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ことばおじさん

 NHKラジオで午後放送されている「つながるラジオ」、塾の生徒を迎えに行くときに時々聞いているが、その中の『ことばおじさんの気になることば』コーナーが特に好きだ。このコーナーは、ことばおじさんこと、梅津正樹アナウンサーが「気になることば」について深く調べ上げたものを解説するという内容だが、運転中にもかかわらず、思わずメモをとりたくなってしまうような情報が満載で、思わず唸ってしまうことも度々だ。
 昨日は「卜(うら)」という漢字についてだったが、通り一遍の漢字の成り立ちの説明に終わらず、その字に関連した様々なことばを理路整然と説明する手際のよさに感動して、「ああ、聞いてよかった」と思った。その説明をしっかり覚えておこうと努力してみたが、記憶力の減退が甚だしい私であるから、今思い出そうとしても甚だあやふやになってしまっていたので、NHKのHPを調べたところ、見事なまでに要点が纏めてある記述を見つけた。

 『「卜部」と書いて「うらべ」と読む名字があります。この『卜』は「うら・ボク」と読む漢字で、【事物にあらわれる現象や兆候によって神意を問い、吉凶などを予想したりする】意味。つまり【うらない】のことですね。古くは鹿の骨や亀の腹甲を焼いて、その時にできる裂け模様で物事を占う方法があり、その裂け模様から「卜」の漢字が生まれました。ぽくっと急に割れることから「ボク」の音読みがあります。亀の甲を使う占いは「亀卜(かめのうら・きぼく)」といい飛鳥時代の律令制では「卜部」という亀卜を担当する官職がありました。今「卜部」という名字があるのはこの名残なのです。長崎県対馬市の雷神社(いかづちじんじゃ)では、現在でも旧暦1月3日に『亀卜の神事』が行われていて、県の無形民俗文化財(国選択)にも指定されているとのことです。ところで、なぜ現象や兆候から神意を問い、吉凶などを予想することを「うら」といったのでしょうか。「うら」は本来【人の目にふれない部分】をいうことばです。例えば表裏の『裏』。人の目に見える部分を「表」といい、目に見えない部分を『裏』と呼びました。うらないも、現象や兆候から目に見えないものを探り予想することから、『卜(うら)』と呼んだのですね。また、『心』も人の内側にあり、目に見えないものなので、「うら」と呼びました。「うら悲しい」「うら寂しい」ということばは、「心悲しい」「心寂しい」からきています。「羨む」ということばも、本来は「心病む」だったのです。『卜』も『裏』も『心』もことばの起源は同じなのですね

 下線を点けた部分が特に驚きだった。「うら悲しい」の「うら」が「心」を表しているなどとは、ついぞ思ったことがなかった。恥ずかしい話だが、私の日本語の知識などこれほど底が浅い・・。
 でも、ヴェルレーヌの詩を、
「秋の日のヴィオロンの ためいきの身にしめて ひたぶるにうら悲し」
と訳した上田敏はさすがに知っていただろうなあ・・。
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