英語と書評 de 海馬之玄関

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海外報道紹介☆日本の調査捕鯨船隊<南氷洋に向け出航>

2007年11月28日 20時11分36秒 | 英字新聞と英語の雑誌から(~2010年)


日本の調査捕鯨を俎上に乗せた記事を紹介します。出典はWashington Post "Japanese Mission to Kill, Study 950 Whales Decried," November 22, 2007(950頭の調査捕鯨を企てる日本に非難集中)です。著作権者に考慮して紹介は全体の三分の2にとどめました。

畢竟、捕鯨と反捕鯨を巡る議論の特徴はそれが議論にならないことでしょう。日本などの捕鯨国が、科学的根拠を積み重ね「持続可能な捕鯨の可能性」を主張するのに対して、反捕鯨国側は満足な科学的調査を行うことなく捕鯨に反対しているだけなのですから。

しかし (1)反捕鯨国の主張が、「鯨は知能が高いから殺すのは可哀想」「鯨以外にも食べるものは幾らでもあるじゃないか」「鯨を食べるなど恥を知れ」という、所謂「西欧中心主義」そのものの、鯨を食べる文化を持つ民族には何の拘束力もない独善的な主張でしかないことは最早誰の目にも明らかになってきたこと。(2)日本などによる科学的事実の積み重ねによって、「ある種の鯨が充分持続的に利用可能な資源であること」に対して論理的に反論することが難しくなってきたこと。

これらにより、ここ2-3年で、(甲)国際捕鯨委員会でも最早捕鯨国が僅差ながら多数派になり、かつ、(乙)捕鯨反対派も彼等の価値観の押し付けだけではなく、一応、事実と論理を提示し始めたといえるようにも見える。例えば、紹介したWPSTの記事も触れている「鯨肉には高い濃度で水銀等の汚染物質が含まれており、食べるのは危険だ」というような論理が最近反捕鯨派から語られるようになってきました。

而して、これらの動きは捕鯨国日本、すなわち、論理と事実を前提にした議論を通して合理的で公平な国際ルールの形成を求めてきた日本にとっては望む所の動向だと思います。尚、この問題を巡る私の基本的な立場、また、捕鯨を巡る世界の動きと捕鯨国日本の主張に関しては本稿末に掲げたURL記事をご参照ください。



【Departure of Japanese whaling fleet】


<テクスト>
The Japanese whaling fleet is sailing south this week to kill about 950 whales in Antarctic waters, despite appeals from the United States, the European Union, Australia and New Zealand to call off the hunt. What has particularly alarmed anti-whaling countries and environmental groups is Japan's plan, in the name of "research," to kill as many as 50 humpback whales.

It would be the first such hunt since 1966, when a worldwide moratorium was imposed to protect humpbacks, slow swimmers whose numbers were reduced by about 90 percent by overhunting. Humpbacks have since bounced back to about a third of their pre-whaling population, although they remain listed as endangered under U.S. law and are considered vulnerable by the World Conservation Union.

Japan's Fisheries Agency says it needs to kill the humpbacks (along with 850 minke and 50 fin whales) to make a thorough scientific study of their sustainability, as well as to assess their overall health, diet and the degree to which their internal organs have accumulated heavy metals and other pollutants.

"You cannot get this information by scratching the skin," said Joji Morishita, director of international negotiations for the Fisheries Agency and an alternate on the International Whaling Commission.

The commission's 1986 global ban on commercial whaling grants an exception for scientific hunts. Departing Sunday, four Japanese vessels sailed through that loophole. "It would be better if the Japanese stayed home and didn't come down under the guise, the deception, the claim that it is scientific whaling -- when they want to take a thousand whales," New Zealand Prime Minister Helen Clark said Monday. Japanese vessels have hunted whales, primarily minkes, in previous years using this loophole.

When scientists here finish their research, whaling commission regulations require that leftover whale meat be sold. Proceeds from the sales defray about 90 percent of the cost of mounting the hunt, according to the Fisheries Agency.

Consumption of whale meat in Japan has fallen sharply in the past two decades, mostly because of the commercial whaling ban, although coastal hunts for smaller whales continue. They do not come under the control of the whaling commission. Consumers here have also become wary of whale meat because of dangerous levels of mercury and other toxins.

The boom in whale consumption in Japan came after World War II and with the encouragement of occupying U.S. forces. Whale meat was cheap food for hungry people -- and Americans had not yet embraced "Save the Whales" as an environmentalist battle cry.

