英語と書評 de 海馬之玄関

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文明の遭遇の上に立つ浦和レッズのAFCLチャンピオン獲得

2007年11月20日 19時09分29秒 | 英字新聞と英語の雑誌から(~2010年)

あの歓喜からもう1週間近くがすぎましたが、このニュースを取り上げたいと思います。Jリーグの浦和レッズが「クラブチームアジアNo.1」になった話題。特に、浦和レッズは1999年のJ2降格も体験してのこの度のAFCLチャンピオン獲得ですから、浦和サポーターには喜び一入のことだったと思います。「思えば遠くへ来たもんだ」、と。流石に、全体としてはサッカー不毛の地アメリカのメディアにはあまり取り上げられなかったようですが、欧州やアジアのプレスではかなり手厚く報じられたニュース。

出典は、これまたAP等の「国際ニュース配信機関」ではなく純日本のメディア、The Japan Timesの "Urawa triumphs in Champions League," Nov. 15, 2007(浦和、チャンピオンズリーグで優勝)です。尚、以下のテクストは Japan Timesの著作権を考慮して全テクストの約四分の三の紹介にとどめました。

本文テクストにも出てくる「皇帝」(Keiser)Beckenbauer 主将が西ドイツを率いて優勝した1974年のワールドカップ。そこいら辺りからサッカーに熱中し始めた私のような世代にとって、「ドイツ」はサッカー文明の総本山ともいうべき存在です。それは、1993年のJリーグ発足から2002年の日韓ワールドカップにかけてサッカー文明に染まったKABUよりも one generation くらい下の世代にとって、「ブラジル」や「イタリア」(あるいは、元々、サッカーの母国はイングランドなのですからそれが「正しい」と言えばそうなのですが、Beckham様に惹かれてか)「イングランド」がサッカーの総本山と感じられるのとあるいは同じかもしれません。だからこそ、代々、基本的にドイツ出身者やその薫陶を受けた監督を擁してきた浦和レッズは、地元の川崎フロンターレ、郷里のアビスパ福岡、サガン鳥栖と並んで私の贔屓チーム。

もっとも、南米出身選手が大挙して欧州各地のリーグに参加するようになったこと、各国の個人技のレヴェルが向上したこと(といっても、ブラジルと日本とではまだまだ「手先の器用さにおける人間と猿に近い差」があると思いますが・・・)、戦術が洗練され、かつ、チーム毎の戦術選択と採用の判断基準が合理化され透明化したことによってでしょうか、2006年のドイツ大会ではサッカーの諸文明間の違いはそう目立たなくなってきたようにも思います。そして、逆に、戦術と技術の差が希薄になった分、各国チームの文化の違いがより一層目立つようになったとも言える。それは、ピッチ上の瞬間瞬間の行動選択だけでなくチーム編成やチームメンバー間の人間関係に至るまで言えるのではないか。

「文明の伝播」と「文化の独自性の顕在化」。ならば、浦和レッズAFCLチャンピオン獲得は浦和だけの栄誉では必ずしもないかもしれない。それは、日本サッカーのレヴェルが確実に上がったことの証左でしょうし、弱小名古屋グランパスを支えたリネガーや、グランパスを一時期強豪にしたピクシー、ジュビロ磐田にプロ根性を再度叩き込んだ闘将ドゥンガ等々の優れた外国人選手や監督の貢献が日本サッカーに少しずつ浸透したことの証左でもあると思います。これこそ、文明の伝播とともに、外国人選手・監督と日本の選手・監督・フロント・サポーター間の異文化交流の(時には火花を散らした)せめぎ合いの結果なのではないか。話が飛躍するようですが、明治時代の「お雇い外国人」と明治の日本人との交流もそのようなものだったのでしょうか。これ興味深いテーマですよね。

機会があれば、この「サッカーの比較文明論」に関する欧州の論考などこのブログでも紹介したいと思います。しかし、そんな小難しい理屈はどうでもよくて、ワールドカップで百花繚乱、咲き誇った名選手の勇姿に思いを馳せたいという向きには次のサイトが便利です。私もいつも参考にしています。

・World Cup's World
 http://members.jcom.home.ne.jp/wcup/





<テクスト>
Urawa Reds coach Holger Osieck said his players had little time to savor last night's AFC Champions League victory over Sepahan as the Saitama giants look to wrap up their second successive J. League title on Sunday. The Reds became the first Japanese team to win the revamped ACL title after goals from Yuichiro Nagai and Yuki Abe gave them a 2-0 victory over Iran's Sepahan in the second leg of the final on Wednesday evening in front of nearly 60,000 fans at Saitama Stadium.

"There is not a lot of time to celebrate," German coach Osieck told reporters. Our schedule is very tight, our next game is on Sunday and teams want to give you a tough time if you are a winning team. "But today is a day to celebrate. It is something special, something special for Japan. Tomorrow we will focus on Sunday's game."

Urawa plays Shimizu S-Pulse at Saitama Stadium at the weekend, with Osieck's men five points ahead in the league with three games left to go. Victory against S-Pulse will be enough to give Urawa the league title if second-placed Gamba Osaka and third-placed Kashima Antlers fail to win their games.

The newly crowned Asian champions were rewarded with a winner's check for $500,000 after their 3-1 aggregate victory, but more important to them is a place in December's Club World Cup and a potential match against UEFA Champions League winner AC Milan.

"The Club World Cup is a great opportunity for us," said Osieck. "If we play in the semifinal against Milan it will be a highlight in the Reds' history."

Osieck, assistant coach to Franz Beckenbauer when Germany won the 1990 World Cup, took over from Guido Buchwald as Urawa coach before the start of this season after his compatriot and fellow World Cup winner led the Reds to the J. League and Emperor's Cup double.

