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日本の調査捕鯨を取り上げた海外報道の紹介です。出典は、Timeの"Why Japan's Whale Hunt Continues," Nov. 20, 2007(日本はなぜ捕鯨を継続するのか)です。紹介は全体の約三分の2にとどめました。
畢竟、「鯨は絶滅の危機にある」「鯨は海洋の生態系の頂点にあり、乱獲に結びつく商業捕鯨の再開は海洋の全生態系に予測不可能な甚大な影響を与える」「海洋の生態系の頂点にある鯨肉には高濃度の汚染物質が蓄積されており、食糧にするには危険が大きすぎる」等々の理由を挙げて反対する論者の議論は、結局、日本などの捕鯨国の主張とは異なり大人が真面目に相手にするような科学的根拠を欠いた「捕鯨反対のためにする捕鯨反対論」にすぎません。結局、国際捕鯨委員会(IWC:International Whaling Commission)などにおいて反捕鯨国は「鯨を食糧資源」と認識すること自体に反対しているとしか思えない。
日本の沿岸に漂着して死んだ鯨の肉を食することが行政指導により禁止されている現状を見るにつけ(死んだ鯨を食することと鯨の絶滅や海洋の生態系の変容とは「風が吹けば桶屋が儲かる」事態よりも遥かに因果関係は希薄でしょうから)、そのような日本の軟弱な行政指導に反映されている、彼等、カルト的捕鯨反対派の議論を「鯨を食糧資源と看做すことに反対する主張」と捉えることが満更荒唐無稽ではないとすれば、それは自分の文化に内在する価値観や美意識(=食文化などは価値観と美意識の最たるものでしょう)を絶対視して他者に押しつけようとする<ヨーロッパ中心主義>(Eurocentrism)以外の何ものでもないと思います。
よく、毛皮を採るための動物の「虐待→」に反対するEurocentrismに骨がらみになった女性運動家が、全裸で毛皮反対のパフォーマンスを見聞きしますが、彼女達が「毛皮を着用しないよう世間に呼びかけ」るべくその美しい裸体(beautiful body)を世間にさらすのは(もちろん、刑法174条や軽犯罪法1条20号に違反しない限り)彼女達の自由でしょう。けれども、その行為が他者の毛皮を羽織る行為を否定するものであるのならば、それは凄まじい傲岸(beautiful arrogancy)と言われるべきではないでしょうか。而して、捕鯨反対論者の行いは、正に、自己のEurocentrismから他国の文化を否定する醜悪な傲岸(ugly arrogancy)に他ならないのです。
このTimeの記事の中では、調査捕鯨を継続する日本の真の狙いを、最早、その消費が微々たるものになってきた鯨肉の確保ではなく、消費量も厖大なマグロ等の他の海洋資源を手にする権利を確保するためのマヌーバー(maneuver)であると断定されていますが、正直、それが事実であったとしても何も問題はない。日本の調査捕鯨の継続がmaneuverであることと、日本がその食文化の中に鯨を組込んできた伝統と歴史を持っていること、よって、その食文化を守りたいと考えることは相補的でありこそすれなんら矛盾しないからです。蓋し、食糧安保のためにも文化防衛のためにも、日本人は「日本人が何を食卓に乗せるか」を外国、ならびに、グリンピースやシーシェパードのようなカルト的なテロリスト集団に指図されている現状を速やかに打破すべきなのだと思います。
土台、条約上、持続可能な鯨資源の有効利用を目的に発足した国際捕鯨委員会(IWC)が、ヨーロッパ中心主義的な価値観から科学的根拠もなく捕鯨に反対する場に堕してしまっていること自体、条約にも違反しており、かつ、国際法一般とも相容れるものではない。事実、このTimeの記事を見ても捕鯨反対の理由はIWCの禁止以外何も提出されていない。而して、IWCの禁止は「鯨資源の利用が持続可能」であることが判明するまで商業捕鯨を禁止したものにすぎず、元来、鯨の再生産能力に配慮して捕獲数量を限定して行なわれている日本の「調査捕鯨」をIWCの禁止を根拠に批判することなど筋違いも甚だしいことなのです。
畢竟、捕鯨国は商業捕鯨再開に向けた新たな国際委員会(New International Whaling Commission)を早急に立ち上げつつ、それと並行して、既存の国際捕鯨委員会(IWC)においては「挙証責任の転換」によって商業捕鯨再開が孕む問題を科学的に指摘する責任は反捕鯨国側に速やかに返すべきでしょう。
蓋し、日本が捕鯨を継続しなければならないのは、鯨が鯨だけの問題ではなく、捕鯨が日本の文化伝統の保持と国家主権の確保、および、食糧安保の最前線であるからです。而して、非科学的な、根拠などとは到底言えない床屋談義レヴェルの論拠しか提示できず、かつ、確立した国際法の慣習を踏みにじって毫も恥じることのない反捕鯨国に妥協するような政府は国民も国家も守護するものとは呼べない。私はそう考えます。
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<テクスト>
It's a ritual that boils the blood of whale-watchers everywhere. On Nov. 18, a fleet of four Japanese vessels left Shimonoseki harbor in Western Japan to begin its five-month whale hunt in the Antarctic Ocean. This time, however, the whalers are planning what's expected to be its largest hunt in decades; along with about 850 minke and 50 finback whales, the fleet says it plans to harpoon as many as 50 humpback whales for the first time since hunting the endangered species was banned in 1963.
The escalation of the hunt, and the inclusion of humpbacks, has drawn condemnation from leading anti-whaling countries, including Australia, New Zealand, Britain and the U.S. ・・・ With an upcoming general election, the issue has become heavily politicized in Australia; the opposition Labor party's campaign platform includes a proposal to mobilize military aircraft to monitor Japanese whaling fleets.