In recent years, as most urban Japanese have lost their taste for whale, the right to hunt the mammals has become something of a nationalist cause, with many Japanese resenting what they see as the self-righteous and hypocritical protests of Western governments and environmental groups.

"The United States and Australia have a much larger ecological footprint than Japan, so why are they criticizing sustainable whaling?" said Hiroyuki Matsuda, a professor of ecological risk management at Yokohama National University.

At the State Department this week, a spokesman said that the United States recognizes Japan's legal right to conduct the hunt but argued that the scientific rationale is weak. "We note that nonlethal research techniques are available to provide nearly all relevant data on whale populations," spokesman Sean McCormack told reporters.

Greenpeace, the environmental group, has dispatched its ship Esperanza to chase Japan's four whaling ships in international waters and disrupt the hunt.・・・

Japanese officials note that their country has the support of about half the 78 nations that are members of the whaling commission, including Russia, China, Norway and Iceland.

"We have been trying to make this issue as objective as possible," said Morishita, of the Fisheries Agency. "But other people ignore the facts and try to make it emotional."

Japan tried to persuade the whaling commission in May to approve resumption of coastal whaling for larger whales. When the request was turned down, Japanese officials threatened to quit the organization.






<語彙>
mission:任務/特命, decry:非難する, Antarctic waters:南極水域, appeal:要請/懇願, call off:中止する, in the name of:~の名目で/~の名義で, moratorium:停止, impose:(義務や責務を)負わせる/課す, reduce by 90 percent:その90%を減らす(=もとの10% まで減る。cf. reduce to 90 percentは「(減った結果、もとの)90%になる」=「10%減る」の意味です。これはTOEFL・TOEIC、GMAT・GREの必須の表現であるだけでなくビジネス文書でも頻繁に顔を出すもの。是非この機会に覚えるようにしましょう) , bounce back:回復する/反騰する, endangered:絶滅が危惧されている, vulnerable:傷つきやすい/攻撃を受けやすい/攻撃の影響を受けやすい, he World Conservation Union:国際自然保護連合,

the Fisheries Agency:水産庁, sustainability:持続可能性, assess:算定する, accumulate:蓄積する, pollutant:汚染物質, scratch:引っ掻く/表層の組織を採取する, alternate:代理/補佐(cf. an alternate on somethingは「会議や交渉における(政府や国王の)代理」=(決定権限をもたない)「政府代表」という意味) , the International Whaling Commission:国際捕鯨委員会, ban on commercial whaling:商業捕鯨の禁止, grant:容認する/保証する, loophole:(法律な契約書などの)抜け穴, under the guise:~を装って,

leftover:(手をつけられていない)食べ残し, proceed:売上高/収入, defray:支払う/支出する, mount:実施する, wary:用心深い/慎重な, mercury:水銀, embrace:(主義主張を)採用する/信奉する, battle cry:スローガン, lost their taste:経験しなくなる/嗜好する習慣をなくす, cause:(行動の)原因/理由/主義主張, resent:憤慨する, self-righteous:(朝日新聞のように)独善的な, hypocritical:偽善的な,

sustainable whaling:持続可能な捕鯨, rationale:根拠/理由付け, nonlethal research:(調査対象を)死に至らしめない調査, relevant:関連する, Greenpeace:グリンピース,international waters:公海, disrupt:中断させる, ignore:考慮しない/見て見ぬふりをする, resumption:再開する, turn down:申し出などをはねつける





<和訳>
南極水域で950頭ものクジラを捕殺すべく、今週、日本の捕鯨船団が南に向けて出航した。アメリカやEU、オーストラリアやニュージーランドから捕鯨中止の要請が出されている中での出航である。反捕鯨諸国や環境保護団体を特に危惧させているものは日本の捕鯨計画、すなわち、「調査」の名目で50頭のザトウクジラを捕殺する日本の計画である。

ザトウクジラの捕殺はそれを保護すべく国際的に捕鯨の停止が課された1966年以来のことになる。而して、泳ぐのが遅いこのクジラはその頭数の90%が乱獲された。ザトウクジラは捕鯨の停止以来現在にいたり捕鯨が始まる前の約三分の1の個体数までその数を戻してきている。もっとも、ザトウクジラはアメリカの国内法においてはいまだに絶滅危惧種にリストアップされたままであり、国際自然保護連合によればザトウクジラは脆弱であり(その個体数は、捕鯨などの)影響を受けて減少しやすいということだけれども。


