「笑いの絶えない職場にしたい。いつも社員が笑顔でいられるような・・・」
これは、以前コンサルティングの相談にみえた、ある社長の言葉です。
この社長に限らず、今後の会社や職場の「ありたい」イメージをお聞きすると、「笑い」や「笑顔」という言葉を使って表現される方がいらっしゃいます。
続けてもう少し詳しく話をお聞きすると、「コミュニケーションが活発で、皆が仲がよい会社にしたい」ということです。
もちろん、社員が明るい表情で生き生きと働ける会社にすることは素晴らしいことですが、それはあくまでも結果であって笑顔でいること自体は目的ではないはずです。しかし、時々その辺りの事柄が一緒くたになってしまっている方がいます。
会社は営利企業である限り、経営理念のもとに社員が目的に向けてコミュニケーションをとってチームワークを発揮し、売り上げを上げて利益を出すことが一義的な目的のはずです。そして、それが社員にも還元されれば、結果として社員が笑顔になるのでしょう。
しかし、そういうことを抜きにして、いきなり「笑いが絶えない職場」を目標にしてしまうというのは、いささか乱暴な話だと感じます。当たり前のことではありますが、会社はサークルや趣味の集まりではないので、「笑い」を目的にしてしまうのは「ない」ということです。
「笑い」と言えば、今秋始まったNHKの朝の連続ドラマのタイトルは「わろんてんか」です。この「わろてんか」とは「笑ってください」という意味だそうです。ドラマは吉本興業の創業者で女性興行師の吉本せいさんがモデルになっています。吉本さんは大阪を笑いの都にしたいとの夢を持って、笑いをビジネスに成長させた人です。
番組開始後の1か月半の平均の視聴率は20%を切ることもあるようで、今のところはあまり好調とは言えないようです。実際に私も放送開始からしばらくは毎朝見てみました。しかし、「笑いは人を救う力がある」とか「一生笑わせることを約束した」といった会話が多く、「笑い」をテーマにしているわりには、さほど面白くないなと感じました。
そもそも「笑い」が起きるのは、自分の想定とは異なった発言や行動をされたときに、そのギャップを面白く感じるからです。意表を突かれて思わずクスッと笑みがこぼれてしまったり、爆笑してしまったりするということは、ままあります。
しかし、「わろてんか」のように最初から「笑い、笑い」となってしまうと、何となくしらけた気分になってしまうのも事実です。
これは結局のところ、「笑わせる」こと自体が目的になってしまっていて、ギャップを感じさせることがないからなのでしょう。もっと意表を突いた展開があれば良いのにというのが、正直な感想です。
同様に、会社も職場も笑顔や笑いをその目的にするのではなく、結果として笑いが起きるような良い雰囲気の職場環境を作っていくことが大切です。
以前、テレビの番組で笑いが絶えない職場の雰囲気づくりに努めた結果、人間関係が良くなり、さらには職場における仕事の能率も良くなったという事例が紹介されていました。
経営者としては、本来の目的をきちんとふまえつつ「笑いの絶えない職場」を作っていくことに力を入れていくことが大切ではないでしょうか。