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橋下「慰安婦発言」批判の海外報道紹介--歪んだ論理の磁場の確認とその消磁化の契機として(4)

2013年07月03日 22時45分07秒 | 英字新聞 de 政治経済


★註:第一報と「改訂版」の比較②

「改訂版」では第一報の以下の箇所が割愛され、内容的には加筆された上で記事の冒頭部分に移されています。

Hashimoto said on May 13 that on a recent visit to the southern island of Okinawa, he suggested to the U.S. commander there that the troops there “to make better use” of the legal sex industry. “If you don’t make use of those places you cannot control the sexual energy of those tough guys,” he said.(橋下氏は、日本の中でも南にある島である沖縄への最近の訪問の際、沖縄に駐留する米軍の司令官に対して、合法的な性風俗産業を米軍部隊は「もっと上手に用いる」べきではないかと提案したと5月13日に述べた。「これらの性風俗ビジネスを有効に活用しない限り、米軍兵士の猛者どもの性的なエネルギーを制御することなどできはしないでしょうよ」とも)


★註:「橋下釈明」日本語原文との比較②

橋下氏の『私の認識と見解』日本語原文における本文の該当箇所は、「第二次世界大戦前から大戦中にかけて、日本兵が「慰安婦」を利用したことは、女性の尊厳と人権を蹂躙する、決して許されないものであることはいうまでもありません。かつての日本兵が利用した慰安婦には、韓国・朝鮮の方々のみならず、多くの日本人も含まれていました。慰安婦の方々が被った苦痛、そして深く傷つけられた慰安婦の方々のお気持ちは、筆舌につくしがたいものであることを私は認識しております」という箇所であろうと思います。


★註:慰安婦制度の非人道性と必要性は矛盾するか?

慰安婦制度に関する「橋下釈明」のこの点は詭弁だとする主張がネット上には散見されるようです。あるいは、私なりに意訳すれば「慰安婦制度は戦時下では必要であったが、僕自身がそれを道義的・倫理的に肯定しているわけではない」という橋下氏のロジックは意味不明という端的な主張も少なくない。

正直、私は、合法的なサービスに限定しているにせよ米軍に「風俗ビジネスの活用」を推奨している「橋下発言」とこの「橋下釈明」との間には些か落差がないこともないと思います。蓋し、この点については本編の「後記」で再度検討するとして、しかし、「慰安婦制度の非人道性なるものと必要性は必ずしも矛盾しない」ことだけは間違いない。と、そう私は考えます。すなわち、例えば、

・You can smoke here, but you may not smoke now.
(ここは規則上は喫煙可ですが、【例えば、こんだけ咳き込んでいる人々が周りにいらっしゃる状況では】
今ここでタバコを吸うなんて非常識ですよ)

・You have to sing the national anthem, Kimigayo, at the graduation ceremony;
and you must do so there.
(法的にも常識からも卒業式では国家・君が代を歌わなければなりません。
そして、卒業式では君が代をあなたは歌うべきだと私も思います)

このような、ある社会規範の妥当性を巡る「主観的な認識や評価と間主観的な認識や評価」の並立はそう珍しいことではなく、それを主張することは「詭弁」ではないと考えるからです。






Singling out Japan was wrong, as this issue also existed in the armed forces of the United States, the United Kingdom, France, Germany and the former Soviet Union during World War II, he alleged.

"Based on the premise that Japan must remorsefully face its past offenses and must never justify the offenses, I intended to argue that other nations in the world must not attempt to conclude the matter by blaming only Japan and by associating Japan alone with the simple phrase of 'sex slaves' or 'sex slavery,'" Hashimoto said in the statement.

Historians say up to 200,000 women, mainly from the Korean Peninsula and China, were forced to provide sex for Japanese soldiers in military brothels. While some other World War II armies had military brothels, Japan is the only country accused of such widespread, organized sexual slavery.

