英語と書評 de 海馬之玄関

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Japan Times の「国籍法改正」報道

2008年12月06日 11時01分57秒 | 英字新聞と英語の雑誌から(~2010年)

 



本日、12月4日、国籍法改正案が参議院法務委員会で可決されました。開会から僅か2分全会一致での可決。よって、おそらく、明日5日の参議院本会議では昭和59年(1984年)以来四半世紀ぶりとなる国籍法の大幅な改正が可決成立する見込。けれども、平成の御世の国籍法改正問題はこれでやっと5合目に来たにすぎないのだと思います。

畢竟、今年6月4日に最高裁が違憲判決を下した以上、「誰が日本国民なのか」を定める(権利主体の定義規定としての)現行国籍法3条の「婚姻要件」を削除する線での改正は不可避だった。よって、この点での国籍法改正自体にも反対する論者は、(自己の願望や政治的主張とは別に)実定法的な根拠を添えて「現行憲法-民法-国籍法」の解釈論を展開すべきだったのです。

蓋し、現行国籍法から「婚姻要件」を削除する同法の改正に反対の仲間内でのみ通じる<イデオロギー的言説>だけでは、その主張が世論の支持を集めることはおそらくなく、まして、(「地球市民」なる政治的-歴史的な実体を信じ、時間において不変、かつ、地域において普遍な)「人権」の価値をアプリオリに信じる反日マスメディアが国籍法改正問題を取り上げることなど絶対になかった。ならば、自己の当落が決まる選挙と自己の出世を左右する政局がその関心の過半を占める国会議員の多くが自己の進退をかけて国籍法改正阻止に動くことを期待する方が野暮と言うもの。

国籍法改正案が閣議決定されてからのちょうど1ヵ月。現行国籍法から「婚姻要件」を削除する同法の改正自体に反対の論者にとっては「笛吹けどマスコミも国民の踊らず」的な現実を体感されたものと思います。而して、そのような論者はご自身は「差別排外主義的の意図」は微塵もなかったとしても、自身の言説が国民もマスコミも動かす根拠に乏しかったのかもしれないということ、更には、マスコミや過半の国民からは差別排外主義と受け取られる余地があったのではないかということを反省すべきなのではないでしょうか。


この問題に関する私の立場は、「国籍法改正には賛成→改正国籍法だけの先行施行には断乎反対」。よって、国籍法の改正だけが行われようとしている現実は私にとっても憂慮すべき事態。けれども、明日成立するであろう改正国籍法は国籍法改正プロセスの前半戦にすぎない(尚、このイシューに関する私の基本的な考えについては下記拙稿をご参照ください)。

 

・差別排外主義に抗して「国籍法改正に賛成→改正国籍法の単独の施行に反対」する
 http://blogs.yahoo.co.jp/nukunukupower/58976500.html

・国籍法違憲判決が問う<国民概念>の実相と再生
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-419.html

・国籍法違憲判決違法論の荒唐無稽
 http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-440.html

 

 

言うまでもなく今正に国際化の時代。物・金・情報だけでなく、国境を跨ぐ人の移動もその質量をいや増さざるを得ない時代。逆に言えばそんな時代に我々日本人がいるからこそ、社会秩序の基盤たる「日本国民のアイデンティティ」は一層強固に再構築されねばならない。蓋し、①日本国民の要件を差別排外主義に抗してグローバル化の時代に適したものに拡大することと、他方、②グローバル化の時代だからこそ(その拡大された枠内でより厳格に)日本国民の資格認定を行う。これら一見相矛盾する目的を改正国籍法は果たさなければならない。

而して、これら①②の次には、③大多数のドメスティックな(帰国子女を含む)「日本人たる両親の子」にも日本国の国民たる意識の強化を可能にする外国人管理法-教育法の改正を。その課題が控えているに違いない。正に、国籍法の改正は国籍法改正問題の折り返し地点にすぎない。私はそう考えています。