But Japan has said it needs to recommence hunting one of conservationists' most beloved species to further marine research. "Whales are just as important, and no more special, than any other fish," says Japan Fisheries Agency spokesperson Hideki Moronuki, maintaining Japan's long-held position that marine mammals should get no special treatment for being warm-blooded. Japan maintains that with a population of around 40,000 growing at 15% a year, the formerly endangered humpback has recovered to a sustainable level for lethal research. Anti-whalers, on the other hand, simply see this as raw defiance. "They're just doing this to show us that they can," says Paul Watson, founder of the anti-whaling Sea Shepherd Conservation Society.
Under a loophole in the 1986 International Whaling Commission (IWC) ban against commercial whaling, Japan has continued to kill hundreds of whales every year for scientific research. Once a whale is killed, scientists collect data from the animal's remains on its age, birthing rate and diet; the meat is then packaged and sold. Japan maintains that the research is essential for managing the whale population. "Minke or humpback, we see whales as a marine resource," says Moronuki. Still, most observers have long been skeptical of any benefits from the project. ・・・
Tensions have been heating up in recent hunts. In February, a member of Japan's whaling fleet was killed in a ship fire following a series of confrontations with vessels from Sea Shepherd. Both Greenpeace and Sea Shepherd say that they are prepared to "chase, block, and harass" any attempts by the whaling fleet to harpoon humpbacks.
Japan has cited its long history as a whaling nation and its historic reliance on whale meat for protein as reasons why it should be continued to allow to hunt despite the IWC ban. But Japanese consumption has become so negligible that local governments are encouraging schools to incorporate whale in their lunch programs, while thousands of tons of whale meat remain stockpiled in freezers.
The bigger issue, observers say, is whaling's impact on far more popular forms of seafood. Japan, which consumes half of the world's tuna catch, recently admitted to exceeding its quota for southern bluefin tuna set under an agreement with Australia and New Zealand, as overfishing threatens to decimate the animal's population. Plunging global fish stocks, along with a growing taste for sushi in China and the West, make Japan very uneasy about its future access to fresh seafood. So holding a firm line on the sustainable harvesting of whales, the argument goes, can help stave off a larger fight over more important fishing rights down the road. Says Moronuki: "Our whaling culture is near extinction because of the moratorium on commercial whaling. We need to make sure this doesn't happen to other marine resources."
