「社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
「24時間働けますか」
いわゆるバブルの頃、こうしたCMがあったことを覚えている人も多いと思います。
毎年12月に日本生産性本部から労働生産性の国際比較が公表されています。先日、最新版のデータが発表されましたが、日本の一人当たりの労働生産性は1970年以降で最も低く、OECD加盟38カ国中32位です。この水準は東欧諸国と同等レベルであり、主要先進7カ国で最も低い値となっています。
日本で働き方改革が叫ばれるようになり、労働環境の質の向上と生産性の向上を目指すようになって久しいです。しかし、前述のように諸外国と比べて長年、日本の一人当たりの労働生産性が低いのはなぜなのでしょうか。実際、私が日々担当させていただいているタイムマネジメント研修等においても、仕事が予定通りに進まない(その結果、生産性が低くなっている)ことを問題としている受講者は圧倒的に多いと感じています。
日本の労働生産性が低い原因には様々なものがあるのだと思いますが、これに関して私が最近関心を持っているのは、筑波大学の柳沢正史教授の研究です。ご存知の方も多いと思いますが、柳沢教授は睡眠や覚醒のメカニズムを研究されているのですが、その中で各国の睡眠時間と生産性の相関についても調べています。
これに関して、先週1月22日(水)にNHK Eテレで放送されていたNHKアカデミア選に柳沢教授が出演されていました。その中で日本は諸外国と比べて睡眠時間が最も短く、6時間10分であり1時間近く少ないこと、一人当たりの労働生産性と睡眠時間には因果関係があるとの最近の研究結果が出てきていること、日本の労働生産性が低い理由には睡眠時間が短いことが大きく関係しているのではないかとのことでした。
柳沢教授によると、社員がよく眠っている会社の方が利益率が高いとのことで、「24時間働けますか」のように寝る間も惜しんで働くようなことは、世界的にはナンセンスとされているのだそうです。また、私たちの周りでも昼間に眠気をおぼえるという人は少なくないと思います。昼間に眠気があるのは本来異常なことであり、日本人は眠くなるのは仕方がないと思っているが、世界標準ではそれはおかしいということを認識することが大切だとのことです。
また、睡眠と記憶には密接な関係があり、エピソード記憶(文字にできる記憶)だけでなく、洞察力(経験したことから、こういうことだったんだと得られる力)も睡眠中に獲得できるとのことです。そのようなことからも睡眠は「量」が大切で、一晩で何時間眠るかが大事とのことでした。以前は睡眠の「質」について言われることが多かったように覚えていますが、最新の研究では違った結果になっているということなのです。
さらには、睡眠不足はメンタルヘルスやメタボなどについてもリスクを上げる要因になるほか、認知症やがんのリスクまで高めてしまうのだそうです。
正直なところ、睡眠がこれほどいろいろなことに大きく関わっているということに私自身とてもびっくりしました。同時に、私たちは自分の健康の維持とともに仕事の生産性を高めるためにも、睡眠時間を積極的に確保すべきであるということです。かつてのような寝る間を削ってでも働くことを求めるような風潮や、時間が余ったから睡眠をとるというような発想からは抜け出さないといけないのだと強く考えています。
仕事の生産性を上げるための重要なカギの一つには睡眠があるように思えます。私たちは十分な睡眠時間をとることを真剣に考える必要があるのではないでしょうか。