うたたね日記

アニヲタ管理人の日常を囁いております。

彼の秘密☆りたーんず!(早かったな!Σ(・ω・ノ)ノ!)

2023年02月17日 22時48分49秒 | ノベルズ

「痛っ!」
人差し指に走った痛みの後、コンマ数秒でそこから湧き出た赤い液体がぷくりと膨らんできた。
「大丈夫ですか!?代表。」
ふと指先から視線を上げれば、秘書官たちが皆、私の方を心配げに見つめている。
「あ、いや、大丈夫だ。指先をちょっと切っただけだから。」
コピー用紙というものは存外厄介だ。特に上質なものになってくると、カッターナイフより鋭利に切れる。触れる時には気を付けるようにしていたのだが、それでもこの有様。かなり深く切れてしまったのか、赤い玉の膨らみはますます大きくなり、咄嗟に口に含めば舌先に鉄の味がした。
「代表、どうぞ手当を。絆創膏貼りましょう。」
そう言ってベテラン秘書が立ち上がり、書棚の引き出しをまさぐり始めた。
「いいから、大丈夫だ。こんなの舐めときゃ自然に出血も止まるって。」
「でももし、ばい菌が入ったら…コーディネーターならともかくナチュラルの代表の御身に、未知の病原菌が入っても心配ですし…」
妙に必死にそう告げる秘書。たかが指を切っただけで、そんな絆創膏なんて…ん?

(絆創膏・・・大丈夫・・・)

指先をもう一度見れば、ジンジンと脈に合わせて走る痛みと、舐めとった先からまだ滲んでくる赤い液体―――
なんかそれを見たら、あの時を思い出し、ムッとしてきた。

 

***

 

それは数年前の事だった―――
「代表!大変です!!テロリストが―――」
「あぁ、たった今、軍令部からもエマージェンシーが入ったところだ。」
私は勤めて冷静を図る。皆が浮足立っている時にこそ、代表たる私が焦ってはいけない。ワザと声を低くし、ゆっくりと顔を上げる。
「それで?軍令部からその後の報告は?」
「はい、現在第一空挺部隊が事に当たっていると。」
「第一空挺部隊か…」
その瞬間、私の脳裏に紅の機体の残影が過った。
指揮官はアスランだ。ならば既に冷静に、そして最短でしかも効率的にこの件を処理するところまで、彼の頭は働いているはずだ。
テロの場所はオーブ領海外なのだが、無論我が軍のレーダーに引っ掛かっている。だが問題はそこじゃない。
「狙われたという赤道連合領内の島は無事なのか?」
「現在確認中です。」
そう、テロと言っても我が国内での問題ではない。問題なのはオーブの領海線ギリギリにある赤道連合所属の島の一つをテロリストたちが人質に取っているということ。
そして現在海外演習に出ていたらしい連合の艦隊は、この事件勃発時に正反対の方角に集結していたらしい。無論全速力で向かっても間に合わない。そこで我が国に援助を求めてきたのだ。
オーブ軍は他国の侵略を許さず、他国への侵略を許さず、他国の事に干渉しない、というのが鉄則だ。
だが今回は人質に取られた島民は全員非武装だ。一発のミサイルで島民全員の命に係わる。隣国からの懇願に義を見てせざるは勇無きなり。私自身も許せない。
軍令部の指令室に移動し、事の経緯を聞いていた、その数分後、
「代表、件のテロリストの捕縛に成功したと連絡が―――!」
通信使が振り向き様に叫ぶ声に、指令室から安堵の歓声が上がった。
(流石はアスラン、さっさと済ませるとはな。)
思わず口角が弛む。アスランが事に当たれば何の不安も私にはなかったが、やはり事件を解決できたという一報を聞くと、
(どうだ?これが我が軍の准将の力だぞ!)
と誇りたくなる。
反対にアイツは
(―――そんなに褒められるようなことじゃないよ。)
とちょっと不愛想にしつつ、皆の見えないところで表情を緩ませるんだよな。
そんなことを想像しながら、事件の報告の指示を出していたところ、先ほどの通信士が打って変わったように、驚きの表情で叫んできた。
「大変です代表!ザラ准将が―――!!」
「・・・え?」

 

