うたたね日記

アニヲタ管理人の日常を囁いております。

見つめていたい

2024年06月01日 20時50分11秒 | ノベルズ
それは午後のほんのひと時
彼女は執務室の机に伏したまま、安らかな寝息を零していた。

窓辺から入ってくる、柔らかい風が心地よい。
細い金糸を優しく撫ぜ、ほのかに潮の香りを纏わせ、カガリの鼻を擽る。
(気持ちいい…)
次から次へと続く慌ただしい日々に、気の休まる隙はない。
だけどこの一瞬、つい気が緩んでしまった。
誰もいないのをいいことに、少しだけ緊張を解けば、あっという間に瞼が重くなった。
浅い眠り。時々跳ねた後れ毛を撫ぜ上げるようにして払ってくれる、温かな感触を覚える。それがくすぐったいはずなのに、何故かすご心地よいい。
彼女に与えられたわずかな猶予。
きっと瞼を開けたら、たちまちこの部屋は、また戦場のような忙しさに見舞われる。
(頼む。もう少しだけ…)
今少しだけ許してほしい。そう願うと、また温かな感触が、そっと髪に触れて。
それが凄く安らげる。もっと深い眠りへと誘われそうなほどに。
(いかん、誘惑に負けるわけには)
重い瞼を何とか自力でこじ開ける。
「ん…」
薄く開かれていく視界。少しピントが合わずにボヤけていた世界が次第にはっきりとしてくる。
机の周りに積み上げられたままの決済書類と、置きっぱなしのボールペン。
そして―――机に片手で頬杖を付きながら、優しく微笑みながら穏やかな光を放つ碧い瞳。
「―――って、アスラン!?」
慌ててガバッと起き上がるカガリ。アスランは机に頬杖をついたまま。
「おはようカガリ。」
口角を緩ませながら、サラリとそういってくれる彼。
逆に慌てるカガリの血圧は、ガンガン上がっている。
「お、お、お前、いつからそこに!?」
「そうだな…多分かれこれ10分前程…」
「何、そんなに長い間見てたんだよ!///」
起こしてくれればいいのに! 緊張の抜けた寝顔を、しかも間近で観察されてしまうなんて!
カガリが顔を赤くして問い詰めれば、彼はこともなげに目を細めて答える。
「カガリがあまりにも気持ちよさそうで、起こせなかったんだよ。君は忙しいからな。それだけでなく、常に人からの視線を浴びているから、心の隙も見せられないだろう。」
「…」
常に傍にいるわけじゃない。それでも彼はカガリを見ていてくれる。そして内に秘めたままのプレッシャーも、さりげなく気づいて。
するとアスランは、左手をそっとカガリの頬に伸ばしてくる。指先が頬に張り付いたままの金糸をそっと払ってくれる。
その温かい感触…風だと感じていたそれは、まぎれもなく彼の指先だ。
(くっそ~~!他者の侵入を、こうも易々と許してしまうとは!!しかも触れられても気づかなかったなんて!)
悔しくて、カガリの口がへの字になる。
「なんかご機嫌斜めだな。寝起きが悪いのか?」
そういってカガリを揶揄うアスラン。
「当り前だろう!この私が他者の侵入を許すとは。まぁ、お前は潜入調査も軽くこなすくらい、気配を消すのが上手いからだろうけどさ。」
「そんなことはないだろう。寧ろ、君が起きなかった訳は…」
「…何だよ。」
「いや、いい。」
アスランがごまかすように立ち上がる。彼の表情が仕事モードに変わった。
「寝起きのところ悪いが、先日頼まれていた情報を持ってきた。」
そういってカガリのデスクにメモリーを一つ置く。ついでにコートのポケットからも写真を数枚、トランプのように並べて見せた。
カガリも瞬間、凛々しいオーブの代表の姿に戻る。
「そうか。やはり情勢は続いているようだな。」
「あぁ、プラントもユーラシアも、未だ混乱は続いているようだ。特にユーラシアの自治区とブルーコスモスの新たな盟主の動きと人物像をこちらに入れてある。」
「わかった。いつも済まない。」
「それから―――」
アスランがさらに続けようとしたとき
<プルルル>
カガリのデスクの上の内線が鳴った。
「モルゲンレーテからだ。」
「時間がかかりそうか?」
アスランが少し歯痒そうに尋ねてくる。彼とて世界のあちこちを飛び回り、忙しい身の上だ。コーディネーターとはいえ、疲労だって溜まるだろう。
カガリは受話器に手を伸ばしながら、隣の部屋を指さした。
「きっとエリカからだろう。少し時間をくれ。隣の応接室に、備え付けのコーヒーや紅茶があるから、適当に飲んで待っていてくれ。」
「わかった。」

