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●Senate Approves Renewal of Antiterrorism Bill
The Senate voted overwhelmingly today to extend the Patriot Act, clearing the way for the House to follow suit and send the anti-terrorism bill to President Bush before it expires on March 10.
The 89-to-10 vote was somewhat anticlimactic, since senators who back the bill had defeated a series of parliamentary delaying moves on Wednesday, but it was still good news for President Bush, who regards the measure as the legislative keystone of his anti-terrorism policies.・・・
But reaction to today's vote signaled that the Patriot Act will continue to be debated in the United States long after Congress has approved it. The senators opposing the bill, all Democrats except for the independent James Jeffords of Vermont, argued that the civil rights protections written into the measure were too modest.・・・
(By DAVID STOUT:New York Times, Mar. 2, 2006:129 words)
■Vocabulary&Idiom
Senate 上院, approve 賛成する/承認する
antiterrorism bill 反テロ(行為)法案
overwhelmingly 圧倒的に, the Patriot Act 愛国者法
the House (=the House of Representatives)下院
expire (法や権利、クレジットカードの効力が)切れる
anticlimactic 拍子抜けの/竜頭蛇尾的な
parliamentary delaying moves 議会審議を遅延させる動議
regard ~と看做す, measure 法案
legislative立法上の/立法府の, congress 議会
civil rights 公民権/政治に参加する権利
modest 控えめな
■Comment
このエントリー記事の表題ではSenateを「元老院」と訳しましたが、the Senateはラテン語のsenatus;ローマ帝国の「元老院」から英語に入った言葉です。では「元老」という言葉は、江戸幕府の大老井伊直弼の「大老」とか「老中」や「若年寄」からの類推でthe Senateの訳語に採用されたのか? 多分違うと思います。「元老」は儒教経典の一つ『詩経』に「年功を積んだ功臣」や「名望の高い見識ある人物」という意味で出てきますから。おそらく、幕末や明治にしっかりした教育を受けられた漢学の素養のある先人がこの訳語を定められたのだと思います。
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アメリカの議会関連の記事を読む際の必須単語を確認しておきましょう。
・上院:Senate(他国の上院はupper house)
・下院:the House of Representatives(他国の下院はlower house)
・上下両院を合わせた議会:Congress
・上院議員:senator
・下院議員:representative
・上下両院の議員:congressman, congressperson
congressmanには「下院議員」という意味もあります。
・民主党/党員:Democrat Party, Democrat
・共和党/党員:Republican Party=GOP(Grand Old Party),
Republican
・(成立前の)法案:bill, measure
・(成立した)法律:act, law
本文テクストの” Antiterrorism Bill”や” the Patriot Act”にはちゃんと、法案成立の前後でbillとactの使い分けがされています。 尚、日本の衆議院はupper houseでしょうか、それともlower houseでしょうか? ご存じない方は辞書を引いてみてください♪
■試訳
●上院、反テロ法延長を承認
上院は、本日、愛国者法の延長を圧倒的多数で可決した。これにより、上院に続いて、下院が同法案の延長を承認しこの反テロ法の効力が消滅する3月10日までに同法をブッシュ大統領のもとに届ける(=同法が成立する)道筋がつけられた。