このイシュー【戦地における軍部隊による公娼の活用というイシュー】において日本だけが取り上げられたのは公正・妥当ではない。アメリカも英国も、フランスもドイツも旧ソ連もまた、第二次世界大戦中にはその軍部隊は戦地において公娼を活用していたのだから。と、そう橋下氏は主張した。

橋下氏はその釈明の中で「日本は悔恨をもってその過去の悪行を直視するべきであり、それらの悪行を正当化することなどあってはならないと、そう私は考えます。而して、このような前提に立って、私は、この戦地における軍部隊による公娼の活用というイシューについて諸外国は日本だけを責めるべきではないし、また、紋切り型の「性奴隷」や「性奴隷制度」という語句を日本だけに当てはめるべきでもないと主張したのです」、と述べた(★)。

20万に及ぶ女性達が、主として朝鮮半島と支那から軍の売春宿で日本の兵士達に性を提供するように強要された。と、この問題に詳しいほとんどの歴史家はそう語っている。第二次世界大戦に参戦した日本以外の国の軍隊の中にも軍の売春宿を設けていた例はあるものの、他方、その制度が大変大きな規模と極めて高い組織化の度合いを有していたがゆえに、その性奴隷制度を糾弾されているのは日本だけなのである。


★註:「橋下釈明」日本語原文との比較③

橋下氏の『私の認識と見解』日本語原文における本文の該当箇所は、「私の理念に照らせば、第二次世界大戦前から大戦中にかけて、日本兵が「慰安婦」を利用したことは、女性の尊厳と人権を蹂躙する、決して許されないものであることはいうまでもありません」および「かつて日本兵が女性の人権を蹂躙したことについては痛切に反省し、慰安婦の方々には謝罪しなければなりません。同様に、日本以外の少なからぬ国々の兵士も女性の人権を蹂躙した事実について、各国もまた真摯に向き合わなければならないと訴えたかったのです。あたかも日本だけに特有の問題であったかのように日本だけを非難し、日本以外の国々の兵士による女性の尊厳の蹂躙について口を閉ざすのはフェアな態度ではありませんし、女性の人権を尊重する世界をめざすために世界が直視しなければならない過去の過ちを葬り去ることになります」であろうと思います。






Hashimoto, 43, has become well-known in recent years for his outspokenness. Last year, he formed a conservative party, the Japan Restoration Party, with former Tokyo Gov. Shintaro Ishihara, a strident nationalist. The party is now an opposition party in the parliament.

His comments have added to recent anger in neighboring countries that suffered from Japan's wartime aggression and have complained about the lack of atonement for atrocities committed during that time.

Before Prime Minister Shinzo Abe took office in December, Abe had advocated revising a 1993 statement by then-Chief Cabinet Secretary Yohei Kono acknowledging and expressing remorse for the suffering caused to the sex slaves. Abe has said recently he stands by that statement and won't revise it.

橋下氏(43才)は、ここ数年その歯に衣を着せぬ物言いで有名になった人物である。昨年、彼は、保守政党の日本維新を前の東京都知事である石原慎太郎氏と共に結成した。而して、石原氏はその辞書に「遠慮会釈」や「沈思黙考」という言葉を欠く強面の民族主義者であり、現在、日本維新の会は日本の議会では野党陣営に属している。

橋下氏の【5月13日の記者会見における】発言は、日本の武力侵攻を被った近隣諸国、そして、その侵略行為の期間中になされた残虐行為に対して日本が充分な贖罪をしていないと最近にいたるも不満を表し続けてきたそれら近隣諸国の憤激を一層激しく燃えあがらせた。

昨年の12月に首相に就任する以前、安倍晋三首相は夙に、1993年に当時の内閣官房長官の河野洋平氏が発表した声明を見直すべきだと主張してきた。而して、この1993年の声明とは、その性奴隷が被った苦痛と被害は日本の軍隊が引き起こしたことを認めそれに対する悔悟の意を表明したものなのだけれども(for the facts to cause the suffering to the sexual slaves of Japanese troops)。ただ、最近、安倍首相は、この河野談話の見直しをすることはせず維持していくと述べている。

(AP記事(2)紹介終了)







<続く>




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