今般の国籍法改正を巡る議論と活動の中で、「百の法律論より一つの直感」という主張を目にしました。もちろん、この主張が、例えば、今般の国籍法改正(や改正国籍法だけの先行施行)に反対か賛成かを決めるものは自己の「直感」であるというものであれば私も特に異論はありません。けれど、「百の法律論より一つの直感」というスローガンは、「改正国籍法(や改正国籍法だけの先行施行)の何が問題なのか」「対案は何か」ということを考える上ではそう意味のあるものではなかろう。蓋し、「百の法律論」の下支えがなければ「直感」を政治に具現することは難しいだろうということ。

畢竟、今回の国籍法改正問題に関して戦後民主主義を信奉する陣営はほとんど目立った動きを見せなかった。だから今回は「百の法律論より一つの直感」と言えなくもなかった。けれども、これが2年前の「教育基本法改正」、1年半前の「憲法改正国民投票法」のような政治的に彼我の差が僅差、あるいは、向こうが劣勢なイシューであったなら「百の法律論より一つの直感」などとは到底言えなかったと思います。世論の過半の支持を獲得すべく戦後民主主義を信奉する陣営が繰り出す「百の法律論」を法律論の土俵において打破しなければならないからです。

例えば、「集団的自衛権」「核武装」を巡るこの社会の言説のあり方、あるいは、所謂「従軍慰安婦」なるものを巡るそれを想起していただきたい。蓋し、戦後民主主義を信奉する陣営はこれらについて議論すること自体を忌避する。正にそれ「百の法律論より一つの直感」。なぜか、なぜ彼等はそのような行動選択をするのか。それは「百の法律論」が行われた場合、自派が不利になることを自覚しているからであり、それらのイシューにおいて現在自派が優位に立っていると彼等が認識しているからです。

而して、保守改革派もそのようなイシューや情勢の場合にはそうすべきであり、他方、国籍法改正問題のような、保守改革派が政治的に劣位で、かつ、理で優るイシューに関しては「一つの直感と百の法律論」を旨とすべきではなかろうか。畢竟、「百の法律論より一つの直感」ではなく「一つの直感と百の法律論」の臨機応変な運用こそが、言説を通じて多数派を形成するゲームに尽きる大衆民主主義社会における政治プロセスでは肝要。そう私は考えます。


以下、紹介したのはJapan Times,”DNA center of nationality debate, Conservative lawmakers claim paternity tests would discriminate against foreigners,” Dec. 2, 2008「DNAが国籍論議の焦点に-保守派国会議員が外国人差別につながるおそれのある父親鑑定を要求」。日本在住の外国人をその購読者ドメインとするJapan Timesの性格からか、同紙はこの間、内外のメディアの中で最も詳しくこの問題を取り上げてきました。而して、おそらく明日5日の法案成立を受けて掲載されるかもしれない海外報道機関の記事は間違いなくJapan Timesの記事を種元にして書かれるはず。畢竟、この記事は日本の国籍法改正を理解する海外の認識枠組みになるだろう。そう思いここに紹介することにしました。

「国籍法改正には賛成→改正国籍法だけの先行施行には断乎反対」。若干の先行施行は許しても可及的速やかに「偽装認知」「人身売買」「日本社会の治安悪化」更には「日本社会統合の<イデオロギー=日本人のアイデンティティ>の劣化」を防ぐための「国籍法-戸籍法の運用下記規定」を成立させる。頑張りましょう。






With concern growing among lawmakers that amending the Nationality Law will engender false cases of paternal recognition, debate is focusing on whether DNA tests should be applied to the process of granting nationality.

Many lawmakers claim that it is essential to conduct a DNA test to prevent non-Japanese from illegally obtaining Japanese nationality through false claims of paternity, while others now argue that requiring such a test would present a number of problems, including discrimination against foreigners.

The revision of the Nationality Law would allow children born out of wedlock to Japanese men and foreign women to obtain Japanese nationality if the father acknowledges paternity after the birth.