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<和訳>
それは鯨観察を楽しむ人々をいたるところで激怒させる恒例の儀式である。11月18日、4隻からなる日本の船団が西日本の下関港から南氷洋での5ヵ月に及ぶ捕鯨に従事するため出航した。しかし、今回、その捕鯨船団は彼等としてもここ数十年で最大規模になると予想される捕鯨を計画している。すなわち、850頭のミンククジラと50頭のナガスクジラに加えて50頭のザトウクジラを銛でしとめると捕鯨船団は宣言しているからだ。ザトウクジラの捕鯨はこの絶滅が危惧されている品種の捕鯨が1963年に禁止されて以来始めてのことになる。
捕鯨数量の拡大とザトウクジラが捕鯨の対象になったことにより、オーストラリア・ニュージーランド、英国・アメリカを含む主要な反捕鯨国では激しい非難が巻き起こっている。(中略)来るべき総選挙では、日本の捕鯨を巡る問題はオーストラリアでは極めて政治的な色彩を帯びてきている。すなわち、野党・労働党の選挙公約には、軍の航空機を使って日本の捕鯨船団を監視する計画が盛り込まれているのだから。
しかし、日本は、更なる海洋調査のためには、環境保護主義者が最も愛するこの鯨種の捕鯨再開が必要とする。日本の水産庁のスポークスマン、諸貫秀樹氏によれば「鯨はその重要さにおいて他の魚と比べて特に特別な存在ではない」。その血が暖かいからといって海洋哺乳類を特別扱いするべきではないという、日本の年来の主張を踏まえながら諸貫氏はそう述べた。公式には絶滅危惧種とされているザトウクジラの個体数は40000頭前後もあり、しかも、年15%もその数は増加している。よって、致死性の調査を行なったとしても持続可能な個体数の水準にまでザトウクジラは回復してきていると日本は主張している。これに対して、捕鯨反対論者は、この日本の主張を露骨な挑戦と受け止めている。「日本は、われわれ捕鯨反対派に対して、彼等がザトウクジラの捕鯨をすることが可能であることを見せつけるためだけにその捕鯨をやろうとしている」。そう、反捕鯨団体【を自称するカルト集団にしてテロリスト集団である】シーシェパード保護協会の創立者ポール・ ワトソン氏は語っている。
1986年の国際捕鯨委員会(IWC)の商業捕鯨禁止の抜け穴に基づき、日本は科学的調査の名目で毎年何百頭もの鯨を捕鯨し続けている。【「loophole」(=「抜け穴」)などの表現は正確ではない。IWCは持続可能な捕鯨を行なうための国際的なルール作りを行なう機関であり、「捕鯨」を禁止するための機関ではないのだから。正当な協定に従い日本が「調査捕鯨」を行なうことは誰からも「抜け穴」などという、あたかもそれが「ずるい行ない」であるかのような表現で呼ばれる筋合は断じてないのだ。而して、調査捕鯨の結果、食糧資源としての鯨の捕鯨が持続可能であることがわかれば、「調査」の取れた「捕鯨」に日本は即刻邁進するのみなのだ】鯨は捕殺されると、科学者達はその遺体から年齢・出生率・常用食糧のデータを収集し、その後、その肉はパックされ販売される。日本はその調査は鯨の個体数を管理するために必要不可欠であると主張する。「ミンククジラにせよザトウクジラにせよ、われわれは鯨を海洋資源と位置づけている」と諸貫氏は述べているのだ。他方、日本の主張にもかかわらず、その調査捕鯨プロジェクトにはなんらの利点もないという懐疑的な見方が大部分の識者の立場である。(中略)
ここ数年の捕鯨を巡って緊張はますます高まってきた。2月には、日本の捕鯨船の乗組員の一人が船上火災のために亡くなっているが、その船上火災は【反捕鯨団体を自称するカルト集団にしてテロリスト集団である】シーシェパードが送り出した船舶との係争に引き続いて生じたのである。シーシェパードもグリンピースも、ザトウクジラを銛でしとめようとする捕鯨船団のすべての試みを「追跡、妨害、攻撃」する準備と覚悟はできていると発表しているのだ。
日本は、捕鯨国としての長い歴史と蛋白源を鯨肉に頼ってきた歴史的経緯を、国際捕鯨委員会の禁止にもかかわらず日本が捕鯨の許可を継続されてしかるべきことの理由としてきた。しかし、日本における【鯨肉の】消費は無視できるほどの水準にまで下がってきており、よって、地方公共団体の中には給食に鯨を盛り込むよう学校に奨励している所もあるくらいなのだ。他方、数千トンもの鯨肉は冷凍庫の中で保存されたままなのである。
