめようがない。言葉が心を映すものだと考えるかぎりは。謝罪はむしろ、この悔いを前提にふるまうことを個人の指針とするのではなく、それを他者と『約束』することなのだ・・・」

私はこれまで簡単に他者に土下座をしたり、すぐに謝ったりする人を見たことがあります。しかし、その後もその人が同様のことを繰り返すのを見て、その謝罪自体が非常に軽いものと感じ、不信感さえ持ちました。記事を読んで感じたのは、その人の謝罪はまさに他者との約束を見据えたものではなく、一方的であり一時的なものであったのだということです。本当に謝罪しようとするのであれば、未来に向けての約束を守る必要があったということです。

仕事に限らず、私たちが日常生活をしている上では、謝罪したりされたりすることはあり得るわけですが、その気持ちや姿勢をどのように相手に伝えるのか。少なくとも私自身は、将来に向けての約束を相手とする気持ちで謝罪をしたいと改めて考えた次第です。

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第1,128話 自分自身のことを、どれくらいしっかりと理解できているのか

2022年08月10日 | コミュニケーション

「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。

「私は元来、いい加減な性格だから・・・」、「私は神経質だから・・・」など、私たちは自分自身の性格や性質について口にすることがあります。しかし、実際のところ私たちは自分自身のことを、どれくらいしっかりと理解できているのでしょうか?

「易者身の上知らず」という諺があります。他人の身の上について占う易者も、自分の運命を占うことはできない。他人のことについてはあれこれ言えるが、自分のこととなると正しい判断が下せないのが人間の人間たるところという意味です。

以前、「穏やかな性格」であると自称し、他者からもそのように認識されていたと思われていたのに、自身の都合の悪い状況になった途端、一転して怒鳴ったり周囲へ嫌がらせをしたりして、一瞬にして周囲からの信頼を失った人を見たことがあります。その場に居合わせた人は皆、呆気に取られてしまいましたが、窮地に陥ったときにどう対応するのか、そのときにこそ人間の大きさがわかるような気がしました。自分が窮地に陥った場合どうなる(する)のか想像できないという人は意外に多いのではないかと思います。このように考えると、自分自身のことをわかっているつもりであっても案外わかっていない。それが人間というものなのかもしれません。

しかし、私たちが社会生活の中で自分のことを少しでも知ろうと努めたり、他者に理解してもらえるように努めることは、とても大切なことだと思います。それは、私たちは仕事のみならず生活のすべてにおいて、他者とのかかわりの中で生きているからであり、そうすることにより周囲とのコミュニケーションもより一層とりやすくできると考えているからです。

「ジョハリの窓」と呼ばれる心理学モデルがあります。自己分析に使用するものですが、自身が見た自己と、他者から見た自己の情報を分析し4つに区分することで、自己理解を深め対人関係におけるコミュニケーションを改善する際に役に立つモデルです。

その4つとは、 ① 自分も他者も知っている自分(開かれた窓)、② 自分はわかないが、他者は知っている自分(気づかない窓)、③ 自分は知っているが、他者は知らない自分(秘密の窓)、④ 自分も他者も知らない自分(閉ざされた窓)です。

他者とコミュニケーションをよりよくとるためには、①の開かれた窓を大きくすることができればよいわけですが、ではどうすればこの窓を大きくすることができるのでしょうか?

そのためには、②の気づかない窓に基づき、他者から「あなたは、こういう良いところがあるね」や、「このようなところを改善すれば、もっと仕事が進めやすくなるよ」などのフィードバックを得られると、自身の気づきにつなげることができるのではないかと考えます。

しかし、このフィードバックを得るということも、そうそう簡単なことではありません。他者に対しては、だれしもプラスの面は比較的伝えやすいのですが、改善点を伝えるとなると敷居が高いと感じる人が多いのではないでしょうか?

マイナス面も伝え合えることができる関係になるためには、日ごろからの良好なコミュニケーションが必要と、そうなると話が堂々巡りになってしまうようにも思えます。

かように、自分を知り、他者に理解してもらい、コミュニケーションに役立てるということは思うほど簡単にはいかないかもしれません。その第一歩としてあなたから他者に対し、本人が気が付いていないプラスの面を積極的にフィードバックする、そこから始めてみてはいかがでしょうか?

