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今回は女子ゴルフの話。九州出身者の期待の星、上田桃子姫が、苦節4年、ついに復活というストーリーです。桃子姫に関しては、「バレーボールやらは先のないスポーツ」と本当のことを言った結果、世間からバッシングを受けたことが有名ですが、正直、実力は若手の中でも抜きんでている。そう私は思っています。はい、熊本県荒尾市・南関町と隣接する、福岡県最南端の大牟田市出身者としては、やはり、肥後のおてもやんに対する評価は甘くなるのは仕方がないでしょう(笑)。
ただ、例えば、宮里藍選手に比べて恵まれた上背と、よって、ドライバーとセカンドの飛距離と安定感。苦労した4年間のアメリカ体験で身につけたリカバリーの技術は、やはり、日本選手のTopであることは間違いない。と、そういう個人的な応援も兼ねての記事アップロードです。尚、「先のないスポーツ発言」に関しては下記拙稿を是非ご参照いただければと思います。
б(≧◇≦)ノ ・・・頑張ったね、桃子姫!
б(≧◇≦)ノ ・・・これからは刈り入れの時期だ、桃子姫!
<アーカイブ>上田桃子プロは女子ゴルフ界のエリカ様?
http://kabu2kaiba.blog119.fc2.com/blog-entry-696.html
・やったね、上田桃子プロ☆2007年度のゴルフ賞金女王確定!
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/9bdecb47627a69722857bf9a704c0cd5
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Japan’s Momoko Ueda wins Mizuno Classic, beating China’s Shanshan Feng in playoff
Japan’s Momoko Ueda won the Mizuno Classic for the second time in five seasons, beating China’s Shanshan Feng with a 15-foot birdie putt on the third hole of playoff.
Ueda, also the 2007 winner in the event sanctioned by the LPGA Tour and Japan LPGA, closed with a 3-under 69 to match Feng at 16 under at Kintetsu Kashikojima.
The victory, her first since the 2009 AXA Ladies Open, was her second on the LPGA Tour and ninth on the Japan LPGA.
“I was starting to think I’d never win again,” said Ueda, who earned her LPGA Tour card with her 2007 victory. “It’s been a tough four years in America.”・・・
Ueda missed a chance to win in regulation when her 16-foot birdie try on the par-4 18th slid to the right of the hole.
“When I missed that birdie putt, I thought I had lost my luck to win,” Ueda said. “But my caddie told me to just enjoy this and to just finish it.”
On the first extra hole, Ueda missed a 5 foot birdie try to the left, while Feng two-putted from 20 feet for par.
“I really thought she was going to make that putt,” said the 22-year-old Feng, the LPGA Tour’s first full-status member from China. “I thought, ‘Good, she gave me another chance.’”
They settled for pars on the second playoff hole, and Ueda won with her 15-footer on the third extra hole after Feng two-putted for par from 25 feet.
Ueda got a big break in regulation on the par-4 ninth when her drive ricocheted off a fan’s head and bounced back into the fairway, setting up a birdie.