捕鯨を巡る問題を観察してきた識者によれば、より重要な問題は、而して、鯨などより遥かに人気のある海産物に対する捕鯨の影響なのである。日本は、世界のマグロ漁獲高の半分を消費しているのだけれども、その日本は、乱獲の恐れからオーストラリアとニュージーランドとの間で結んだミナミマグロ【インドマグロ】の割当量を超過したことを最近認めた。世界中の漁業資源の逼迫によって、更に、支那や欧米諸国における寿司嗜好の広まりにともない、日本は新鮮な海洋食糧資源に今後もアクセスできるかどうか不安になっている。よって、持続可能な鯨の漁獲に関して堅固な防御線を引くことができれば、【捕鯨を巡る】論議がこれから続こうとも、より重要な漁業権を巡る大掛かりな戦いにおいて日本は惨敗を免れることができる。諸貫氏は「日本の捕鯨文化は商業捕鯨の停止によって消滅の瀬戸際にある。われわれは、このような事態が他の海洋資源について起きることのないようにする必要がある」と述べている。
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◆参照資料
捕鯨を巡る私の基本的な考えについては下記拙稿を、また、捕鯨を巡る世界の動きと捕鯨国日本の主張に関してはその下に掲げたURL記事をご参照ください。
・(拙稿)鯨と日本の再生
・(拙稿)海外報道紹介☆日本の調査捕鯨船隊<南氷洋に向け出航>
・国際捕鯨委員会・2007総会ウォッチ(1)~(9)
・クジラ文化国ニッポン
・Whaling Library
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畢竟、「鯨は絶滅の危機にある」「鯨は海洋の生態系の頂点にあり、乱獲に結びつく商業捕鯨の再開は海洋の全生態系に予測不可能な甚大な影響を与える」「海洋の生態系の頂点にある鯨肉には高濃度の汚染物質が蓄積されており、食糧にするには危険が大きすぎる」等々の理由を挙げて反対する論者の議論は、結局、日本などの捕鯨国の主張とは異なり大人が真面目に相手にするような科学的根拠を欠いた「捕鯨反対のためにする捕鯨反対論」にすぎません。結局、国際捕鯨委員会(IWC:International Whaling Commission)などにおいて反捕鯨国は「鯨を食糧資源」と認識すること自体に反対しているとしか思えない。
日本の沿岸に漂着して死んだ鯨の肉を食することが行政指導により禁止されている現状を見るにつけ(死んだ鯨を食することと鯨の絶滅や海洋の生態系の変容とは「風が吹けば桶屋が儲かる」事態よりも遥かに因果関係は希薄でしょうから)、そのような日本の軟弱な行政指導に反映されている、彼等、カルト的捕鯨反対派の議論を「鯨を食糧資源と看做すことに反対する主張」と捉えることが満更荒唐無稽ではないとすれば、それは自分の文化に内在する価値観や美意識(=食文化などは価値観と美意識の最たるものでしょう)を絶対視して他者に押しつけようとする<ヨーロッパ中心主義>(Eurocentrism)以外の何ものでもないと思います。
よく、毛皮を採るための動物の「虐待→」に反対するEurocentrismに骨がらみになった女性運動家が、全裸で毛皮反対のパフォーマンスを見聞きしますが、彼女達が「毛皮を着用しないよう世間に呼びかけ」るべくその美しい裸体(beautiful body)を世間にさらすのは(もちろん、刑法174条や軽犯罪法1条20号に違反しない限り)彼女達の自由でしょう。けれども、その行為が他者の毛皮を羽織る行為を否定するものであるのならば、それは凄まじい傲岸(beautiful arrogancy)と言われるべきではないでしょうか。而して、捕鯨反対論者の行いは、正に、自己のEurocentrismから他国の文化を否定する醜悪な傲岸(ugly arrogancy)に他ならないのです。
このTimeの記事の中では、調査捕鯨を継続する日本の真の狙いを、最早、その消費が微々たるものになってきた鯨肉の確保ではなく、消費量も厖大なマグロ等の他の海洋資源を手にする権利を確保するためのマヌーバー(maneuver)であると断定されていますが、正直、それが事実であったとしても何も問題はない。日本の調査捕鯨の継続がmaneuverであることと、日本がその食文化の中に鯨を組込んできた伝統と歴史を持っていること、よって、その食文化を守りたいと考えることは相補的でありこそすれなんら矛盾しないからです。蓋し、食糧安保のためにも文化防衛のためにも、日本人は「日本人が何を食卓に乗せるか」を外国、ならびに、グリンピースやシーシェパードのようなカルト的なテロリスト集団に指図されている現状を速やかに打破すべきなのだと思います。
土台、条約上、持続可能な鯨資源の有効利用を目的に発足した国際捕鯨委員会(IWC)が、ヨーロッパ中心主義的な価値観から科学的根拠もなく捕鯨に反対する場に堕してしまっていること自体、条約にも違反しており、かつ、国際法一般とも相容れるものではない。事実、このTimeの記事を見ても捕鯨反対の理由はIWCの禁止以外何も提出されていない。而して、IWCの禁止は「鯨資源の利用が持続可能」であることが判明するまで商業捕鯨を禁止したものにすぎず、元来、鯨の再生産能力に配慮して捕獲数量を限定して行なわれている日本の「調査捕鯨」をIWCの禁止を根拠に批判することなど筋違いも甚だしいことなのです。