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第1,112話 ペットの存在とリーダーシップ

2022年04月13日 | コミュニケーション

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近年、ペットの存在が様々なプラスの影響を与えていることが認識されてきています。家庭はもちろんのこと、病院や高齢者施設、そして企業等においてもその効果が認識されつつあるようです。たとえば犬を飼っている人は飼ったことがない人に比べ、介護が必要になったり亡くなったりするリスクが半減することや、過去に犬を飼っていた高齢者は一度も飼っていない人に比べ、介護が必要な状態や死亡のリスクが2割ほど低いという調査結果も明らかになっているそうです。(国立環境研究所や東京都健康長寿医療センターの研究チーム)

過去の犬の飼育の有無が、現在の健康状態にまで影響するということに少々驚きをおぼえますが、これらからも犬の存在が人間にいかに大きな影響をもたらしているかがわかります。

さて、企業において「犬の社員」がいることで有名なのが日本オラクルです。1991年にスタートした社員犬で現在は4代目、人間でいうと40代社員とのことです。毎週水曜日の昼に出勤しイベントやセミナーに登場したり、お客様を訪問したりなど、会社の内外で活躍をしているとのことです。同じように、和歌山電鐵貴志川線貴志駅の猫のたま駅長(現在は、にたま)の活躍も広く知られているところです。

話は戻りますが、最近では社員犬のみならずペット同伴で出勤できる会社もあるようで、リードを付けておけばオフィスでも自由に行動することができるなどは、オフィシャルな場でもペットの存在意義が認められている証拠と言えるのではないでしょうか。

では、ペットの存在意義とは具体的にどのようなものなのでしょうか?これには、社員同士のコミュニケーションが活発になったり、社員のやる気が上がったり、企業の知名度が上がったりということが考えられます。その結果として業績の向上も期待できるなど、いろいろなメリットがあるのではないかと思います。

それでは企業は業績向上のためにペットを飼えばいいのかと考えてしまいそうですが、企業でペットを飼うのはそんなに簡単なことではありません。それではどうすればよいのでしょうか?

ここで話は少々飛びますが、実はこれらのペットを飼うメリットはリーダーが取るべき行動(PM理論)の中の「集団維持機能」に該当しているものなのです。集団維持機能とは、組織や職場など集団をまとめるために発揮されるリーダーシップのことで、人間関係を良好にしたりチームワークを維持・強化したりする機能です。具体的にはメンバーに積極的に声をかける、メンバー間に対立が生じたような場合には、その解消に向け積極的に関与したりなどの行動を指します。

よく「あの人がいると、職場の雰囲気がよくなる」というように、口数は決して多くはないのに、その場にいるだけで存在感を発揮している人がいますが、そういう存在であれば、ペットの場合と同様に職場の雰囲気も活性化されるのではないでしょうか。職場でのペットの存在と職場のリーダーシップを同列で取り上げることにびっくりされた方もいらっしゃるとは思いますが、このように考えると意外にも共通点が少なくないのかもしれません。

最後に、リーダーシップというと行動力や統率力など「動」のイメージを持たれる方が多いのではないかと思いますが、人の話を一生懸命に聞いたりするなど「静」のリーダーシップもあります。「動」が苦手だと感じる人は、眠っている猫のイメージように「静」のリーダーシップを発揮してみてはいかがでしょうか?

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第1,111話 役職名で呼ぶのか、呼ばないのか

2022年04月06日 | コミュニケーション

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「あなたが課長や部長になったら、役職名で呼ばれたいと思いますか?それとも名前に「さん」付けで呼ばれたいですか?」

役職者に対する呼び方は役職名にするのか否か。考え方が分かれるところだと思いますが、皆さんの組織ではどのようにされていらっしゃいますか?私自身は、新卒で入社した会社がたまたま「さん」付けで呼ぶことを慣例としている組織だったため、当時50代の部長に対しても抵抗なく、「〇〇さん」と呼んでいたことを覚えています。

役職名で呼ぶのか、それ以外で呼ぶのかについては各々メリットとデメリットがあるようです。たとえば、役職名で呼ばれる場合にはおのずとその役職自体の重みも意識することになり、役職者自身の責任感が強くなるということもあるようで、これは多くの組織にはメリットと言えそうです。一方、デメリットとしては役職名で呼ぶことにより、役職者に対してある種の威厳のようなものを感じてものが言いにくくなり、その結果、組織の風通しが悪くなってしまうということがあるように聞くことがあります。

このように一長一短があるわけですが、この呼称に関しては「ホブランドとワイス」による興味深い実験結果があります。実験では、はじめに学生からある社会問題に関する意見を聴取した後に学生をAとBの2つに分け、その社会問題について書かれた記事を見せたそうです。その際、Aのグループへはその記事が「専門的な雑誌の記事」であると伝え、Bのグループへは「大衆的な記事」であると伝えてから読んでもらったのです。その情報によってAとB各々のグループの人が考えを変えるのかどうかを実験したのですが、AのグループはBグループの4倍もの学生が意見を変えたのだそうです。(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構より)