***

 

「それで今、准将は!?」
「今帰還され、医務室に搬送された、と。」
「怪我の具合は!?」
「まだ確認できていません。」
医務室に向かえば自然と早足になり、言葉尻に感情が混じる。
一軍人にだけ特別な対応はしてはいけない。そうは分かっていても自然と焦りが態度に出てしまう。まだまだ立派な代表にはなり切れないな、私は。でもそんなこと以上に今は心が揺さぶられる。
(どうしてこんなことに…)
私は思わず唇をかむ。
先ほど報告は聞いている。テロリストが出した要求を連合が突っぱねたのだ。数百の島民と国一つ、確かに天秤にかけたらどちらを取るか、国主なら後者を取るだろう。
それに怒りを覚えたテロ集団は遂に弾道ミサイルを発射したのだ。他のMSでは間に合わない。そこで高速機であるインフィニットジャスティスを駆り、アスラン一人が先行した。インジャスのビーム兵器なら、一発で簡単にミサイルなど叩き落とせるはず―――だった。問題なのはもう島上空にミサイルが到達していたこと。そこに撃ち込めばミサイルの爆破と共に、その空の真下にいる島民に被害が出ることは確実だ。
そこでアスランは、ミサイルを撃ち落とした後、爆散の被害からインジャス\そのものを盾にして島民を守った―――ということだった。
勿論インジャスと言えど爆破の衝撃を受ければ、とんでもないダメージを受ける。無論、パイロットしかり。
アイツはそういうやつだ。犠牲は最小限に抑えるよう、直ぐに計算立てることができる、実に有能なやつだ 。ただ一点「自分もその犠牲者の中の一人として数えない」こと以外は―――


医務室の前までくると、何故か専属の医師が廊下に佇んでいた。
「ドクター!准将の怪我の具合は!?」
まるで掴みかかるようにして詰め寄る。するとドクターは両手で「まぁまぁ」と抑えるポーズをとり、落ち着いて答えた。
「今、全身状況の確認を取りましたが、特に出血もなく内臓損傷もありません。ただ全身打撲と一部の筋肉断裂、そして擦過傷は否めませんが。」
全身打撲!?下手したら死ぬところだったじゃないか!
「そんな大怪我で…処置はもう終わったのか?」
「それが…」
先ほどまで落ち着いていたドクターの表情が、何だか困っているように変わった。
「私も、大事を取って入院を勧めたりしたのですが、「大丈夫だ」の一点張りでして。しかも手当てしようとすると「このくらい自分でできる」と、とにかく触れることを酷く拒否されまして、難儀していたのです。とりあえず一日ここで様子を見ることは何とか了承して下さいましたが、「呼ぶまで入るな」と念を押されまして。」
「…こんな時に何言っているんだ、アイツは!?」
「ですから、代表から一言言っていただけますと、准将も命令では従ってくれるのではないかと。はい。」
いっつもそうだ。アイツは怪我ばっかり一人で引き受けて。そして最後は「大丈夫だ」の連呼。少しは自分のことを大事にしろ!!


