英語と書評 de 海馬之玄関

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気楽に英語 de パラグラフ(05): 高校中退者の素顔が見えてきた in USA

2006年03月05日 09時48分00秒 | 英字新聞と英語の雑誌から(~2010年)

●New take on America’s dropout problem

They number in the millions - 3.5 million in the most recent year for which estimates are available. They are America’s high-school dropouts. Of every three young men and women entering high school, only two will emerge with diploma. For minority students, the odds are worse. And the losers pay a price their whole life.

They are the subject of a study called “The Silent Epidemic,” which will be released on March 2,・・・And these people offered solid reasons to believe this is a solvable problem.

For one thing, they recognize that they made a mistake in quitting school. Eight out of 10 said they now know that having a diploma is important to success in life. And national data back them up. Dropouts earn an average $9,200 a year less than high-school graduates, and have far greater likelihood of winding up on welfare, in prison or on drugs.・・・

The big news out of the study - a surprise to many, I expect - is that most of these dropouts are not “hopeless losers.” One-third of the 467 surveyed said they were failing in school. But more than six out of 10 were maintaining average of C or better when they quit. As many complained that classes were not challenging or interesting as found the academic requirements daunting. ・・・
(By David Broder:Washington Post, The Japan Times, Mar. 2, 2006:217 words)



■Vocabulary&Idiom
take on 様相を呈する/性質などを帯びる, dropout 中退者/落伍者
estimate 推計・見積もり,  emerge 抜け出す
diploma 卒業証書(cf. 成績証明書:transcript)
odds 見込み/掛け率(cf. oddは「奇妙な」や数学の「奇数の」の意味)
epidemic (病気や社会的病理の)流行・伝染
quit (会社や学校を)辞める 原形・過去・過去分詞ともquitで同形
wind up on ~する破目に陥る,  welfare [米語-略式]生活保護
maintain 維持する, daunting仕事・タスクなどが気力を萎えさせる


■Comment
本文冒頭の They number in the millions. のnumberは「総計で(数字や量が)~に達する」という動詞です。逆に、タイトルのtake onは通常は「様相を呈する」という意味の動詞句ですが、ここでは形容詞のnewに先導されて「新しく立ち現れてきた様相」という名詞句になっています。

「全体の中のどれくらい」という表現、つまり、「クラスの何%がインフルエンザに罹った」とか「524打数157安打で惜しくも三割を逃した」とかの表現が本文テクストに幾つかでていますね。これらはビジネスでもよく使うものです。

Eight out of 10 said ・・・ 10人の内の8人が言っている
One-third of the 467 surveyed 調査対象467人の三分の1
more than six out of 10 6割以上


尚、第1パラグラフのOf every three young men and women entering high school, only two will emergeは、Only two of every three young men and women entering high school will emergeと「only two」が後ろに来ているものです。本来そうある語順に手を入れていますよ、という標識がもとの文のentering high schoolの後ろのカンマなのです。

テクスト最終センテンスのAs many complained that classes were not challenging or interesting as found the academic requirements daunting.は、感覚的に、あるいは、フィーリングで「授業が骨のあるものでなく、また、興味を引かないという不満を持てば持つほど卒業資格を得るための学業は気力を萎えさせるものと思えた」と訳しては駄目ですよ。

もちろん、このテクスト全体の中ではそう理解しても大体の意味は通るのですが、どこまで行ってもmanyには「(可算名詞が)多くある」という形容詞か「多くの人々/多くの事物」という名詞しかありません。特に、TOEICやTOEFLで出題される行儀の良い英文ではそうです。つまり、このセンテンスでmanyはあくまでも動詞complainedとfoundの主語なのです。




■試訳
●アメリカの宿痾・高校中退率問題に新様相

彼等の総数は数百万台、つまり、推計可能な最も新しい年度では350万である。彼等とは誰あろうアメリカの高校中退者のこと。高校に入学した男女の内、三人に二人しか卒業証書を手にできないことになる。マイノリティーの生徒達については、この比率は一段と悪い。そして、敗者達は全生涯にわたってその敗北のつけを払うことになる。

彼等高校中退者を対象としたある研究が行われている。「静かなる伝染病理」と呼ばれるこの研究の結果はこの3月2日に発表されることになっている。・・・そして、彼等高校中退者(の研究)は、この社会問題は解決可能であるということを我々に確信させるに十分な確固とした根拠を示してくれた。

