「すべての社員がイキイキ働くようになる」仕組みと研修を提供する人材育成社です。
コンコルドという超音速旅客機をご存じの方も多いと思います。イギリスとフランスが巨額の投資と長い時間を費やして完成したコンコルドは、1976年に就航し、マッハ2超というジェット戦闘機の最大速度並みの速さでロンドン・ニューヨーク間を3.5時間で飛行していました。しかし、コンコルドは2003年に営業飛行を終了し、今は飛んでいません。
そんな素晴らしい飛行機なのになぜなくなってしまったのでしょう。
飛行場に非常に長い滑走路が必要
超音速飛行時に発生する大音響
機体価格、維持費用が非常に高額
さらに、2000年に起きた墜落事故の影響も大きかったようです。墜落事故の原因は、コンコルドの前に離陸した旅客機が落とした部品をコンコルドの前輪が跳ね上げ、翼の燃料タンクに穴を開けたことでした。ツイてないとしか言いようがありません。
現在、コンコルドは「ありがたくない」言葉の代名詞として使われています。「コンコルド効果」というその言葉の意味は「すでに投資してしまったお金や労力、時間が無駄になるのが惜しいという理由で、この先損失が増えることが分かっているのに止められない」状態を指します。
経理やファイナンスの世界ではおなじみの埋没費用(サンクコスト:sunk costs)と同じ意味です。埋没費用とはすでにかかってしまった費用のうち、回収できないもののことです。
ひとつ例を挙げてみましょう。X社に、ある新製品の開発プロジェクトがあったとします。研究開発に5億円、量産試作プラントに5億円、計10億円がすでにかかっているとします。
いよいよ量産に入ろうとした矢先、ライバルのY社が同等以上の性能を持つ新製品を、X社の販売予定価格よりも安い値段で発売してしまいました。このままではX社の新製品はY社よりも安い値段を付けざるを得ず、どう考えても売れば売るほど赤字がかさむことがはっきりしています。
もし、あなたがX社の社長ならどうしますか?
お分かりかと思いますが、新製品の発売を中止し10億円は損切りをするのが正解です。
このまま発売すれば10億円にさらに赤字が積み重なっていきます。つまり、開発や試作に費やした10億円は回収することができない、沈んでしまった(sunk)コスト、埋没費用です。
コンコルドも250機売れれば採算が取れる目論見でしたが、どう考えても無理なことがわかっていました。それでもプロジェクトは止められず実際に就航したのでした。作られたのはわずか16機でした。
現在のように、社会も経済も先が見えない時期こそ会社の中のプロジェクトを見直し、もしも「コンコルド的なもの」があれば思い切って埋没費用としてしまうことをお勧めします。そして騒動が去ったときに備えて、今のうちにすべての仕事を見直し人材を育てておきましょう。
さて、コンコルド効果を生んでしまったのはイギリスとフランスの「国家の威信」でした。
私の個人的な感想になりますが、2020年の東京オリンピックはすでにコンコルドです。残念ながら。