畢竟、捕鯨国は商業捕鯨再開に向けた新たな国際委員会(New International Whaling Commission)を早急に立ち上げつつ、それと並行して、既存の国際捕鯨委員会(IWC)においては「挙証責任の転換」によって商業捕鯨再開が孕む問題を科学的に指摘する責任は反捕鯨国側に速やかに返すべきでしょう。
蓋し、日本が捕鯨を継続しなければならないのは、鯨が鯨だけの問題ではなく、捕鯨が日本の文化伝統の保持と国家主権の確保、および、食糧安保の最前線であるからです。而して、非科学的な、根拠などとは到底言えない床屋談義レヴェルの論拠しか提示できず、かつ、確立した国際法の慣習を踏みにじって毫も恥じることのない反捕鯨国に妥協するような政府は国民も国家も守護するものとは呼べない。私はそう考えます。
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<テクスト>
It's a ritual that boils the blood of whale-watchers everywhere. On Nov. 18, a fleet of four Japanese vessels left Shimonoseki harbor in Western Japan to begin its five-month whale hunt in the Antarctic Ocean. This time, however, the whalers are planning what's expected to be its largest hunt in decades; along with about 850 minke and 50 finback whales, the fleet says it plans to harpoon as many as 50 humpback whales for the first time since hunting the endangered species was banned in 1963.
The escalation of the hunt, and the inclusion of humpbacks, has drawn condemnation from leading anti-whaling countries, including Australia, New Zealand, Britain and the U.S. ・・・ With an upcoming general election, the issue has become heavily politicized in Australia; the opposition Labor party's campaign platform includes a proposal to mobilize military aircraft to monitor Japanese whaling fleets.
But Japan has said it needs to recommence hunting one of conservationists' most beloved species to further marine research. "Whales are just as important, and no more special, than any other fish," says Japan Fisheries Agency spokesperson Hideki Moronuki, maintaining Japan's long-held position that marine mammals should get no special treatment for being warm-blooded. Japan maintains that with a population of around 40,000 growing at 15% a year, the formerly endangered humpback has recovered to a sustainable level for lethal research. Anti-whalers, on the other hand, simply see this as raw defiance. "They're just doing this to show us that they can," says Paul Watson, founder of the anti-whaling Sea Shepherd Conservation Society.