第一に、彼等高校中退者は、彼等が高校を中退したことは間違いだったという認識を持っていることだ。10人の内8人が、高校の卒業証書が持つ人生における重要性を今は知っていると回答している。そして、全国調査の結果も彼等のこの認識を支持する。すなわち、高校中退者の年収は高校卒業業者に比べて平均で9,200ドルも少ないのだから、また、中退者は卒業者に比べて生活保護をもらう境遇に陥る蓋然性、刑務所にぶち込まれる蓋然性や薬物に手を出す蓋然性が一層高いのだから。・・・

私は多くの方にとってもそれは驚くべき情報だと思うのだけれども、この研究がもたらしてくれた中で取り分け重要な情報は、それは高校中退者が「望みのない敗者」ではないということである。調査に協力してくれた467人の内、その三分の1は学業についていけていなかったと回答したが、一方で、彼等の10人に6人が彼等が中退した時でも平均スコアでCレヴェルかそれ以上をキープしていたと回答したのだから。要は、授業が骨のあるものでなく、また、興味を引かないという不満を持った生徒達にとって卒業資格を得るための学業は気力を萎えさせるものに思えたということである。・・・



■感想&感慨
高校中退者問題。日本では高校中退者は1995年度で98,179人。全国の中退率は2002年で約2.6%です。アメリカの15-18歳人口は日本の約3.5倍;そして、アメリカも日本もほぼ高校進学率は96%前後ですから、本文テクストの情報、”They number in the millions - 3.5 million in the most recent year for which estimates are available.”を日本に当てはめれば”They number just in one million.”になるはずです。

また、テクストによれば” Of every three young men and women entering high school, only two will emerge with diploma.”;つまり中退率は33.3%。

1,000,000÷98,179≒10.19
33.3÷2.6≒12.8


つまり、アメリカの高校中退問題は日本より10倍~12倍凄い? ならば、この問題がアメリカ社会で関心を集めるのも無理はないですよね。ただし、日本と違い、アメリカでは何歳になっても敗者復活をしようという者にはチャンスを与えられる;もちろん、そんな綺麗事ばかりではないですが、「アメリカは何歳になっても敗者復活をしようという者にはチャンスを与える社会」であるべきだという価値観が行き渡った社会であることは確かです。日本とはそこが少し違うように私は感じています。



高校中退者の増加だけではなく、あるいはそれとも関連して、日本ではニート(NEET:Not in Employment, Education or Training)が問題だと騒がれています。

厚生労働省の『平成16年版労働経済の分析』によれば、就労対象人口の15-34歳の男女のうち2003年で52万人がニートだそうです。また、昨年2005年5月に内閣府が発表した『若年無業者に関する調査(中間報告)』では、「就職を希望しながらも職探しはしていない「非求職型」が43万人」「就職希望すら表明していない「非希望型」無業者も42万人」「非求職型と非希望型をあわせた85万人」がニートだそうです。

85万人か、少なく見ても52万人か・・・。

でもね、いくら2005年から我が国が<人口減少社会>に移行したと言っても、総務省『人口統計』を見るまでもなく15-34歳の日本人の人口って少なく見積もっても1,500万人はいる。つまり、厚生労働省というか内閣府というか、日本のニート問題の火付け役(?)東京大学の玄田有史さんの「ニート」の定義:15-34歳の非求職型と非希望型の非就労&非就学者から見ても、「ニート比率」は3.5%~5.7%なんですよね。これが多いか少ないかは別にして、逆に言えば、この社会は15-34歳人口の3.5%~5.7%をブラブラさせる余力のある社会ということでしょうか? 

「ニート」という言葉は、英国の労働政策論議の中で使われ始めた言葉だそうですが、英国では「ニート」は10代後半の若者の問題に限定して使用されています。それに対して、日本では15-34歳と非常に「ニート年齢」の幅が広い。

日本では、ニートの上限がなぜ34歳なのかは玄田理論によれば「34歳までである理由は、就職して、年金受給資格を得られる25年分の保険料払い込みが開始出来る、最後の年齢である為」だそうです。もちろん、どんな定義を使おうがその定義が明確であれば何の問題もないのですが、ただ、英国や米国の「ニート問題」と日本で言われる「ニート問題」が全く別物ということは言えると思います。尚、ニートとニート問題については、その異常な取り上げられ方に警鐘を鳴らす、東京大学の本田由紀さんのBLOGを訪問されることをお勧めします。








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