This is in line with a Supreme Court ruling on June 4 that a provision of the law on the status of such children is unconstitutional because it states the children can only receive Japanese nationality if the father admits paternity during the mother's pregnancy, or if the couple gets married before the child turns 20.


国会議員の中で国籍法の改正は偽装認知を誘発させかねないという危惧が広がる中、国籍法改正論議の焦点は国籍を認めるかどうかを審査するプロセスにDNA鑑定を適用すべきかどうかに絞られてきている。

国会では、【日本人たる】父による偽装認知により外国人が違法に日本国籍を取得することを防ぐためにはDNA鑑定は不可欠であると主張する議員も少なくない。他方、そのような鑑定の導入は外国人差別を含む多くの問題を引き起こしかねないと主張している議員もいる。

国籍法の改正は、子の出生後に父が【自分がその子の父親であることを】認知したことを条件に、婚姻関係にない日本人たる父と外国人たる母の間に産まれた子にも日本国籍を認めようというもの。

この国籍法改正は6月4日の最高裁判決に沿ったものであるけれど、同判決は、そのような【日本人たる父と外国人の母の間に産まれた】子が日本国籍を認められるのは、その子の妊娠中に父が認知するかその子が20歳になる前にその父母が結婚するかした場合に限定している国籍法のある条項を憲法に違反すると判断した。



Some ruling lawmakers, however, have received hundreds of e-mails and petitions via fax from voters who oppose the revision. They argue that Japanese nationality would be easy to obtain because the revision does not require any scientific test to prove the parent-child relationship.

"If a law like this is misused, what will happen to the Japanese identity?" Takeo Hiranuma, a former trade minister and a staunch opponent of the revision, asked during a meeting last month with LDP lawmakers to discuss the nationality law issue.

The revision passed the Lower House last month with an attached nonbinding resolution that urges the government to study the feasibility of scientific measures to find evidence to prove the parent-child relationship.

The Upper House Justice Committee could vote on the revision as early as this week.

Many pro-DNA test politicians said the revision could be used as the basis of a black market business for acquiring Japanese nationality, which some lawmakers also argue would lead to violations of the human rights of children.・・・


与党の国会議員の中には、しかし、この国籍法の改正に反対する有権者からの何百通ものe-メールやFaxによる陳情を受け取っている議員もいる。それらの有権者は、今次の改正が父子関係を証明するなんらの客観的な鑑定結果を要求しないがゆえに日本国籍が容易に取得できるようになると主張している。

「このような法律が悪用された場合、日本人のアイデンティティはどうなりますか?」と、元経済産業大臣にして国籍法改正に対する頑強な反対派の平沼赳夫氏は、先月【11月】、国籍法改正案を検証するために開かれた自民党国会議員との会合【国籍法改正案を検証する会合に賛同する議員の会、現在の「国籍問題を検証する議員連盟」】で疑問を呈した。
 
改正案は先月衆議院で可決された。親子関係を証明する証拠を見出すための科学的な手段を採用する妥当性や現実性の調査検討【父子関係の科学的な確認方法を導入することの要否及び当否について検討すること】を行うように政府に強く求める決議、しかし、法的拘束力のない決議を付した上での衆議院通過だった。

参議院の法務委員会は今週中【12月1日~6日】にもこの改正案の可否を投票できる模様である。

DNA鑑定導入に賛成の議員の中では、現在の改正案は日本国籍取得ビジネスの闇市場にその基盤を提供しかねないものであり、而して、少なくない議員が懸念を表している如くそのような国籍法の改正は子供の人権を侵害する事態を導きかねないとの声も多い。(中略)


However, the Justice Ministry does not support the DNA test out of concern it would promote the concept of the family as simply based on biological evidence, Kei Kurayoshi, a senior official at the ministry, has repeatedly said at Diet sessions.

Using the DNA test may contradict the family law, overturning well-established family ties or parent-child relationships, he said.

