うたたね日記

アニヲタ管理人の日常を囁いております。

Singing in the rain

2023年07月22日 20時52分40秒 | ノベルズ

「こちらです、代表お早く!」

「ちょ、待てって!あ~もう!」

突然降り出した雨の中、二人して石畳に落ちては跳ねる雨粒を避けながら、必死に走った。

戦後の処理がおおむね完結し、地球国家の一代表として忙しくはあったが、そんな中でもようやく落ち着いて、国内の巡視に周ることができるようになりつつあった。

 今日はオノゴロ市内の養育施設の訪問。戦災孤児で一時溢れかえったこともあり、私としてはいち早く来訪したい場所でもあった。

あの——「シン・アスカ」のような辛い思いをする子供たちは絶対に増やしたくない。そう願ってかねてより希望していた場所だが、何しろ相手は幼い子供たちだ。SPがゴロゴロいたんじゃかえって怖がられると思い、限定一人、として願い出たところ…当日の朝、現れたのは彼だった。

正直…緊張した。仕事中は平気だ。代表の顔をしていればいいんだから。

でも、帰りは二人きり。行きと違って仕事への緊張がなくなった分、今度は距離をとっていいか、計りかねていた矢先にこのスコールだ。

(まいったなー。まさかスコールが来るなんて…)

 走りながらちょっと恨めしそうに空を見上げる。さっきまで海との境界がわからないほどの青空だったのに。

 物心ついた時からこの国で生きてきたから、スコールなんて当たり前と思っていたけれど、今日はしっかりスーツを着ているから、できれば濡らしたくなかったんだけどな。

と、思っていたら、

「あそこに大きな木がある。とりあえずそこで一旦雨が弱まるのを待とう。」

そう言ってアスランが指さした先には、道沿いにある緑地公園。その小高い丘の上に生い茂る大木が一本、まさにその地を護る傘のようにして聳え立っていた。

「さ、早く。」

「あ、うん。」

どうにもまだぎこちない。指輪を外し、国を、平和を平定するまでは、私事にかまけることはしない。私の意思に対し、最後の戦いに赴く前にAAの甲板にて、彼は無言で、しかし全身で私の答えを受け止めてくれた。

そうして今に至るが、戦後、キラやラクスとともに故郷のプラントに帰還する、と思っていた彼は、何故かまたオーブに戻ってきた。

一士官として彼はひどく優秀だった。

そして……ずいぶんと大人びた。

いや、初めて会った時からやたら冷静で、分析に長けていて、しっかりした奴で。つまりは、その、イコール「大人っぽい奴」だったけど。

うん、でも、何かが違っていた。

背伸びしている、っていうのとまた違う。無理やり大人になっている、って感じ。

だから酷く脆いところもあった。キラの場合は子供っぽかった(そうだよな、まだ子供だったもん)けど、無理に大人の振りしていたアスランの足元は不安定で、ちょっとしたことで崩れ落ちてしまいそうで、危なっかしい奴だった。

そんな奴だから、キラを殺したと思った時は、壊れる寸前だったし、私を殺そうとした瞬間の冷徹な表情をした奴と同一人物とは思えないほど、あれだけ号泣して、泣き叫んで。

そう思ったら、こいつも本当は子供だったんだよな、って思い知らされた。

でももっと思い知らされたのは——私への感情を向けられたとき。

あんな風にいきなり抱きしめられたり、その…キス…されたり…

いきなりだから本当にびっくりした。でもなんか納得した。感情が抑えられなくなると、堰を切ったようにとめどもなく押し流すような、そんな奴だった。

あの時と比べて、今の彼は「大人」なんだろう。

感情を見せない。

見せてくれない。

そうしたら、一体今、彼が何を考えているのか、私をどう思っているのかが、見えなくて…不安になる。

こうして二人並んでいるときでも、私は彼に触れることさえ許されないんじゃないかって。

そんな思いを抱えながら、走っていたら、

「こっちへ。」

そう言って彼がいきなり私の肩を抱く。

「は?///」

 添えられた手は、私の肩を余裕で包み込める大きさで、腕は力強くって。

 初めて彼と戦った時、まださほど私と背丈も変わりなく、たとえコーディネーターであっても互角に渡り合える、と思って挑んだんだけど。

 全く、実力差を分かっていなかったのは、今でも恥ずかしい。

 でも、今彼に逆らったら、きっともっと叶わないんだろうな。

 彼に触れられて、早鐘のような心臓は、走っているからなのか、それとも…

 

―――つづきはこちらから。

 

***

 

色々あって、久しぶりにpixivの方にアップです。
こちらの作品は2020年3月8日に開催されました、アスカガオンリーイベント「運命の出会い」の際に配布いたしましたコピー誌なのですが、現物をお手にしている人は多分20人くらいで、もう3年経過しましたし、「ま、いいか。」と思ってあげてみました。


その「色々あった」というのが、本宅の方が何故か突然更新することができなくなりまして(゚Д゚;) FFFTPが全然見つけてくれないんですよ💦 なので必死に色々いじっているうちに、メインで使っていたディスクトップが寿命により他界(T人T)チーン 残っていたデータがそのままお陀仏になりそうなところを、必死に叩いて起こして取り出せたもののうちの一つがこの作品。
新しいのに移すと同時位に、お知り合いさんから「プロバイダーさんが大型更新してますよ!」とご連絡を下さって、もう一度入力し直したら本宅発見!!✨\(≧▽≦)/
で、その本宅にUPしようと思っていたんですが、やっぱりHPそのものの容量も心もとなかったらしいので、結局pixivの方にしちゃいました💦
直ぐにUPしたかったんですが、何分介護で忙しく、落ち着いてできたのがようやく今日💧
「雨の話なので、梅雨の間にUPしたいな♥」と思っていたら「本日、梅雨明け宣言☀」・・・いろいろ目論見は外れる( ;∀;)
まぁ、オーブならスコール=夕立というのもありでしょ!と開き直ってUPしました。
懐かしく、あのアニメ誌掲載されましたアスカガのシーンを思い出していただけましたら嬉しいです♥


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