“The man told me he was OK and said, ‘I just want to see you play. I don’t have time to go to the hospital. Just do your best,’” Ueda said.・・・
(321 words)
【出典:AP, November 6, 2011】
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【語彙】
playoff:プレーオフ, birdie:バーディー(cf. 「ダブルボギー:double bogey 」「ボギー:bogey」「パー:par」「イーグル:eagle」「アルバトロス:albatross, double eagle」), putt:パット, event:出来事/スポーツの大会(cf. pageantは「大がかりな展示会/ショー/美人コンテスト(beauty pageant)」。これらは、類義語としてTOEICの語彙問題で過去に出題されました), sanction:認可する/制裁を加える, LPGA:【全米】女子プロゴルフ協会(cf. 「Ladies Professional Golf Association」のabbreviation), a 3-under 69:スリーアンダーでトータル69打(cf. 既出の「a 15-foot birdie:15フィートの長さの距離を沈めるバーディー」、後出の「25-year-old Ueda:25歳の上田」と同様、「基数詞+ハイフン+名詞」で形容詞を作る英語の造語法では、数詞の後ろの名詞は必ず単数形になります), match:一対一で戦う/たいまんを張る,
victory on [in]:~における勝利(cf. 「~に対する勝利」はvictory over [against]), earn a card:出場資格を獲得する, a tough four years:4年間のしんどい歳月(cf. 複数形のyearsに不定冠詞が付いているというは、話者の桃子姫が「4年間」をまとまった一つの時間や苦難の塊として意識していることを表しています),
win in regulation:(プレーオフに入らず)規定ホール数の成績で勝利する(cf. 「逆転勝利:come-from-behind win [victory]」、「全盛期のジャック・ニクラウスのような、最初から最後までぶっちぎりでの勝利:wire-to-wire win」), slide:斜めにずれる, caddie:キャディーさん(cf. 14世紀の古ノルマンフランス語起源の「carry:運ぶ」と語形は似ているものの、「caddie」は一応語源を異にしており、「少年/最年少者」を意味するフランス語が17世紀の初めに「使い走りの若衆/水や荷物の運搬人」として英語の語彙に取り入れられたもの),
extra hole:プレーオフが戦われるホール, the first full-status member:(招待選手ではなく)公式戦に出場できる資格を備えた最初の正式なメンバー, settle for:我慢してやってみる/不承不承そのへんで手を打つ/不本意だがなんとか切り抜ける, a 15-footer:15フィートの長さのパット, break:幸運事/不運事/一大事/マジ冗談ちゃうでの事態, ricochet off:弾丸や打球が跳ね返って~ に当たる, bounce back:弾丸や打球および投球などが~に跳ね返る
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【読解躓きの石】
今回は、日本人にとっての躓きの石の一つ、前置詞のお話。
サンプルは冒頭のセンテンス。これです。
Japan’s Momoko Ueda won the Mizuno Classic for the second time in five seasons, beating China’s Shanshan Feng with a 15-foot birdie putt on the third hole of playoff.
(日本の上田桃子姫がミズノ・クラッシック大会で5年ぶり二度目となる優勝を飾った。プレーオフの3ホール目で15フィートのバーディーパットを沈め、支那のShanshan Fengを下しての優勝)
実際、「won sth for the second time」「in five seasons」「beating sb with」の言い回しはピーンと来られたでしょうか? 英語のノン・ネーティブスピーカーにとって前置詞と冠詞は鬼門。それを完璧に(百歩譲っても、「自分が納得できるまで」)日本人が理解するのは不可能と割り切った方が精神衛生上は好ましいとさえ言える、鴨。
最近と言わず、『図解-英語前置詞早わかり』とか『ネーティブスピーカーの語感で学ぶ英語前置詞』とかの類は書店に汗牛充棟。他方、「forは等価交換を表す」「inは他と区別されたある空間・時間の内部を示唆する」「withは元来、自分以外のものとの敵対・対立を意味していたが、そこから、他者の存在を前提にした、その他者と自分の同時存在や「主体-道具」の関係も表すに至った」等々の、英語史を踏まえたお説を披露している英文法書も少なくない。しかし、そんな「英語前置詞に関する取説」が次々に出版されているということは、逆に、その<決定版>はいまだ出ていないということなの、鴨。
実際、「toは到達点を指示していたから、現在は、行為の目的をも含意する」「atは行為の目標点・標的を意味する」「onは事物の上下の位置関係というより、ある事物と他の事物の接着のニュアンスを含んでいる」等々の説明は確かに分かりやすい。けれども、実際の英文の意味把握においてそれらの諸命題がどれほど統一的かつ整合的に様々のケースを説明できているかというと、正直、(私もその一人として)それらの命題の唱道者もそう自信があるとは思えないのです。
と、ネガティブに書き進めてきましたが、ここでは、「なぜ、決定版が出ないのか」の説明? つまり、英語の前置詞に関しては、安易な<統一理論>にすがるのはやめて、個々の前置詞の用法を(就中、それらが一緒に使われる動詞、および、前置詞の目的語になる名詞類とのコロケーションを)できるだけ多く覚えるに如くはない、鴨。畢竟、読者の皆さん、
б(≧◇≦)ノ ・・・この世には、よって、英語の前置詞にもそうそう美味しい話は落ちてませんよぉー!
