昨日、志位和夫日本共産党委員長は、衆院予算委員会で、日本学術会議の推薦候補委員6人が菅義偉首相に任命を拒否された問題を約1時間の質問時間をすべて活用して、菅首相の違法、違憲な暴挙を戦前の歴史的な事実、戦後の日本学術会議の歴史の経過、改革の努力など具体的な事実をもとに徹底的に明らかにしました。そして、この暴挙を撤回せず強行するならば、「強権をもって異論を排斥する政治に未来はない」と厳しく批判しました。
「毎日」紙5日付に、渡辺美代子日本学術会議元副会長が登場し、「発言」しています。この間、「元会長」のみなさんの「発言」がメディアでも紹介されてきました。元副会長の方の発言を初めて知ることができました。
以下、紹介させていただきます。
「日本学術会議の会員候補が任命されなかったことが、大きな社会問題になっている。政府が任命しない理由として掲げた『総合的、俯瞰的な活動を確保する観点から判断した』の『総合的、俯瞰的』とはいったい何なのか、という疑問が世の中に広がっているが、実は学術会議はこの『総合的、俯瞰的活動を確保する』ことを重視してきた」
「一部の分野や偏った人たちの活動にならないよう、優れた業績を持つさまざまな立場と専門分野の科学者を選考、会員全体のバランスをよくすることに力を注いできた。会員が入れ替わるたびに多様な会員構成となるよう変えてきた結果、2000年に1%だった女性会員比率が10年に21%、今年は10月1日に始まった第25期には37%までになった」
「各地方の会員も大切にし、これまでなかなか増えなかった東京圏以外の会員を10年の41%から第25期では 54%に増やした。さらに、この10月からは、スポーツや芸術など新しい専門分野の会員を加え複数の専門分野を持つ科学者を41%に増やした。会員任期は6年に限られているため、会員として最も活躍できるタイミングも考慮して選考した」
「第25期の会員6人が欠員となることは、学術会議が重視した多様性のバランスを崩すことになってしまう。なぜこのように多様な会員を増やしてきたのか、それは科学者の世界も社会一般と同様、多様な人々の参加が求められ、異なる意見の衝突こそが必要だからである。その結果、今の体制が始まった第20期(05~08年)には39件だった提言は今年9月までの第24期(17~20年)には85件となり、省庁からの審議依頼に対して3件の回答を提出、幹事会声明はこれまでで最も多い5件を公表した」
「18年9月には医学部医学系入学試験と教員における公正性の確保を求めた。同年12月には、『ゲノム編集による』の誕生について生命倫理のみならず研究倫理にも反する極めて重大な行為であることを宣言した。今年3月6日には国民に対して新型コロナウイルス感染症対策に関する政府と自治体への協力をお願いした」
「このように、多くの専門家による科学者の総意として、時には政府に批判を、時には政府への協力を国民にお願いするなど、科学的観点から審議した結果を社会に公表してきた。日本学術会議は、あくまでも政府に対して政策の選択肢を提供するものであり、その決定は政府にゆだねられている。多くの選択肢から国民にとって最も良い決定をしていただくことを願ってのことである」
「学術会議の年間予算10億円の大半はその運営のために使われ、実際に会員が会議参加の際に受け取る手当は年間平均20万円程度であり、手当を辞退している会員も多い。限られた予算のため、会議参加の交通費がでないことも多々ある。いったいどんな科学者が、権威や収入を目的とし日本学術会議の会員を引き受けるだろうか。会員の目的は、あくまでも学術の進歩に寄与し、未来の社会に貢献することである」
【渡辺美代子(わたなべみよこ)さん】「科学技術振興機構理事。東芝出身。専門は総合工学・半導体物理」