Under a loophole in the 1986 International Whaling Commission (IWC) ban against commercial whaling, Japan has continued to kill hundreds of whales every year for scientific research. Once a whale is killed, scientists collect data from the animal's remains on its age, birthing rate and diet; the meat is then packaged and sold. Japan maintains that the research is essential for managing the whale population. "Minke or humpback, we see whales as a marine resource," says Moronuki. Still, most observers have long been skeptical of any benefits from the project. ・・・
Tensions have been heating up in recent hunts. In February, a member of Japan's whaling fleet was killed in a ship fire following a series of confrontations with vessels from Sea Shepherd. Both Greenpeace and Sea Shepherd say that they are prepared to "chase, block, and harass" any attempts by the whaling fleet to harpoon humpbacks.
Japan has cited its long history as a whaling nation and its historic reliance on whale meat for protein as reasons why it should be continued to allow to hunt despite the IWC ban. But Japanese consumption has become so negligible that local governments are encouraging schools to incorporate whale in their lunch programs, while thousands of tons of whale meat remain stockpiled in freezers.
The bigger issue, observers say, is whaling's impact on far more popular forms of seafood. Japan, which consumes half of the world's tuna catch, recently admitted to exceeding its quota for southern bluefin tuna set under an agreement with Australia and New Zealand, as overfishing threatens to decimate the animal's population. Plunging global fish stocks, along with a growing taste for sushi in China and the West, make Japan very uneasy about its future access to fresh seafood. So holding a firm line on the sustainable harvesting of whales, the argument goes, can help stave off a larger fight over more important fishing rights down the road. Says Moronuki: "Our whaling culture is near extinction because of the moratorium on commercial whaling. We need to make sure this doesn't happen to other marine resources."
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<和訳>
それは鯨観察を楽しむ人々をいたるところで激怒させる恒例の儀式である。11月18日、4隻からなる日本の船団が西日本の下関港から南氷洋での5ヵ月に及ぶ捕鯨に従事するため出航した。しかし、今回、その捕鯨船団は彼等としてもここ数十年で最大規模になると予想される捕鯨を計画している。すなわち、850頭のミンククジラと50頭のナガスクジラに加えて50頭のザトウクジラを銛でしとめると捕鯨船団は宣言しているからだ。ザトウクジラの捕鯨はこの絶滅が危惧されている品種の捕鯨が1963年に禁止されて以来始めてのことになる。