これは「専門」という呼称が人のとらえ方に影響を与えたことを示しているのですが、同様に「役職」という呼称も人(本人及び周囲)のとらえ方に対して何らかの影響を与えていると考えられるのではないでしょうか。

たとえば役職者自身の側で考えてみると、役職名で呼ばれるか否かで本人の仕事に対するモチベーションに少なからず影響があるケースが少なくないように思われるのです。実際、私の知り合いの会社では、社長になる前には「私が社長になっても、絶対に社長とは呼ばないでほしい。これまで通り名前で呼ばれたい」と言っていた人が、実際に社長になって周囲が〇〇社長と呼ぶようになったら、すぐにそれになじんだとともに、それにともなってモチベーションも上がったのだそうです。

このように、呼び方一つでも権威やモチベーションに少なからず影響を与えるということであり、「たかが呼び方、されど呼び方」なのかもしれません。

そしてこのように考えると、組織においてそれまで役職についていた人が定年で再雇用などのシルバー社員になり、役職名で呼ばれなくなった場合などには、そのモチベーションには思った以上の影響を及ぼしているのではないでしょうか。

今はちょうど年度替わりのタイミングで、役職から外れた人も多いと思います。また、今後組織には60歳以上の再雇用された人がますます増えていくことなると思いますが、呼び方によっては、モチベーションが下がることを防ぐことができるのかもしれません。シルバー社員の呼び方も「さん」でよいのか、一度じっくり考えてみてはいかがでしょうか。

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第1,106話 情報をそのまま鵜呑みにしてしまうのは危険

2022年03月16日 | コミュニケーション

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コミュニケーションの行き違いを避けるための方法の一つに、あいまいな表現を使わずに「数値化する」ことがあります。数値化は仕事の指示をしたり、逆に指示を受けたりする際などには特に大切です。たとえば、上司が部下へ「なるべく早くやってね」と仕事の指示をした場合に、上司は「1時間以内には完成させてほしい」と考えていたのに、一方の部下は「今日中に仕上げればよい」と考えているなど、「なるべく」という言葉からイメージされる状態が双方で異なることはよくあることです。

弊社が研修を担当させていただく際に、「コミュニケーションミスをなくすために、数値にできるものは数値にしましょう」と繰り返しお伝えしているのは、そういった理由からなのです。

このように、数値化にはメリットがあるわけですが、一方で数値化したことによってそこだけが一人歩きしてしまい、本来の意味や主旨とは異なる形で伝わってしまうようなことも起こりえます。

この具体的な例として挙げられるのが、お聞きになった方も多いとは思いますが、「メラビアンの法則」です。メラビアンは、コミュニケーションに影響を与える要素には3点あり、1つ目が表情・視線・態度等、2つ目が声の調子(口調、速さ、大きさ)、3つ目が言葉そのもの・内容とし、調査の結果それぞれがコミュニケーションに与える影響の割合を順に55%、38%、7%としました。

実は、この数値のとおりになるのにはある条件があるのですが、その部分が置いてきぼりになってしまい、結果としての数値だけが強調されて伝わってしまっている例が多いようなのです。

その条件とは、非言語と言語の内容が一致していることであり、それが一致していない場合には非言語の影響のほうがより大きくなるというものです。

たとえば、遅刻を繰り返す部下に対して上司が注意する際に、にこやかな表情や優しい口調で「遅刻はしてはいけないよ」と伝えたりすると、メッセージの中身よりもやさしい表情と口調の方がより強く相手に伝わってしまい、部下の方は注意をされたとは受け取らないということになってしまうケースがあるのです。

このように、コミュニケーションを行う際には言語、聴覚、視覚のそれぞれの情報を一致させた上で相手に伝えなければいけないというのが重要な条件です。しかし、メラビアンの法則のように数値そのもののインパクトが大きいと、その部分だけが独り歩きしてしまい、大事な前提部分が抜けてしまったり、その結果として伝えたかったメッセージが正しく伝わらないということもあるわけです。

仕事の状況を的確に把握するためや、コミュニケーションにおけるミスをなくすために、物事を数値でとらえることは大切なことです。

しかし、同時に数値の背景にあるもの(条件等)をきちんと捉えておかないと、誤った理解をしてしまい、結果として間違った情報が伝わることになってしまいかねません。

私たちは忙しかったりすると、つい情報をそのまま鵜呑みにしがちですが、状況に応じてその出所や根拠をあらためて確認したり、別の観点から検証してみたりすることが重要だということなのです。

情報が簡単に入手できてしまう現代だからこそ、情報のソースや前提などをしっかり確認することの大切さ、重要性を改めて感じています。

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