According to LDP lawmaker Taro Kono, under the current civil code, a surrogate mother who received a fertilized egg and gave birth would be recognized as the legal mother of the child, not the biological mother.

Article 772 of the Civil Code also stipulates that if a married woman conceives a child during the marriage, the child must be regarded as her husband's, even without testing the biological evidence.

Kurayoshi said the current Civil Code includes this article to secure the child's social position, even if it is unknown whether the child is really the couple's biological child or not.

Yasuhiro Okuda, a Chuo University Law School professor, said if the DNA test was included in the revision, some might wish to use it to reverse court rulings on paternal recognition, throwing the judicial system into chaos.

Okuda also said the courts do not necessarily require a DNA test in a case of paternal recognition.・・・


けれども、法務省は、それが単に生物学的な観点から家族概念を捉えようとする傾向を助長しかねないとの危惧からDNA鑑定の導入には否定的であり、実際、国会の委員会で法務省高官【民事局長】の倉吉敬氏は同省の見解を繰り返し述べてきている。 

DNA鑑定の導入は現在定着している家族の紐帯と親子関係を覆しかねないものであり、それは現在の家族法と矛盾する。と、そう倉吉氏は述べてきたのだ。

自民党国会議員の河野太郎氏によれば、現在の民法においては、【人工】受精卵によって子供を出産した代理母が法的にはその子の母親とされるのであって、【卵子を提供した】生物学的な母が法律上の母親になることはない。

民法772条もまた、その婚姻期間中に【その夫と】婚姻関係にある女性が懐妊した場合には、生物学的な証拠の検証を毫も受けることなくその子は夫の子と看做される旨規定している。

当該の条項【民法772条】を現行の民法が規定するのは、子供の社会的な立場を守るためであり、子がその両親の生物学的な子供であるかどうかが不明であるとしても【そのようなことは、「子の福祉の観点」からはこの772条の適用を妨げない】、と倉吉氏は述べた。

中央大学ロースクールの奥田安弘教授は、もしDNA鑑定が国籍法の改正案に盛り込まれることになれば、父による認知に関する判決を翻すべくDNA鑑定の使用を望むものが現われかねず、そうなれば司法制度は混沌たる状態に陥るのではないかと述べている。

奥田氏によれば、また、裁判所は父による認知の事案に際して現在はDNA鑑定等を必ずしも要求していないとのことである。(中略)


Liberal Democratic Party Lower House member Tomomi Inada wrote in a column for the Sankei Shimbun that if the DNA test was conducted over the nationality case, it would have to be done for those born to married couples as well because the Supreme Court ruled that it is unconstitutional to discriminate against children based on whether their parents are married or not.

Some lawmakers argue that applying the DNA test only to cases of children born to foreign mothers could be discriminatory.・・・

Shinichiro Toyama of the Japan Federation of Bar Associations also pointed out a number of practical issues, such as where the test would be given and who would pay the \100,000 cost per person.


自民党衆議院議員の稲田朋美氏は産経新聞のコラム【『【正論】「国籍付与」は国会の重い課題』(2008年11月27日)】にこう書かれている。仮にDNA鑑定を国籍認定の事案に導入するとすれば、婚姻関係にある父母から産まれた子供にもDNA鑑定が必要となるだろう。なぜなら最高裁は、その父母が婚姻関係にあるかどうかによってその子供達を差別することは憲法違反と判示したから、と。

【日本人たる父と】外国人たる母から産まれた子供達だけにDNA鑑定を適用することは差別になる恐れがあると語る国会議員もいる。(中略)

日弁連の遠山信一郎氏は、これら上記の問題点に加えて更に幾つもの実際的な課題を指摘している。例えば、DNA鑑定はどこで実施されることになるのか、而して、1名当たり10万円のその鑑定費用を誰が負担することになるのか、と。【KABU註:試料の企画を予め限定統一する規則を導入できれば鑑定自体は3万円弱で実施可能であり、この「10万円」は日弁連のブラフと言えなくもない】

 



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