KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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クーベルタンは生きている vol.2

2007年05月15日 | マラソン事件簿
更新をさぼっている間に、高野連が実施したスポーツ特待生制度の実態調査をめぐる状況が変化した。

当初、スポーツ特待制度が日本学生野球憲章に違反する行為として、該当選手の春季大会出場差し止めや制度そのものの中止と撤回を求める方針を打ち出した際、今ではIOCまでもが捨ててしまった、クーベルタン男爵の提唱したアマチュアリズムを、次回の五輪で実施されなくなる競技の団体が守り続けているということを歴史の皮肉と見ようか、ほめ殺ししようか、どうしようかと思っていた。全国の高校球児の何人がジム・ソープと化すのだろうかと気になった。

高野連に加盟する私立高校の約4割もが特待制度を実施し、該当する生徒が8000人にも及ぶという結果に、当の高野連の幹部が困惑するという事態となった。

「野球憲章が十分に理解されていなかったことは反省しなければならない。」
とは、高野連会長の記者会見の席上での弁だが、本当にこの人たちは今までこうした実態を知らなかったのだろうか?どこそこの野球部員が居酒屋で喫煙したとか、寮に女子生徒を連れ込んだとかいう写真週刊誌のネタ的な情報はすぐに集まるのに、
「あの学校は、野球憲章に違反して、野球部員の学費を免除しているぞ。」
という告発が寄せられたことはなかったのだろうか?

高野連がこのような実態を知らなかったはずがない。ただ、メスを突き立てるタイミングを待っていたのだろう。西武ライオンズの球団社長が裏金を告白した今こそがチャンスと思ったのではあるまいか?

部員全員が地元中学出身の公立校を「21世紀枠」として、センバツに出場させることが一定の支持を得ていることで、今回の措置も、金まみれの私立野球名門校を懲らしめてやるものだと、世間からの支持も得られるとでも思っていたところもあったのではないだろうか?

疑問符だらけの文を連ねてしまったが、高野連関係者の思惑(?)とは逆に、高校野球大会を主催する新聞社以外のメディアからは猛反発を食らう結果となってしまった。

「なぜ、野球だけが特別なのか?」
「他のスポーツでは認められていることが、なぜ、許されないのか?」

というのが、高野連を批判する人たちの意見である。この期に及んで、まだ
「高校野球は教育の一環」
であることを高野連は強調する。それならば、初心を貫いてみせて欲しかったなと思う。この際、思いきって、高野連は職業野球(野球憲章では、いまだにこの言葉が使われている!)界と断交するのである!

春と夏、甲子園に出場した選手が職業野球のチームに入団することを禁止すればいい。それをやらずに、
「高校野球はプロ野球の選手を養成するのが目的ではない。」
とか綺麗事を唱えてもなんの説得力もないと思う。

そうすれば、プロ野球の球団が高校球児に札束をばらまくこともなくなるだろう。各球団も、それで浮いたお金でそれぞれ、ジュニア選手を養成するための下部組織を立ち上げればいい。NPB12球団のみならず、四国や北信越で花開いた独立リーグでも、それぞれの地域でプロ野球選手を目指す子供たちの受け皿となるジュニア・リーグを作ればいいだろう。

とりあえず、特待生制度廃止で、野球名門校で野球が続けられなくなった「21世紀のジム・ソープたち」の受け皿を作ることから始めればいいと思う。職を失った指導者たちも同様に。

かつてなら「超高校級」と称された逸材が皆、「プロ野球ジュニアリーグ(仮)」へと進めば、甲子園の高校野球も様変わりするだろう。NHKの全試合生中継もなくなるかもしれない。そうなれば、それでも別にいいのではないかと思う。「教育の一環」ならば、試合に入場料を取ったり、テレビで中継する必要はないのではないかと思う。

最新情報では、特待制度廃止によって、野球部を退部したり、高校を転校せざるを得ない生徒たちへの救済措置が取られるという。結局は、関係者を混乱させただけで、何も変わらないと思う。クーベルタンの遺志を忠実に守り、金メダル有力候補を、五輪憲章違反として大会直前に追放処分を下した、ブランデージほどの「度胸」が高野連の幹部たちは持っていなかったということだろう、幸か不幸か。

わが県の高野連会長(土佐礼子の母校の校長)は、地元紙の取材に対して、
「(特待生を認めていない)野球が特別ではなく、普通だ。」
と答えていた。野球同様に、高校生の全国大会がNHKで生中継されるスポーツと言えば、年末の高校駅伝がある。「都大路」は今や「冬の甲子園」と化している感があるが、ここには、
「野球が普通」とする価値観から見れば、とんでもない現実が存在する。

(つづく)



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