私は勢い込んでドアを開けた。
「アスラン!」
「え?カガリ!?」
薄いクリーム色のカーテンの向こうから彼の声がする。
うん、生きていることに間違いはない。
声を聴いて瞬間、安堵で涙が滲んだが、それ以上に説教してやらないと。
「大丈夫なのか!?打撲だと、後から症状が出ることもある―――」
「ちょ、ちょっと待て!今―――」
私の歩み寄る気配を遮るように、何故か慌てている彼。もしかしたら私のお説教を恐れているのか?それともまだ包帯巻き立てのあられもない姿((/ω\)イヤン💦)とか? まぁ男の裸など、軍事教練で何度も見ているから私なら一向に気になどならん。
「待ってくれ!カガリ―――」
怪我より何かに焦る彼の声を無視して、カーテンを一気に全開にする。と―――
「・・・。」(←私の点々)
「・・・。」(←アスランの点々)
その光景に、二人ともたっぷり10秒くらいは固まった。そして第一声は私が飛ばした。
「な、な、何やっているんだよ!お前はぁあああああああ!!」
私の怒鳴り声に同伴した秘書官とドクターが飛び上がったらしいが、私はカーテンを閉め、二人に暗に「入ってくるな!」意思表示を示した後、ベッドの上の彼の前で仁王立ちした。
私の眼下には、あの「ネオジェネシスからオーブを救った英雄」「最強のパイロット」と幾つも称賛を受けた凛々しい―――ではなく、シーツを抱えて、正に獅子に睨まれたハツカネズミのごとく、ぷるぷると震えている男が一人―――その擦過傷のところに貼ったらしい絆創膏、普通なら白いはずのそれには、何故か私が映っている。いや、「映っている」んじゃない!「写っている」のだ。
ご丁寧に私の証明写真のような物ではなく、笑っていたり、喜んでいたり、何処からどう見てもスナップ写真の、私の顔の部分だけどアップにしたものが!
「お前っ、この絆創膏は一体何処からどうやって――💦」
「それはその…俺が作ったオリジナル絆創膏『ハウメアの護り絆創膏』で…」
何だよそのセンスの無い名称は・・・(ー△ー;)・・・って、今は突っ込むところはそこじゃない!
怒りと恥ずかしさでぷるぷるしている私と反対に、視線を避けたまま頬を染めつつ彼が告白した。
「いや、コーディネーターは怪我の治りも早いけれど、先日たまたま見ていた検索サイトで、”幸福体験をするとより人の傷や病の治癒が早くなる”というのを見たんだ。」
それとこれとどう私が関係しているというのだ(ーー;)
「幸せを感じると、人間はアドレナリンや興奮物質が出て、そうすると更に免疫力や修復力が上がるらしいんだ。それで俺は一晩真剣に考えたんだ。いつも君に「怪我だらけだな」と言われないようにするために、より早く治療できる手段はないかと。そうしたら君の手が「よしよし、大丈夫だ」って俺の患部を摩ってくれた妄想を働かせたら、その想像した部分がほんのり温まってきて(*´ω`*)ホワ~。本物のカガリに摩ってもらいたいけれど、君は忙しい身の上だ。俺のこんな些細な願いで時間を取らせては、オーブ国民にも、君自身にも申し訳ない気がして…だから、自分でカガリの絆創膏を当てたらいいんじゃないかと考案したんだ✨」
「・・・(ー△ー;)」
人の数十倍頭の回る、人も羨む誰より優秀な人間が、一晩も無駄な時間を使って考えたのがコレかよ💧
呆気にとられる私をよそに、彼は頬を赤らめながら続ける。
「でも今は平和で使いどころもなく、携帯用の救急袋に入れていたんだが、思いもかけずこんなことになって。」
「で、ドクターやナースがいたら、流石に恥ずかしいから、「大丈夫」だの「入ってくるな」だの言っていたわけか。」
「恥ずかしいんじゃない!これを見て「欲しい!」と言われたら嫌なんだ!これは俺だけのものだし。だから見られないように、上からガーゼを当てようとしていたところに君が来てしまって・・・。」
もっと他にその優秀な脳みそ、発揮できる場所があるんだろうが!(怒)
だが彼は私の心情と裏腹に、口角を緩める。「それに、貼ったところが凄く温かいんだ。本当に、君に手当てしてもらっているようで(´∀`*)ポッ♥」

(はぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ・・・・・・・・・・・・・・・・・orz💧)

今温かいのは多分幹部が炎症をおこしているからじゃないのか、と言いたかったが、呆れる方が先で、私の口は開きっぱなしだった。
もっとガッツリやめろ!とお灸をすえてやりたいところだが、現在本当に重傷者であることに変わりはない。説教はまた後日にすることとして、とりあえず顔も見られたし、これだけ元気なら一泊しなくとも帰れるだろう。

