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「おじいさん、大丈夫ですか?」
先日(2025年1月18日)の日本経済新聞夕刊に、落語家の林家正蔵さんが百貨店のエレベーターにはさまれて転んだ際に、若い店員からかけられたという言葉が紹介されていました。
この記事を読んで、私は同年代である林家正蔵さんが「おじいさん」と声をかけられたことに対して少しショックでしたし、さらに百貨店の店員が顧客に対して「おじいさん」と声をかけたことにも正直驚きを感じました。
私がこのことに少々過敏ぎみに反応したのには実は理由があるのですが、それは私自身がこの1週間の間に2度、面識のない人から「お母さん」と呼ばれたからなのです。
以前からテレビなどでレポーターが面識のない人に対して「お父さん」「お母さん」と呼んでいる場面を見聞きするたびに、私は違和感がありました。しかし、これまで私自身が見ず知らずの人から「お母さん」と呼ばれた経験がなかったせいか、今回の経験はある意味で新鮮であり、同時に面識のない人への呼び方は難しいと改めて感じたのです。
もちろん、「お母さん」というような呼び方にさほど違和感を持たない人もいるでしょうし、違和感なく受け入れられる場面もあると思います。たとえば、子ども連れの家族が来店した際に、スタッフが「お父さん、お母さん、こちらへどうぞ」と呼んだり、子どもの学校の先生や友人などが、親を「〇〇ちゃんのお母さん」などと呼んだりするような場面です。これらは、関係性が分かっている中で親しみを込めた表現として使われていますので、言われた方も違和感なく受け入れられるのではないかと考えます。
では反対に、どういう場面で「お父さん、お母さん」が使われると、違和感を持つ人が多いのでしょうか。もちろん、これは人によって様々だとは思いますが、たとえば全く面識がない初対面の人こうから言われると、馴れ馴れしく感じられて受け入れにくいと思う人が多いのではないでしょうか。
そもそも、なぜこうした場面でも「お父さん、お母さん」が使われるのかと考えると、相手の名前がわからない場合(名前がわかるなら名前で呼べばいいわけですから)に、他にうまい呼び方がなかなか見当たらないということがあるように思います。
では、面識のない人から「お父さん」「お母さん」の代わりにどのような呼び方をされると、受け入れられやすいのでしょうか。私自身いろいろ考えてみましたが、すべての場面でぴったりあてはまるような呼び方を見つけるのはやはり難しいように思います。したがって、場面に応じて呼び方を変えること、たとえば顧客に対しては「お客様」、そうでない場合には「こちらの方」や「そちらのお連れ様」など、状況に応じた柔軟な表現が必要ではないかと考えます。
「お父さん」「お母さん」という呼称は、親しみやすさを込めた表現として使われることもありますが、それは必ずしも相手にとって適切なものとは限りません。初対面の相手に対しては、敬意を込めつつ節度を持った呼び方が良いのではないでしょうか。
呼び方は面識の有無に関わらず、職場や仕事をしていく上で、さらには新しく人間関係を形づくっていく上でも、とても大切なものです。「たかが呼び方、されど呼び方」です。相手の立場や背景に配慮し、状況に応じた呼び方を心がけることが重要だと、私自身の経験を通して考えた出来事でした。