ということ、鴨。
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では、英語の前置詞とは何か? それは、in, at, to, for, by, with, ・・・である、と。確かに、辞書を引けば、一応、少なくともその辞書の範囲内では「すべての前置詞」を書き出すことは可能でしょう。しかし、その作業だけでは、その辞書の作者がなんで、about, aboard, above, ・・・with, within, without を「前置詞」に分類したかは分からない。そして、この点が分からなければ、土台、個々の英語前置詞の意味なども到底理解できないのではないでしょうか。本論行きます。
前置詞とは、英語のセンテンスの中で「単語と単語の関係」を表示する単語である。
古英語期(1066年のノルマン・コンクエスト以前の英語)、否、おそらく中英語期の前期(14世紀-15世紀の英語)までは、英語は(現在のドイツと同様)、格変化が「センテンスの中の単語と単語の関係」を表示する上で重要な役割を果たしていました。
要は、I, my, meの人称代名詞の格変化やtoday's paperのアポストロフィーのエスだけに格変化が限定されているのとは違い、当時の英語では、原則、すべての名詞類・形容詞類が格変化を行い、加之、述語動詞もそれらの格変化に対応したユーセージ(要は、ある動詞が述語動詞として使われる場合、何格の名詞を伴うか等々のサブルール)がまだ余命を保っていた。また、重要なことは、現在の英語には「主格・所有格・目的格」の三つの格しか残っていませんが、当時は、現在のドイツ語よりも多い、主格・属格・対格・与格・具格という五つの格が存在していたこと。而して、その後、格変化が実質消滅するに従いこの500年間で英語は、
б(≧◇≦)ノ ・・・文中の単語と単語の関係は、①前置詞と②語順で表すことになった!
б(≧◇≦)ノ ・・・現在の英語は前置詞の全盛時代である!
例えば、言語人類学の知見によれば、(確認された範囲で)世界に存在する/存在した圧倒的多数の自然言語の語順は、(実は、英語の祖語を含め!)「S→O→V」であるのに対して、英語ではこの500年間に、完全に「S→V→O」の語順に移行した。実際、古英語期は、すでにこの移行プロセスの過渡期だったのですが、古英語期や中英語期(12世紀~15世紀)でもまだまだ「S→O→V」の語順は普通とは言わないけれど、特に珍しくはなかったのですから。閑話休題。
さて、格変化が消滅した結果、英語の前置詞に何が起きたか。ノン・ネーティブの英語学習者にとって一番重要と私が考えるのが、格変化ありせば明確であった「述語動詞⇔名詞」の関係を、比較的少数の前置詞で代行することになったこと。よって、ある前置詞が、一見両立しない複数の語感を帯びるに至ったことだ。と、そう思うのです。
例えば、
The more, the better.(多ければ多いほど良い)
このthe moreもthe betterもthatの具格の残滓で、その格のニュアンスは「~の差だけ/~の分だけ」を含意しているのですが、このニュアンスは現在では、前置詞のbyを使い表現するしかなくなっている。ならば、次の二つの例文のbyをできあいの<統一理論>で説明することなど土台不可能というか無意味なことではないでしょうか。なぜならば、センテンス内部に「前置詞の意味タイプ」を認知する文法的な情報は皆無なのですからね。
ちなみに、1)が具格、2)が対格・与格の流れから来ているbyです。
1)Ueda won the Mizuno Classic by two strokes.
(上田はMizuno Classicを2打差で【2打差だけ2位を上回り】勝利した)
2)Greece was swayed by strong public sentiment.
(ギリシアには強い国民意識【筋違いの被害者意識?】が満ちている)
最後、だめ押しの例文。
3)He is coming in ten minutes.
(彼は10分後に到着します
cf. He will come within ten minutes.
彼は10分以内に到着します)
4)He will come in the morning.
(彼は午前中には到着します
→morningの終わり、つまり、正午の直前に到着するわけではない!)