そう言ってアスランはさっさと隣室に移る。
少し気分を損ねたのは、カガリとの会話を断たれてしまったことだ。
あのまま、もうちょっと彼女の傍に近づいて、寄り添いながら報告したかったのに。
(でも…)
大きめのソファーに腰を下ろすと、自分の指先をじっと見つめる。
「柔らかかったな…」
執務室に到着したとき、ちゃんとドアもノックした。反応がないので不在かと思った瞬間、ドアの向こうで
「ん…」
コーディネーターがようやくとらえる程の小さな吐息。覚えている―――間違いなくそれは彼女のもの。
「カガリ?」
ドアを開ければ、誰もいない部屋で一人きり、彼女は机に伏せっていた。
最初は具合が悪くて倒れたのかと、顔が青くなったが、近づいてみれば穏やかな寝息を立てていた。
「フーっ…全く。」
心配したじゃないか。だがその不安も彼女の安らかな寝顔を見たらこれまで溜まっていた疲労も、一気に吹き飛んでしまった。
代表として凛とした姿勢を崩さない彼女。その一瞬、緊張が解けたようなあどけなさを残した寝顔が可愛くて。つい口元が緩んでしまう。
「これは役得だな。」
小さく自分に囁くと、自然と指が彼女に伸びる。
窓から流れてくる風に弄ばれる髪を、そっと直して触れてみて。
それでも眠り姫は全く目を覚まさない。
自分の存在が気づかれないのも少々気になるが、それ以上に自分が隣にいても、安心して眠れるほど、カガリは自分に心を許してくれている。そう思うとこれ以上の喜びはない。
(そういえば…)
以前キラが言っていた。
(―――「カガリは僕に良く抱き着いてきたんだよね。」)
アスランのカガリへの感情を知っている上での自慢なのか、嫉妬なのか、あるいは…天然?なのか。
いや、多分カガリは本能的に、キラをきょうだいと感じ取って、気心を許しているのだ。
だが自分にはまず自ら抱き着いてくるようなことは無い。それは逆に自分を意識してくれている、ということだ。
恋の初めなら、きっと緊張から、直ぐにカガリも気配に気づいて起きたはず。
しかし、二人は一度距離が離れたことで、再び互いへの思いを確信した。
カガリが起きなかったのは、緊張が解けてもいい場所だと、アスランを認めてくれているということだ。
それはきっと、恋が終わり、愛へと成熟した証。
「だったら今度は…」
腕の中で眠りに落ちていくカガリの、あの寝顔を隣でずっと見ていたい。
幸せなその寝顔を見ながら、自分も眠りに落ちていく…

そんな日が、いつか、きっと・・・




「アスラン、待たせたな―――あれ?」
思わず話が長くなってしまった。時間にして15分少々かかっただろうか。
同じく分刻みで仕事に奔走する彼の時間をこうして束縛してしまい、申し訳なさがカガリの歩みを早めた。
慌ててドアを開ければ、座っていると思われたアスランの姿がない。
「アスラン…?」
キョロキョロと周囲を伺うと、アスランは冷めかけたコーヒーを前に、ソファーで横になっていた。
ソロソロとカガリが歩み寄ってみると、彼は見事に寝入っていた。カガリが傍に近づいても、その瞼はピクリとも動かない。
「全く…お前はいつも私の前では平然と寝られるよな。」
腰に手を当てて苦笑する。

そうだ。敵として出会ったあの島でも、彼は縄を解いた私を置いて、一人うつらうつらと寝入ってしまったのだ。
あの時はすっかり嘗められた、と思ってしまったが。

カガリはアスランが横になっているソファーの傍らに座り込み、両手で頬杖をついて、じっとその安らかな寝顔を眺める。
時々濃紺の後れ毛をそっと払ってやりながら、それでも彼の翡翠の光は瞼の奥に閉じられたまま。
「要はお前は、私の傍なら安眠できるってことか。」
初めて会った時から、見えない何かが二人を繋げていた。
赤い守り石、赤い石の指輪、そして―――赤い糸。
カガリはどこかまだあどけなさの残るその寝顔を見守りながら、自然と笑みが零れる。
(起きたとき、私が目の前にいたら、お前はどんな顔するかな?)
毎朝、アスランの綺麗な翡翠に、一番最初に映るのが私だったらいいな。
瞼が開いたとき、お前がちゃんと生きているって、喜びたい。
そして「おはよう」って笑いあって始まる一日。

そんな日が、いつか、きっと・・・


・・・Fin.

***

突発SSです。
いつものごとく。

今日の突発は、あの『かどきゃら』のFREEDOMバージョンのアスカガを見ていたら、もう可愛くって可愛くって(*´Д`)ハァハァ♥♥
二人して、頬杖ついて、ニコニコしているんですよ\(≧▽≦*)/
なんか、並べて置くより、ずっと向かい合わせで見つめ合わせ続けたいっ♥♥

無印のかどきゃらのアスカガは、二人で並んで話している感じがたまらなく好きで、自由のアスカガは頬杖ついて見つめ合っているの。
たまらんぜよ!!✨
かどきゃら、セットで買うと、意外と高くって渋っていたんですが、こんなに可愛いなら払ってよかった!( ー`дー´)bキリッ
どうする!?朝目が覚めたら、この二人がこんな風に頬杖つきながら相手を見合っていたら!優しい目をしているんですよ、二人とも♥♥
もうPC周り、アスカガだらけですが(苦笑)これは朝一、目に付くところに置くことにします!けもポンと共に朝一から愛でるぞ☆




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