じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

筒井康隆「走る男」

2021-07-24 11:28:49 | Weblog
★ オリンピックの開幕だ。無観客の開会式。出演者やボランティアの方々の奮闘には頭が下がるが、やはり盛り上がらない。世間では、バッハ会長の長演説や天皇の開会宣言時の菅総理、小池都知事の「不敬」が話題になっている。

★ ドタバタのオリンピック。バッハ会長の迷調子に睡魔が襲ってきたのか。完璧な段取りをしているはずが、総理大臣、都知事の慌てふためいた起立が全世界に配信されてしまった。

★ オリンピックがなぜこの時期(酷暑の夏)なのか、開会式がなぜこの時間帯なのかを考えれば、オリンピックをめぐる利権を垣間見ることができる。

★ 甲子園(高校野球)の開会式のようにシンプルなもので良かったのに。いつの時期からかすっかりショータイムになってしまった。

★ さて、近未来廃れたオリンピックを予言したかのような筒井康隆さんの「走る男」(「佇む人」角川文庫所収)を読んだ。

★ もはや人が体をあまり動かさなくなった時代。オリンピックの価値は薄れ、人々の関心もなくなっていた。形だけ残った長距離走で、組織委員会にスカウトされた男が走る。

★ 男はトップを走っている。とはいえ、参加者はわずかに3人。それでも男は走る。走りながら考える。「どうして人は、走るのだろうか」と(まるで「走れメロス」のようだ)。そんなこんなで物語は進み、数十年が過ぎ去った。男は気持ちを切り替え、ゴールを目指す。まだオリンピック組織委員会は細々と残っていた。老人が事務を執っていた。彼の帰りを待っていたという。

★ 「より速く、より高く、より強く」、その価値が薄れた近未来のオリンピックが描かれていた。
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