要は、同じinがコンテクストによって異なる意味を帯びるということ。而して、それは、(ドイツ語で言えば、「3・4格支配の前置詞」が、一緒に用いられる述語動詞、よって、コンテクストによって意味が異なるように)英語でも、古英語期では、対格の名詞と(くどいですが、対格の名詞を取る述語動詞と)一緒に使われる場合には、in, out等々は「静止した位置関係・時間の前後関係」を表し、他方、与格の名詞と一緒に使われる場合には(本当にくどいですが、与格の名詞を取る述語動詞と一緒に使われる場合には)、現在ではinto, out of等々で示唆される「運動の方向や時間の推移」を表していたことの結果なの、鴨。少なくとも、3)の「その後に明記される時間の終期」を表すinの用法は、このような多義的な/曖昧でも許される英語の前置詞の意味体系を前提にして初めて成り立った用法なの、鴨。と、そう私は考えるのです。
б(≧◇≦)ノ ・・・英語は楽しい~!
尚、英文法の事項に関して疑問を感じられた場合にはこちらを参照してください。
・『再出発の英文法』目次
http://blog.goo.ne.jp/kabu2kaiba/e/4c90b691d5e0e53d8cb87f7803a437ce
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【和訳】
日本の上田桃子、支那のShanshan Fengをプレーオフで退けミズノ・クラッシックを制する
日本の上田桃子がミズノ・クラッシック大会で5年ぶり二度目となる優勝を飾った。プレーオフの3ホール目で15フィートのバーディーパットを沈め、支那のShanshan Fengを下しての優勝。
全米女子プロゴルフ協会ツアーと日本女子プロゴルフ協会の双方の公式戦である本大会の2007年の覇者でもある上田は、近鉄賢島カントリークラブで開催された今回、3アンダーの69で最終日を終え、トータル16アンダーで並んだFengと差しの優勝決定戦に臨むことになった。
今回の優勝は、彼女にとって2009年のAXA Ladies Open以来のものであり、全米女子プロゴルフ協会公式戦としては2回目、そして、日本女子プロゴルフ協会の公式戦としては9回目となる優勝である。
「うちはもうこんまま一生勝てんとじゃなかろかち、思い始めとったとです」と上田は吐露してくれた。ちなみに、彼女はこの2007年の本大会の優勝で全米女子プロゴルフ協会公式戦の出場資格を得たのだけれど、上田は「その後のアメリカでの4年間はもうほんなこつもの凄うきつかったけん」とも述べてくれた。(中略)
上田はプレーオフに入る前の規定ラウンドの際に一度勝つチャンスを逃してしている。それは、18番パー4での16フィートのバーディーパット。彼女のパットはホールの右側に外れたのだ。
「あんバーディーパットばミスしたときは、こん試合の運ばのうならかしてしもうたかんしらんち思うたとです」と上田は語る。「そばってん、あたしんとこんキャディーさんがですね、こん局面ば楽しまんね、そっから、このホールばきちっと締めくくらんねち言うてくれらしたとです」とも。
プレーオフの最初のホール、上田は5フィートのバーディーパットを左に外し、Fengはグリーン上20フィートの距離を2パットでパーで切り抜ける。
「プレーオフ1ホール目、上田は必ずバーディーパットを沈めるだろう、間違いないよ。そう私は考えていました」と、支那出身者として初めて全米女子プロゴルフ協会の公式戦の出場資格を備えた正式メンバーである、22歳のFengはその時の気持ちを語ってくれた。そして、上田がパットを外したときには「望む所よ、上田がもう一度チャンスをくれたということだものと思った」とも。
次のホール、両者ともパーで切り抜け、迎えたプレーオフ3ホール目、Feng が残り25フィートの距離を2パットのパーで終えた後、15フィートのパットを沈めた上田が栄冠を手にする。
実は、上田は、幸運と言うべきか不運というべきか、プレーオフ前の規定ラウンド中にとんでもない事態に遭遇している。その事態はパー4の第9ホールでのこと。彼女が放った第1打が跳ね上がっり観戦中のファンの頭部に当たったのだ。そして、跳ね返ったボールはフェアウェーに戻ってくる。この幸運によってか、結局、上田はこのホールでバーディーを取った。
「そん男ん方は、自分は大丈夫やけん気にせんごとせんねち言うてくれらしたとです。そっで、「私はあんたがプレーすっとば見ろごたっと。そげんこげんで、病院に行っとる時間はなかでしょうが。だけん、あんたはあんたんベストば尽くさんね、そっが一番よかばい」ちも言うてくれらしたけん」と、そう上田は語ってくれた。(後略)
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