89対10(という大差)はいささか拍子抜けでさえあった。というのも、上院の法案支持派は水曜日に一連の審議遅延動議を打ち負かした(=一連の審議遅延動議を打ち切って勝負に出た)のだから。しかし、いずれにせよこの事態の展開はブッシュ大統領にとっては喜ばしいニュースに違いない。なぜなら、ブッシュ大統領は、こと立法の領域に関してはこの法案を対テロ政策における要の石と位置づけてきたのだから。・・・
しかし、今日の投票結果に対する反応は、愛国者法が議会で成立した後も長らく同法が国民的議論の対象になることを示唆するものとなった。同法案に反対票を投じた上院議員はバーモント州選出の無所属議員ジェームズ・ジェフォーズ氏を除いてすべて民主党所属議員ではあるけれど、彼等法案反対派は、同法案に盛り込まれた公民権の保障は極めて限定的なものであると論じたのだから。・・・
■感想&感慨
アメリカの上院(the Senate)は各州から2名選出の総計100名のSenatorで構成されています。各州から選出される議員数が人口比が考慮されて定まる下院(the House)と比べると、ですから、上院での投票結果は「アメリカの世論を正確には反映していない」と言える。それは間違いありません。しかし、それにしても本文テクストの89-10の差は大きいですよね。日本の安全保障にも、そして、日本人ビジネスマンや日本からの留学生の米国での活動にも影響するだろうこの法案が、上院とはいえどうしてこんな大差で可決されたのでしょうか。
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実際、2005年末現在の上下両院(Congress)の(共和党:民主党:無所属:欠員)の議席配分は、上院(55:44:1:0)、下院(231:202:1:1)ですから、日本の国会での議員の投票行動から見れば(重要法案に党議拘束がかかるのが当然という感覚から言えば)、89人の「元老」が愛国者法案を承認したのは不思議に思えてきます。
アメリカの議会政治が実は、①RepublicanとDemocratの政党の違いだけではなく、②南部と北部のイデオロギーの対立、③比較的経済好調の沿岸諸州(カリフォルニア・テキサス・ニューヨーク等々)とその他大部分の内陸の諸州の間での利害とイデオロギーの対立という少なくとも3個の軸を中心に、それこそ目も眩まんばかりの多様なエスニシティ(ethnicity)が自己主張する場であることは言うまでもないでしょう。
人口に膾炙していますように、アメリカ社会は人種の坩堝(melting pot)ではなくサラダボール(salad bowl)であって、人種・宗教を含む多様なエスニシティーが融合せず(∴not melting pot but salad bowl)、しかし、共存している社会なのでしょうから。では、なおさら何で「89-10」なのか?
日本のマスメディアのつとに報ずる所によれば、日本なんかより数十倍権利意識の強いアメリカで、政治に参加する自由やプライバシーが適正とは必ずしも言えないかもしれない手続きで制限される重要法案が、なぜ「89-10」で承認されたのでしょうか?
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簡単だと思います。彼等アメリカ人は権利意識に敏感であるからこそ、また、合衆国を信頼しているからこそ「その大切な大切な大切な、愛するアメリカ社会をテロリストの攻撃から断固として護らなければならない」と考えているのでしょうし、彼等は人権や平和ということを日本の空想的平和主義者や妄想的な人権論者のように観念的には捉えていないからではないか、と。私はそう思っています(この点に関しては下記拙稿を併せてご一読いただければ嬉しいです)。
・「念じれば平和」の妄想が都立高校の卒業式で君が代反対のビラを配らしめる?
・妄想平和主義の基底☆戦争は人為か自然か?
逆に言えば、New York Times やWashington Post等々の東部のリベラルなインテリさん達が発信する情報はアメリカの世論とは無関係とまでは言わないけれど、あんまり、関係はないということでしょうか。また、イラク戦争反対を訴える市民が数十万人ワシントンに集結したという事実は、2億8千万のアメリカ国民の大方の世論を示唆するものではないということかもしれません。それは、例えば、日本の世論や政治の動向を、赤旗や朝日新聞の記事だけ読んで理解する愚とパラレルではないかと思います。
第二次世界大戦が終了してからのこの60年間;世界に現存する193ヶ国(国連加盟191ヶ国+台湾+バチカン)の中でこの60年間に戦争を行っていない国は8ヶ国+バチカンにすぎません(アイスランド・ブータン・デンマーク・フィンランド・日本・ノルウェー・スウェーデン・スイス;これら8ヶ国の人口は全世界の人口64億1560万人(2005年1月現在の国連推計)の2.5%、1億6千万人にすぎないのです)。
このことを鑑みれば少なくとも、2006年の現在において戦争は常に起こりうる。まして、アメリカを狙うテロの脅威は<9・11>を想起するまでもなくリアルなものだ。このような前提でアメリカ国民の安全と安心を確保する施策をとるべきと90%近い上院議員が考えたことはむしろ当然のことなのかもしれません。正に、上院(Senate)は『詩経』に言う意味での「元老院」だったということでしょうか。
◆追記◆
3月9日、下院も通過した同法案(Bill)はホワイトハウスに送られ、同日、大統領が署名したことで法律(Act)として成立発効しました。
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