英語と書評 de 海馬之玄関

KABU家のブログです
*コメントレスは当分ブログ友以外
原則免除にさせてください。

FTが報じる日本の景気急降下☆世界金融危機の中の政局混迷を麻生総理の「穴熊戦略」は打開できるか

2008年12月11日 14時21分49秒 | 英字新聞と英語の雑誌から(~2010年)


政治・経済とも日本の前途に暗雲が立ち込めているようです。経済は円高の中の不況。政治はネジレ国会の中で麻生内閣の支持率が急降下。而して、世界金融危機に対応すべき政治にリーダーシップが感じられない不安から更に経済の悪化も加速するという、いわば「政治-経済の二重螺旋的スタグネーションスパイラル」(double helix-like stagnation spiral of politics and economics)に日本は陥りつつあるのかもしれません。

誤解のないように先に言えば、日本と日本人に対する自信と信頼を毫も疑わない私は、あらゆる危機は日本の好機と考える私でもあります。すなわち、私は現下の政治と経済の危機などなんの心配もしていません。

白村江の戦いの敗戦から大東亜戦争の敗戦、1973年以来数次に亘るオイルショックと円高不況と、打ちのめされる度に前にもまして強い日本として日本が復活できたのは、しかし、失敗の研究を怠らなかったからでしょう(この点で、自己の失敗を直視することを「火病」によって回避するどこぞの国と我が国は全然別の社会なのです)。

而して、その反省と研究の最初の材料として適当と感じられた記事を見かけた。Financial Timesの”Japan contracts faster than expected,” Dec. 9, 2008 「予想を超えて急激に進む日本の経済縮小」です。


バブル崩壊から小泉構造改革までの失われた10年間。その経済状況を説明する枠組みとして一頃「複合不況」という言葉が流行ったことがありました。1992年に出版された『複合不況』(中公新書)の中で著者の宮崎義一氏が述べたのは、要は、バブル不況の正体はフローの調整とストックの調整が組み合わさって進行しているものということ。つまり、在庫調整期間における有効需要の落ち込み(フローの調整)という通常の不景気と、企業における過剰な設備投資と金融機関における不良債権の処理が新たな有効需要を抑制する事態(ストックの調整)が同時に起こったのが失われた90年代の実相だとの指摘でした。

私はこの「複合不況」認識は満更間違いではなかったと思いますが、しかし、(人類史上最大級の金融緩和が金融機関の不良債権処理に専ら使われて、新たな設備投資と消費に回らなかった「貸し渋り」「貸し剥がし」は置いておくとしても、)国債残高の昂進など委細かまわず湯水の如く投下された公共事業投資が「経済拡大の乗数効果」どころか地方の建設業者への「つなぎ融資」にしかならず、景気対策としてはあまり効果がなかった、少なくとも国民がその効果を実感できなかった90年代の事態は忘れるべきではないでしょう。

蓋し、日本の金融機関の体力は10年前-15年前に比べて格段に改善しているものの、外需依存型の経済、地方経済の疲弊と都市人口比率の一層の増加、あるいは、世界随一の生産性を誇る一部製造業(&アニメ!)と先進国最低クラスの(自治労・日教組の寄生虫組合員を含む)ホワイトカラーの生産性、これらと社会保険制度に対する不安から萎縮する消費傾向。すなわち、公共投資の乗数効果の低い社会の体質は世界金融危機に直撃されている2008年の現在もそう変わってはいないと思うからです。


さて、麻生総理の指導力。蓋し、現在の政治と経済の「二重螺旋的危機」の由来を麻生総理はどこに見出しており、それに対してどのような対応と舵取りを見せるつもりか。危機に対する診断と施策を平明かつ直截な言葉で宰相が語るのを国民は待っているのではないか。否、切望している。あるいは、飢えているのではないでしょうか。

而して、(1)公共投資の乗数効果の低い日本社会の体質がそう簡単に変わらない以上、また、(2)今回の世界金融危機が単なる金融業界の再編に至る「金融業界内部の交通事故」ではなく、おそらく、(国家やグローバルスタンダードによる金融活動の規制、すなわち、新たな「金融規制の枠組み」あるいは「金融規制の相場」、換言すれば、新たな資本主義社会のイメージの構築をも引き起こすかもしれない、而して、少なくとも)金融業界自体の変容に至る可能性がある以上、更に、(3)国会での速やかな補正予算と補正予算関連法案の審議に民主党の協力が見込めない以上、麻生総理としては熟慮彫琢を加えた補正・正規の予算案パッケージを満を持して通常国会に提出する道を選ばざるを得なかったのは理解できる。

而して、その選択の結果は如何。その結果は God knows. 将棋の戦法に喩えれば、麻生総理の「穴熊戦略」が奏功して、民主党をタフな政策論争の泥沼の土俵に誘い込み(民主党が政策的には一枚岩どころではなく)それが政党としての呈をなしていない実情を暴くことに成功するか。はたまた、構造改革の更なる推進と地方再生の同時実現という麻生政権の歴史的使命に対処する上での諸項目の優先順位設定と匙加減を過ち与党分裂状態の中で政権立往生の憂き目を見るか。God only knows. 蓋し、それを考えるためにも下記のFTの記事は有意味ではないか。外部から日本を見つめる醒めた目線を知ることは無駄ではないだろうから。そう私は考えています。




Japan’s gross domestic product contracted much more rapidly in the third quarter than previously thought, official data showed on Tuesday, amid new indications of distress in the world’s second-biggest economy.

