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人事部の仕事は「労働生産性」を高めること

2019年03月10日 | コンサルティング

日本の 1 人当たり労働生産性はOECD 加盟 36 カ国中 21 位です。「日本の生産性は低いってことでしょ?そんなことわかっているよ!」・・・もう耳にタコかもしれませんね。今回は労働生産性についてじっくり考えてみます。

はじめに、人事部門にお勤めの方はもちろん、労務や人材育成に関わっているすべての方々への質問です。

「生産性」を定義する式を書いて説明してください。完璧でなくても構いません。

・・・おそらく、できなかった方が多いと思います。では、順を追ってご説明します。ただし、あくまでもざっくりとした(間違っているとまでは言えないが、ちょっと不正確な部分がある)説明になります。納得できない方は教科書(マンキュー「入門マクロ経済学」など)を読んでください。さて・・・

(1)OECD36 カ国中 21 位の「労働生産性」

労働生産性=GDP÷就業者数 (または就業者数×労働時間)

まずGDPがわからない時点でアウトです。GDP(Gross Domestic Production)は国内総生産です。国内総生産とは「一定期間に国内で生産された財貨・サービスの付加価値額の合計」ですが、わかりやすく言えば「日本中の企業が1年間に生み出した付加価値を合計した(全部足した)金額」です。

(2)付加価値

1企業の付加価値は、売上高-外部購入費です。販売会社なら、100万円で仕入れた商品を150万円で売れば付加価値は150-100=50万円です。ほぼ粗利(あらり)だと思ってください。メーカーなら50万円分の材料費を購入してきて100万円の製品を作れば、100-50=50万円が付加価値です。

仮に、日本国内にこの販売会社とこのメーカーしかなかったら、GDP=50+50=100万円となります※。

(3)労働生産性

そして、もし日本の人口が5人ならば、労働生産性=100÷5=20万円となります。

この労働生産を高めるには、分子の付加価値を高めるか分母の労働者の人数を減らすか、という手段が考えられます。

付加価値を高めるには、高い値段でも売れる魅力ある商品を提供することです。仕入れ値や購入材料を値切ることも有効です。

ただし、分母の5人を単純に4人でに減らしても、生産性が上がるとは限りません。たとえば、5人が毎日限界まで働いているときに1人減った場合を考えてください。

ここからが本題です。人事、労務、人材育成に関わっていらっしゃる方に理解していただきたいのは、こうした生産性の定義には「時間の要素」が入っていないという点です。

このメーカーの5人の労働者がトレーニングを受けて作業スキルが上がり、150万円の製品を作って売ることができれば、生産性は150÷5=30万円と、50%もアップします。

問題は、トレーニングの効果が現れるのに時間がかかることです。トレーニングを受けた1人1人の能力がアップするのに1年以上かかるとすれば、翌年の生産性は上がりません。むしろ試行錯誤によって低下することもあり得ます。

また、新人を1人雇って6人になれば、その新人が1人前になるまで明らかに生産性は低下します。

いずれにしても短期的には生産性は下がってしまうので、目先の利益を上げたい経営者にとってはあまり好ましいことではありません。

そんな近視眼的な経営者でも、人手不足の折から、新人を雇うことについてはNoとは言いにくいのです。それに「売上が伸びないのは、あのときに社長が人を採用しなかったからだ」と後々言われたくもないでしょう。

一方、トレーニング(社員教育)については、成果が測定しにくいということから「経費削減」の対象となりやすいのです。しかし、社員教育への出費は会計的には「費用」ですが、将来の労働生産性の向上に寄与する「投資」です。

人事部門の方々にお願いしたいのは、将来の生産性を高めるための教育投資を計画し、実行することです。

その第一歩として、貴社の経営者の方々に生産性とは何かを正しくレクチャーしてあげてください。

ここまでお読みいただいたので、もちろんできますよね?

 お問い合わせ【株式会社人材育成社】

人材育成のホームページ

※日本にはたくさんの企業がありますから、2018年の日本のGDPは約543兆円にもなります(1$=110円)。アメリカ、中国続き第3位です。