Urawa president Mitsunori Fujiguchi had made winning the ACL title the priority at the beginning of the season and Osieck, who had a stint as club coach in the '90s, delivered at the first time of asking. "Fujiguchi-san was a very happy man. Sometimes in life, dreams come true," said Osieck.




<語彙>
triumph:勝利する, coach:(サッカーの)監督, savor:味合う/満喫する, AFC(Asian Football Confederation):アジアサッカー連盟, the Saitama giants:「浦和レッズ」の呼称, wrap up:~を仕上げにかかる, the second successive J. League title:Jリーグの2連覇目となる優勝, revamp:改修する/装いを新たにする, leg:一区切り/1試合(AFCLの決勝はホーム・アンド・アウェイ方式で敵地とホームで1試合ずつ行われる。その第1試合が the first leg of the final, 第2試合がthe second leg of the final), celebrate:祝う, focus on:~に集中する,

reward:報いる/報酬を支払う, winner's check:優勝賞金(cf. a winner's check for $500,000の for はTOEICでも頻出です。「50万ドルの賞金」という場合、「賞金=50万ドル」と等価を表す前置詞は for を使います。ex. We sold our car for $1,000.「車を1,000ドルで売った」), aggregate:合算で/総計で, place:地位/権利, Club World Cup:クラブワールドカップ(世界5大陸のクラブチームの覇者が世界一を決める試合。旧「トヨタカップ(1980年ー2004年)」がto be revamped された後身の大会。http://info.pia.co.jp/et/fcwc/ ) , potential:可能性がある/潜在的な, UEFA(Union of European Football Associations. 欧州サッカー連盟), AC Milan:ACミラン(サッカーの世界では泣く子も黙るイタリアの強豪チーム。トヨタカップでも優勝3回を誇る),

opportunity:機会/チャンス, Franz Beckenbauer:フランツ・ベッケンバウアー(ドイツの選手/監督, 現役時代は「皇帝」の異名を取った名選手。浦和レッズ旗揚げ時のテクニカルアドバイザー), take over~ from・・・:・・・から~を引き継ぐ, compatriot:同国人/同胞(cf. patriot「愛国者」と同じ語源のpatriot に 、「共に」を意味するcomは付加された単語), (the)Emperor's Cup double:天皇杯2連覇,

president:社長, the priority:優先順位が上なこと/より重要なこと, at the beginning of ~:~の最初の段階で(cf. 簡単なポイントですが、この「at」はTOEICの穴埋めにも出題されたことがあります。この機会に覚えましょう), a stint as ~:~としての仕事, deliver:期待に応える成果を出す/うまくやりとげる


<和訳>
浦和レッズのホルガー・オジェック監督は、彼のチームの選手達には昨夜のAFCチャンピンズリーグ優勝、つまり、対セパハン戦の勝利を味合う時間がほとんどないこと、なぜなら、レッズはJリーグタイトルのニ連覇の最中なのだからと語ってくれた。水曜日夕方、埼玉スタジアムに詰めかけた60,000人近くのファンの前で行われたチャンピオンズリーグ決勝第2戦、永井雄一郎と阿部勇樹があげた2ゴールによりレッズはイランのセパハンに2-0で勝利し、その結果、レッズは制度が見直されて以降のAFCチャンピンズリーグを征した最初の日本チームとなった。

「お祝いしている時間はあまりないのだが」と記者会見でドイツ人のホルガー・オジェック監督は述べた。われわれのチームのスケジュールは極めてタイトなものであり、次のゲームは日曜日に組まれている。しかし、われわれレッズが勝ち続けるチームであるためには、それこそとてもタフな一時期を選手には我慢してもらうしかないだろう。「しかし、今日はお祝いすべき一日だ。今日は特別な日、日本にとって特別な日だよ。明日からは日曜日のゲームに向けて集中することにしよう」とオジェック監督は記者団に語ってくれた。

週末、浦和は清水エスパルスと埼玉スタジアムで試合をすることになっており、オジェック率いるレッズの戦士達は3試合を残している現時点で勝ち点5の差でリーグ戦の首位にある。もし、二位のガンバ大阪と三位の鹿島アントラースがともに破れることになれば、対エスパルス戦の勝利でリーグ優勝が決まることになる。

(第1試合と第2試合の通算得点)3-1で勝利した、このアジアの新王者には50万ドルの優勝賞金が与えられたのだけれど、彼等にとってより重要なことは12月に行われるクラブワールドカップの出場権であり、そこでレッズが勝ち上がれば実現するUEFAチャンピオンのACミランとの一戦である。

「われわれにとってクラブワールドカップはとてつもないチャンス。もし、準決勝でミランと戦うことになるようなら、それはレッズの歴史の金字塔になりますよ」とオジェックはその胸の内を語ってくれた。

オジェック監督は、1990年にフランツ・ベッケンバウアー監督率いるドイツがワールドカップを征したときの助監督であるが、オジェック監督の同胞にして共にワールドカップを制覇した僚友のギド・ブッフバルト氏がレッズをJリーグ優勝と天皇杯の連覇に導いた後を受けて、今シーズンの開幕前にそのブッフバルト氏から浦和の監督を引き継いだ。

浦和社長の藤口光紀氏は今シーズンの開幕時にACLのタイトルを獲得することを重視する旨明言していたけれど、90年代にも浦和レッズの監督をしていた経験のあるオジェック監督は、社長からの要求に初回で見事に応えたわけである。

「藤口さんは大変幸福でラッキーな方ですよ。人生では時には、夢が実現することもあるということですかね」、これが(ACLで優勝することという藤口社長の要求に見事に応えた)オジェック監督の言葉である。





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