The revised GDP data showed a quarter-on-quarter fall of 0.5 per cent for the three months to September, compared with last month’s preliminary estimate of a 0.1 per cent decline.

The economy contracted at an annualised rate of 1.8 per cent between July and September – a much more precipitous pace than the annualised 0.5 per cent decline suffered in the same quarter by the US, centre of the global financial crisis.

Analysts said the revision, though bigger than expected, reflected relatively technical factors involving inventories and government spending rather than worrying new information and so would not dramatically change assessments of the economy’s prospects.・・・

However, the news the recession was deeper than thought came as the Cabinet Office said its latest composite index of business conditions showed the economy “worsening”.・・・

Adding to the general gloom, the economy ministry downgraded its assessment of business conditions to “weakening further” from September’s “weak”.

While the downward revision was worse than many economists expected, Japanese stock investors greeted it calmly. The Nikkei 225 index rose slightly.


火曜日【2008年12月9日】に発表された公的なデータによれば、第三四半期、日本の国内総生産は当初想定されていたよりも速く縮小した。また、世界第二の規模のこの経済が不調にあることを示唆する新たな諸指標も明らかになっている。

GDPの改定値を見る限り、9月を含むそれ以前の3ヵ月は前四半期比で0.5%低下しており、先月に関しても当初のGDP予測と比べて0.1%下まわった。

経済の縮小は7月から9月の間は年率換算で1.8%。これは世界金融危機の震源地であるアメリカが同じ期間にこうむった年率換算0.5%の減少を遥かに超える急激な落ち込みである。

専門家によれば、GDPの改定値は予想したよりも大幅なものであったが、今回のGDP改定値は在庫と政府支出等のどちらかと言えば技術的な要素を反映したものであり、新しい【不安材料に関する】情報を懸念したものではない。よって、改定されたGDP値によっても経済の先行きに対する評価を劇的に変えるものではないだろうということだ。(中略)

しかし、経済の冷え込みは想定されていたものよりも厳しいというこのニュースが飛び込んできたのと、内閣府が景気動向指数を見る限り経済は「悪化しつつある」と発表したのとがほぼ同時だった。(中略)

この【内閣府による】一般的な景気低迷の認識に加えて、経済産業省は景気判断を9月の「弱含んでいる」から「悪化しつつある」に引き下げた。

この景気判断の下方修正は多くのエコノミストの予想よりも悪い見立てであったものの、日本の株式投資家はこの引き下げられた景気判断を冷静に受け止めた模様である。実際、日経225(Nikkei 225:日経平均株価指数)は【経済産業省の景気判断下方修正後】僅かではあるが値を上げたのだから。


The flow of bad news will add to pressure on Taro Aso, prime minister, who has seen his support ratings slump in spite of promising repeatedly to focus on stimulative policies.

Mr Aso told his ministers at a meeting on Tuesday that “radical measures” were needed to prevent rising unemployment becoming a “major social problem”, according to Takeo Kawamura, chief cabinet secretary.

Among the proposed measures are subsidies for companies that take contract employees on as permanent staff and more generous benefits for people laid off.

Even Kaoru Yosano, economics minister and a noted fiscal conservative, said new stimulus policies should be put in place next year and public works spending could be used to create jobs.

Yet many officials and economists are sceptical about the likely effect of planned stimulative spending, saying a return to economic health is unlikely without a revival in external demand.


而して、このように次から次に舞い込む経済状況に関する悪いニュースは麻生太郎首相に更なるプレシャーを加えることになるだろう。というのも、麻生首相が繰り返し景気対策に力を入れると確約しているにもかかわらず、その支持率は低迷しているように思われるからだ。

河村建夫内閣官房長官によれば、麻生首相は火曜日の閣議で、失業の増加が「重大な社会問題」になるのを阻止するためには「抜本的な対策」が求められると述べたとのこと。

契約社員を正社員として引き受ける企業、あるいは、一時解雇された人々により手厚い処遇を行う企業に対する補助金などが現在検討されている。

経済財政政策担当大臣にして名うての財政再建論者である与謝野馨氏でさえ、新しい経済刺激政策は来年にはきちんと実施されなければならず、公共事業支出によって雇用を創設できるのではないかと述べた。

官僚やエコノミストの中では、現在計画されている景気刺激のための公的支出の実際の効果に対しては懐疑的な声も多い。而して、彼等の多くは外需の復活を抜きにして経済の復調を云々することは現実的ではないと主張している。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。