日本の水産庁は(ミンククジラ850頭とナガスクジラ50頭とともに)ザトウクジラを捕殺することは、それらの全体的な健康状態、ならびに、それら三種類の鯨の常用食料とそれらが体内組織に蓄積してきている重金属その他の汚染物質の度合いを調査するのみならず、それらの鯨の資源としての持続的な利用可能性を科学的にきちんと研究するために必要であるとしている。

「誰もこのような情報を鯨の皮膚を採取するだけでは得ることはできないでしょう」と、水産庁漁業交渉官にして国際捕鯨委員会において日本側を代表する森下丈二氏は語っているのだ。

1986年に出された国際捕鯨委員会による地球規模の商業捕鯨禁止もその例外として科学的調査目的の捕鯨を容認している。日曜日に出発した4隻の日本の船舶もこの抜け穴を通って出航したわけである。「実際には、千頭ほどの鯨を得たいくせに、科学的捕鯨などというごまかしを隠れ蓑にして日本が出航することなく南下もしないというのなら、それが望ましい」とニュージーランドのヘレン・クラーク首相は月曜日にコメントした。日本の船舶はここ何年もの間この抜け穴を利用してミンククジラを中心に捕鯨を行ってきたのである。

そこで科学的調査が終了した際のこととして、調査対象としては用済みになる鯨肉は売却することと国際捕鯨委員会の規則は規定している。水産庁によれば、その売り上げは捕鯨を遂行するための費用の約90%を満たしているということだ。

この20年間日本での鯨肉の消費は急激に低下してきた。それは専ら商業捕鯨の禁止のためである。より小型の鯨を対象とした日本の沿岸捕鯨は続いているのだけれども。この小型の鯨【ツチクジラの捕鯨】を対象とした沿岸捕鯨は国際捕鯨委員会の管轄外なのだ。消費者はまた水銀その他の毒素が高い水準で含まれる危険性のゆえに、鯨の肉を食することには慎重になってきている。

日本における鯨肉消費のブームは第2次世界大戦後、アメリカ占領軍の奨励とともに訪れた。鯨肉は当時の腹をすかした人々にとって格安の食料であり、そして、当時、アメリカ人はまだ「鯨を救え」などという環境保護論者のスローガンには帰依していなかった。

ここ数年、日本の都市生活者の中では鯨を嗜好する慣習を失った者がほとんどになってきたことにともない、この哺乳類を捕殺する権利はなにがしか民族主義者的な主張の色彩を帯びてきている。而して、多くの日本人の目には、欧米の政府や環境団体からの抗議などは偽善にまみれ朝日新聞のように独善的なものと映っており、彼等はそれを憤慨しているのである。

「アメリカとオーストラリアは日本などよりも遥かに大きな環境への影響を残してきたではないか。ならば、環境を持続可能な捕鯨を彼等がなぜ批判できるというのか」、そう横浜国立大学の生態リスク管理学の教授である松田裕之氏は述べている。

米国務省では、今週、アメリカは日本が捕鯨を行う権利を持っていることは認めるとしながらも、捕鯨を行う科学的な根拠は乏しいと報道官が断じた。而して、この記者会見でシーン・マコーマック報道官は「鯨の数量を調査することに関連するほとんどすべての情報を得るためには非致死性の調査技術が利用可能である。そのことをアメリカ政府として特に申しておく」と語った。

【カルト的】環境保護団体のグリンピースは、日本の4隻の捕鯨船を公海上で追跡し捕鯨活動を中断させるためにそのエスペランサ号を出航させた。(中略)

日本政府高官は、日本はロシア・支那・ノルウェイ・アイスランドを含む国際捕鯨委員会の加盟78ヵ国の半数あまりの支持を取りつけていると言及する。

「捕鯨推進派はこの問題を可能な限り客観的に取り扱おうとしてきた」「しかし、捕鯨反対派の人々はこの問題を巡る事実を度外視してこの問題を感情的に扱おうとしている」と、水産庁の森下氏は述べた。

日本は5月の国際捕鯨委員会でより大型の鯨に対する日本の捕鯨再開を認めるように働きかけた。而して、この要求が否定されたとき、日本の高官は国際捕鯨委員会からの脱退も考慮するむねを述べ【反捕鯨側を】脅かしたのである。





◆参照資料
鯨と日本の再生

日本の4地域、伝統捕鯨の再開要求 米など反発 IWC総会

「IWC脱退か新機関」日本政府が意地みせた

クジラ文化国ニッポン




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