「…わかった。とにかく大事にしろよ。」
私は脱力時にかけていた椅子から、ようやく立ち上がる。なんか足元がふらつきそうなほど疲れた感覚に襲われながら、彼を背にした瞬間、
「あ、カガリ―――」
切ない響きを持った声が私の背にかかる。
「なんだよ。」
一つため息をついて振り返れば、本当に炎症で熱が出てきたのだろうか、熱を帯びて潤んでいる澄んだ碧い瞳でじっと私を見つめ、眉が下がって心細そうな表情で弱々し気に私に哀願してきた。
「その…忙しいのは分かっているんだが…できたら、暫く、その…傍に、いてくれないか…?」
雨の日に段ボール箱の中で「キュ~~ン」と弱々しく泣きながら見あげてくる子犬のようだ。でも・・・でもな、私がこういうのに凄く弱いこと、コイツは知っているのか!?
誰もが目を見張る強い男が垣間見せてくる弱々しさ。それを見せてくるのが自分だけ―――こんな状況に酔わない女はいるんだろうか。
「…全く、しょうがないな。」
私は椅子に掛け直し、その頬に張り付いたままの後れ毛を払いながら、そっと手を握る。
すると安心したように、彼は目を閉じ、スゥッと穏やかに深い眠りに落ちていった。
「…何が「大丈夫だ」だよ。身体は強くても、メンタルはからっきしじゃないか。」
思わず笑いを零しながら、彼の寝顔にそっと囁いた。

 

***

 

(あの時はいいように言いくるめられたというか、状況負けってやつだったよな~)
結局その後、お説教しようにもお互い忙しくてタイミングを逃し、私の怒りのボルテージも下がってきてしまったのだ。もちろん、私の写真プリント付きの絆創膏は没収したが。

あの時を思い出しながら、もう一度指先を見つめる。すっかり出血は止まったようだ。まだ少しジンジンするのは、好中球がばい菌を倒し、血小板が必死に血管の修復にあたってくれているからだろう。そう思っていると
「代表、やっぱり絆創膏貼りましょう。」
先ほどの秘書官が、ピルケースを持ちながら目の前に佇んでいた。
「いや、本当に大丈夫だから。もう出血も止まっているし、紙も血で汚したりしないぞ。」
「でも…」
妙に食い下がってくるな?何か訳でもあるのか。
「どうした?心配してくれるのは嬉しいけど。」
「実は、使っていただきたくて…」
なんか奥歯に物の挟まったような彼女に問い詰める。
「どうしてそんなに食い下がるんだ?訳でもあるのか?」
「えぇ、実は『こちら』をずっと預かっておりまして…」
彼女が開けたピルケースの中身に、私は頬が赤らんでいくのが自分でも分かった。
そこには「早く治るように♥」のメッセージ付きのアスランの写真入り絆創膏があったのだ!
振るえる指で現物を指しながら、
「これ、一体・・・何時…」
「ザラ准将がテロの時の怪我が治った後、ここを訪ねてこられまして。「カガリに些細な傷でもついたら、これを使ってくれ。」と。でも絆創膏の衛生期限が切れそうで、でもこれをそのままゴミに出すには忍びなくってどうしたらいいのか…💦」
そう呟く彼女の頬には一直線の涙が流れている。
「そうか、辛い思いをさせたな。」

私は彼女の肩を叩き、種割れと共に机の横に備えていた『すとらいくふりーだむ』を取り出す。

すると秘書官全員が立ち上がって、ドアの向こうに出て行く私を敬礼で見送ってくれたのだった。

 

・・・Fin.

 

======



前回で「最終回でーす☆( ̄▽ ̄)テヘ♪」と言っておきながら、舌の根も乾かぬうちに復活です(笑)
いえ、書く気はなかったんですけど、明けの砂漠編集部の編集室で、つい息子の言葉に煽られて、見事に墓穴を掘ってしまい💧 しかも迂闊に放った言葉を見逃すはずの無い息子に声質を取られてしまいました💦
なのでシチュエーションはできていたんですが、どうまとめるか考えていたところ、丁度同時に、Twitterの方にいつも素晴らしいイラストをUPしてくださるY様が、丁度「怪我をして弱弱しい表情を見せるアスラン」を公開していらして✨それに触発された感じで、最後のシーンがまとまりました。

・・・にしても。
最初#エアmpact のハッシュタグ付けてUPしようと思っていたのだけど、今読み返したら「上げなくって良かった~~~~💦」と胸をなでおろしてますw あの時はそう、イベント前で気が高ぶっていたんですよ、きっと( ̄▽ ̄)
まかり間違ってもオフ化はしません。それだけは絶対守ってみせる!(p`・ω・´)q



 


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