<ザー…>
雨は予報通り、本降りになってきた。
行き交う車もほとんど通らない道の歩道を、カガリは濡れたままの制服を体に張り付けたまま、とぼとぼと歩いていく。
でも寒さはちっとも感じない。心の痛みに比べたら…
脳裏に浮かぶのは、あの優しい翡翠。はにかんだり、嬉しそうだったり、驚いたり…声に出さないのに、その翡翠が隠れていた彼の豊かな感情をカガリに素直に見せてくれた。
そして、真っ直ぐに向けてくれた気持ち。
―――「カガリ…君が好きだ…」
あの声が、唇の触れた感覚ばかりが鮮やかによみがえってくる。
そしてメイリンに言われて、ようやく自分の気持ちに気が付いた。
「私は…アスランが…好きだ…」
でも、もう言えない。言うことを放棄したんだ。言える資格なんてない。
「ヒック…ゥ…ァアアーーー!」
カガリは天に向かって泣いた。
何でもっと早く気が付かなかったんだろう。なんでもっと早く言えなかったのだろう。
後悔の波がカガリに押し寄せる。
それは―――背後から忍び寄る、何者かに気づけないほどに。
「ヒック…ヒック…」
泣きじゃくるカガリの背後から伸びる腕。そして―――
<ガバッ!>
「ヒッ…―――っ!?」
口が何かで覆われ、羽交い絞めにされる。アスハ家に来てから、自衛のため格闘技はある程度学んだことがあるカガリだが、感情的な不安定さと不意を突かれたことが災いした。
「んーーーーっ!んんーーーーっ!」
必死にもがくカガリの口元に、ガーゼのようなものが付きつけられる。と、途端に意識が遠のく。
(―――「でもお嬢様、最近物騒な連中がうろついているようなことを、旦那様がおっしゃっておりまして・・・」)
マーナが言っていた一言を、カガリは薄れゆく意識の中で思い出た。
<・・・続きを読む>
雨は予報通り、本降りになってきた。
行き交う車もほとんど通らない道の歩道を、カガリは濡れたままの制服を体に張り付けたまま、とぼとぼと歩いていく。
でも寒さはちっとも感じない。心の痛みに比べたら…
脳裏に浮かぶのは、あの優しい翡翠。はにかんだり、嬉しそうだったり、驚いたり…声に出さないのに、その翡翠が隠れていた彼の豊かな感情をカガリに素直に見せてくれた。
そして、真っ直ぐに向けてくれた気持ち。
―――「カガリ…君が好きだ…」
あの声が、唇の触れた感覚ばかりが鮮やかによみがえってくる。
そしてメイリンに言われて、ようやく自分の気持ちに気が付いた。
「私は…アスランが…好きだ…」
でも、もう言えない。言うことを放棄したんだ。言える資格なんてない。
「ヒック…ゥ…ァアアーーー!」
カガリは天に向かって泣いた。
何でもっと早く気が付かなかったんだろう。なんでもっと早く言えなかったのだろう。
後悔の波がカガリに押し寄せる。
それは―――背後から忍び寄る、何者かに気づけないほどに。
「ヒック…ヒック…」
泣きじゃくるカガリの背後から伸びる腕。そして―――
<ガバッ!>
「ヒッ…―――っ!?」
口が何かで覆われ、羽交い絞めにされる。アスハ家に来てから、自衛のため格闘技はある程度学んだことがあるカガリだが、感情的な不安定さと不意を突かれたことが災いした。
「んーーーーっ!んんーーーーっ!」
必死にもがくカガリの口元に、ガーゼのようなものが付きつけられる。と、途端に意識が遠のく。
(―――「でもお嬢様、最近物騒な連中がうろついているようなことを、旦那様がおっしゃっておりまして・・・」)
マーナが言っていた一言を、カガリは薄れゆく意識の中で思い出た。
<・・・続きを読む>