捕鯨数量の拡大とザトウクジラが捕鯨の対象になったことにより、オーストラリア・ニュージーランド、英国・アメリカを含む主要な反捕鯨国では激しい非難が巻き起こっている。(中略)来るべき総選挙では、日本の捕鯨を巡る問題はオーストラリアでは極めて政治的な色彩を帯びてきている。すなわち、野党・労働党の選挙公約には、軍の航空機を使って日本の捕鯨船団を監視する計画が盛り込まれているのだから。
しかし、日本は、更なる海洋調査のためには、環境保護主義者が最も愛するこの鯨種の捕鯨再開が必要とする。日本の水産庁のスポークスマン、諸貫秀樹氏によれば「鯨はその重要さにおいて他の魚と比べて特に特別な存在ではない」。その血が暖かいからといって海洋哺乳類を特別扱いするべきではないという、日本の年来の主張を踏まえながら諸貫氏はそう述べた。公式には絶滅危惧種とされているザトウクジラの個体数は40000頭前後もあり、しかも、年15%もその数は増加している。よって、致死性の調査を行なったとしても持続可能な個体数の水準にまでザトウクジラは回復してきていると日本は主張している。これに対して、捕鯨反対論者は、この日本の主張を露骨な挑戦と受け止めている。「日本は、われわれ捕鯨反対派に対して、彼等がザトウクジラの捕鯨をすることが可能であることを見せつけるためだけにその捕鯨をやろうとしている」。そう、反捕鯨団体【を自称するカルト集団にしてテロリスト集団である】シーシェパード保護協会の創立者ポール・ ワトソン氏は語っている。
1986年の国際捕鯨委員会(IWC)の商業捕鯨禁止の抜け穴に基づき、日本は科学的調査の名目で毎年何百頭もの鯨を捕鯨し続けている。【「loophole」(=「抜け穴」)などの表現は正確ではない。IWCは持続可能な捕鯨を行なうための国際的なルール作りを行なう機関であり、「捕鯨」を禁止するための機関ではないのだから。正当な協定に従い日本が「調査捕鯨」を行なうことは誰からも「抜け穴」などという、あたかもそれが「ずるい行ない」であるかのような表現で呼ばれる筋合は断じてないのだ。而して、調査捕鯨の結果、食糧資源としての鯨の捕鯨が持続可能であることがわかれば、「調査」の取れた「捕鯨」に日本は即刻邁進するのみなのだ】鯨は捕殺されると、科学者達はその遺体から年齢・出生率・常用食糧のデータを収集し、その後、その肉はパックされ販売される。日本はその調査は鯨の個体数を管理するために必要不可欠であると主張する。「ミンククジラにせよザトウクジラにせよ、われわれは鯨を海洋資源と位置づけている」と諸貫氏は述べているのだ。他方、日本の主張にもかかわらず、その調査捕鯨プロジェクトにはなんらの利点もないという懐疑的な見方が大部分の識者の立場である。(中略)
ここ数年の捕鯨を巡って緊張はますます高まってきた。2月には、日本の捕鯨船の乗組員の一人が船上火災のために亡くなっているが、その船上火災は【反捕鯨団体を自称するカルト集団にしてテロリスト集団である】シーシェパードが送り出した船舶との係争に引き続いて生じたのである。シーシェパードもグリンピースも、ザトウクジラを銛でしとめようとする捕鯨船団のすべての試みを「追跡、妨害、攻撃」する準備と覚悟はできていると発表しているのだ。
日本は、捕鯨国としての長い歴史と蛋白源を鯨肉に頼ってきた歴史的経緯を、国際捕鯨委員会の禁止にもかかわらず日本が捕鯨の許可を継続されてしかるべきことの理由としてきた。しかし、日本における【鯨肉の】消費は無視できるほどの水準にまで下がってきており、よって、地方公共団体の中には給食に鯨を盛り込むよう学校に奨励している所もあるくらいなのだ。他方、数千トンもの鯨肉は冷凍庫の中で保存されたままなのである。
捕鯨を巡る問題を観察してきた識者によれば、より重要な問題は、而して、鯨などより遥かに人気のある海産物に対する捕鯨の影響なのである。日本は、世界のマグロ漁獲高の半分を消費しているのだけれども、その日本は、乱獲の恐れからオーストラリアとニュージーランドとの間で結んだミナミマグロ【インドマグロ】の割当量を超過したことを最近認めた。世界中の漁業資源の逼迫によって、更に、支那や欧米諸国における寿司嗜好の広まりにともない、日本は新鮮な海洋食糧資源に今後もアクセスできるかどうか不安になっている。よって、持続可能な鯨の漁獲に関して堅固な防御線を引くことができれば、【捕鯨を巡る】論議がこれから続こうとも、より重要な漁業権を巡る大掛かりな戦いにおいて日本は惨敗を免れることができる。諸貫氏は「日本の捕鯨文化は商業捕鯨の停止によって消滅の瀬戸際にある。われわれは、このような事態が他の海洋資源について起きることのないようにする必要がある」と述べている。
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◆参照資料
捕鯨を巡る私の基本的な考えについては下記拙稿を、また、捕鯨を巡る世界の動きと捕鯨国日本の主張に関してはその下に掲げたURL記事をご参照ください。
・(拙稿)鯨と日本の再生
・(拙稿)海外報道紹介☆日本の調査捕鯨船隊<南氷洋に向け出航>
・国際捕鯨委員会・2007総会ウォッチ(1)~(9)
・クジラ文化国ニッポン
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