矢野顕子さんがライブで歌っていた「嘆きの淵にある時も」の原曲が聞きたくてこのアルバムに
たどり着いた。
岡林は、チューリップのアップリケ、山谷ブルースをかつてカラオケのレパートリー
にさせて頂いてた。好きなのだ。こういった、社会の裏に光を当てて、体制に反抗する歌手である
と認識していた。歌を武器に闘うシンガーソングライター。
しかし、矢野さんが歌うその歌が、心に響いた。それは闘う歌ではなかった。どこまでもやさしい、
弱っている人、負けそうな人にどこまでも寄り添う慈悲の歌。
このアルバムを通して聴いてみてそれは確信に変わった。この人は闘ってなんかいない。
自分の心とシンプルに向き合ったときに出てきた思いをただ歌にした、それだけのことなのだろう。
声がとても柔らかくて優しい。そして、とても丁寧に歌っている。
音楽を志すものとして、教えを乞うた、そんな気持ちである。