生きて死ぬ私 (ちくま文庫)茂木 健一郎筑摩書房このアイテムの詳細を見る |
★ おもちゃ箱をひっくり返したような本だった。多くの問題が投げかけられ、そのひとつひとつにそれぞれの宇宙が感じられた。これから、このひとつひとつの宇宙の法則を解明し、相互の関連づけることは大変だぞと思った。
★ 著者の茂木健一郎氏は「クオリア」という概念で。脳と心の関係を解明しようとする脳科学者である。NHKの「仕事の流儀」の司会では独特の雰囲気を醸し出している。
★ 本書は著者が33歳の作だが、随所にダイヤモンドの原石が散りばめられている。最先端の知的空間を旅する人の脳内を見るようだった。難解で、時としてついていけなくて息切れしそうになるけれど、刺激的な本である。読者は自らの到達点に応じて読むことが必要だろう。
★ 私が好きなテーマは「母と仏壇」「ウサギ」である。
★ 「母と仏壇」は著者の私的エピソードで、とても人間味のある話だった。「ウサギ」は、いつまでも心に残るエピソードだった。
★ 後半で「神の沈黙」が話題になっていたが、ウサギにもし神がいるなら、その神も沈黙を保ったことになる。深いテーマだと思う。
★ 「あとがき」で著者は本書の誕生記を披露しているが、意に反した内容の原稿を受け取り、「五木寛之なら・・・」と言ったときの編集者の困惑が目に浮かぶようで面白くもあり、気の毒でもあった。