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「久しぶり!」

 友人の母親の葬儀に参列した。84歳の高齢ながら、前日まで元気だった人が布団の中で冷たくなっていたそうだ。
 お通夜は金曜夜の7時からだったが、私は塾があり出向くことができなかったので、妻が代わりに行ってくれた。香典も供物も受け取らないということで、「手ぶらで参列するのは少々気が引けた」と妻は言っていたが、それがその家の流儀なら従うしかない。徐々にそういう葬儀も増えてきたので、次第に慣れていくのだろうが、今しばらくは多少の違和感を持つことだろう。
 葬儀は土曜の1時からだったので、私が参列できた。12時まで授業を行い、生徒を送って行った後、慌てて家を出たら、何とか始まりの時間に間にあった。受付をしていた人たちが、皆友人だったので記名した後、受付の席に並んだ。
 しかし、この友人たちに会うのは実に久しぶりだった。同じ市内に住んでいながら、ここ数年は顔を会わせる機会がなく、最初の挨拶も「久しぶり」ばかり。皆それぞれが家庭を持ち、日々の暮らしに追われていると、葬式などという改まった席くらいしか、集まることできなくなった。個々には付き合いがあるようだが、私のように夜間に仕事をしているような者では、なかなか時間を合わせることが難しい。どうしたって皆から疎遠になってしまうが、それでもやっぱり一言ことばを交わせばすぐに昔に戻れるのだから、幼いころからの友人は有難いものだ。
 だが、やはり私たちも年相応に老けてしまった。話題はどうしても子供のことや老親のことになる。母親を亡くした友人は5年ほど前に父親を亡くしているから、これで親はいなくなってしまった。私も母親がいないし、両親とも健在な者の方が少なくなってしまった。まあ、50過ぎのおっさんたちだから、それも当たり前のことだろうが・・。
  葬儀が終わって出棺までの短い間に、友人の一人と話した。
 「お父さんは元気?」
 「いや、去年の暮れに死にかけた」
 「どうして?」
 「酒の飲み過ぎで血を吐いて、3か月入院してた」
 「本当か、知らんかった」
 「まあ、今は退院してボチボチやってるけどね」
 「調子はいいの?」
 「週に2回デイサービスに行ってる」
 「送り迎えしてもらって?」
 「そう。年寄りの男やもめはそういう所に行かなきゃ話相手がいないからね」
 「そうか・・」
彼の父親も私の父と同じく大工だった人だが、81歳で今も元気だそうだ。私の父の方が3歳も若いが、やはり不摂生をすれば体が弱るのも早いのだろう、今見れば私の父の方がずっとヨボヨボに見えるだろう・・。

 まだまだ話は尽きそうにもなかったが、2時から授業がある私ではゆっくりしていることもできなかった。出棺まで見送った後、「じゃあ、また」と挨拶もそこそこに車に飛び乗った。
 折角の機会だからもうちょっと話したかったが、生徒を待たしておくわけにもいかない。またの機会に・・。

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