KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
2022年は積極的に更新していく心算です。

2006上半期マラソン・ニッポン総括~男子篇vol.1

2006年04月30日 | 記録データ・ランキング
2月は逃げる、3月は去るとはよく言ったもので、トリノ五輪や自らのトレーニングやら何やらかんやらで、今年の男子の国内メジャーマラソンについて、別大の展望記事を書いて以来何も書いてなかった。

春の海外メジャーマラソンも一段落した今、まとめて振り返ってみようと思う。

まずは、2つの記録ランキングを作成してみた。

グループA
1位 高岡寿成(カネボウ)2:09:31 東京②
2位 松宮隆行(コニカミノルタ)2:10:20 びわ湖②☆
3位 入船 敏(カネボウ)2:10:47 東京④
4位 鷲尾雄一(三菱重工長崎)2:11:05 延岡①☆
5位 佐藤智之(旭化成)2:11:46 別大②
6位 中森一也(大塚製薬)2:12:08 延岡③☆
7位 小島宗幸(旭化成)2:12:28 びわ湖⑥
8位 福岡耕一郎(三菱重工長崎)2:14:00 びわ湖⑧☆
9位 沖野剛久(中国電力)2:14:32 別大⑥☆
10位 方山利哉(NTT西日本)2:14:36 東京⑥

10傑平均タイム 2時間12分07秒

グループB
1位 大崎悟史(NTT西日本)2:10:49 びわ湖③
2位 梅木蔵雄(中国電力)2:11:31 ロッテルダム⑪
3位 実井謙二郎(日清食品)2:11:32 ボストン⑥
4位 喜多健一(九電工)2:11:41 延岡②☆
5位 清水将也(旭化成)2:12:31 びわ湖⑦☆
6位 片岡祐介(大塚製薬)2:13:09 延岡④☆
7位 佐藤洋平(カネボウ)2:13:18 別大④
8位 久保田満(旭化成)2:14:19 延岡⑤初
9位 松浦仁一(ホンダ)2:14:47 びわ湖⑨初
10位 河野隼人(早稲田大)2:15:11 びわこ⑩初

10傑平均タイム 2時間12分52秒

タイムの後の〇で囲んだ数字は、大会での順位、☆をつけているのはそのランナーの自己ベスト、「初」は初マラソンであることを示している。

さて、グループAとBの違いはお分かりだろうか?

2ヶ月半前に、別大の展望記事を書いた際に僕は注目選手を同様のグループに分けた。
Aは箱根駅伝を未経験のランナー、Bは箱根駅伝を経験したランナー、というのが正解である。

昨年末に新書で刊行された「駅伝がマラソンをダメにした」という本が話題になっていた頃である。箱根駅伝が過熱するあまり、「マラソンランナーを育成する」という本来の目的から外れてしまっているのではないかという指摘は以前からいろんな方がしていたし、僕も取上げたことのあるテーマである。この「問題」をマラソン・ファン以外にも広く知らしめたという点では、出るべくして出た本だと思う。今後は、「“箱根のスター”はマラソンでは大成しない。」ということが「定説」ではないことを、ランナーたちに示してもらいたいというのが、一ファンとしてのささやかな願いなのであるが、はたして、今年上半期の男子はどれだけ「願い」が叶えられたか。

記録、という点だけでみると箱根未経験組が好調だった。こうして見ると、今年の延岡西日本マラソンが好記録続出のレースだったことがよく分かる。3大メジャー大会(別大、東京、びわ湖)で日本人優勝無し、という低調ぶりにかすかな希望を見たと思う。

その3大大会いずれも、2位だったのがAグループのランナーだったが、厳しく言えば「惜敗」でも「健闘」でもなかった。高岡は言うに及ばず、松宮も佐藤も既に「優勝して当たり前」の立場のランナーだと思うからだ。特に松宮と佐藤は'90年代のマラソン・ニッポン氷河期のランナーたちの失敗をなぞっているように見えた。今年の別大は、同じタイスが優勝した'99年の東京に、びわ湖での松宮の失速はかつての早田俊幸氏と重なってしまった。

東京国際での高岡、入船、サミー・コリル、アンベッセ・トロッサの先頭争いは、「これぞ国際マラソン!」とうならせるものであったが、「日本最高」のランナーである高岡の限界も見えてしまった。

たとえ、タイガースが1-10で負けた翌日でも、その1点を一面トップにして、
「アニキが見せた!意地の一発」
という紙面を作る大阪のスポーツ紙のような気分で、これまで日本の男子マラソンを語ってきたつもりだが、今年ばかりは将来に不安を抱かずにいられない。

1.若手の台頭が見られない

37歳の実井がボストンで6位入賞というのは確かに素晴らしい。しかし、彼がグループBの3位でいいのか!!このランキングに入っている20人のランナーのうち、'80年代生まれ('81年以降生まれ)のランナーは、大学生の河野以外は、'81年早生まれの佐藤(清水とは同学年)と、社会人2年目の久保田ぐらいである。まあ、マラソンというのは、高岡のように、30歳を越えての初マラソンで、日本最高、世界選手権入賞をはたし、38歳で五輪に再挑戦というランナーもいるし、今後は彼のような道を目指す選手も出てくる可能性もあるが、その一方で、早々と「現役」に見切りをつけるランナーも目立つ。

今年の別大で、初マラソンに挑んだ前田和之に注目していたが、彼が母校亜細亜大の5年ぶり箱根出場で7位入賞に貢献した、4年前の箱根駅伝の優勝校のメンバーから今年3人も、実業団の競技者を退き、指導者転身が発表された。さらには、アンカーの10区で区間賞を獲得したランナーも、箱根から遠ざかって久しい伝統校のコーチに就任した。実井よりも10歳以上若い彼らの「引退」は寂しいものを感じた。

櫛部静二氏のように、指導者に転身してからマラソンの自己ベストを更新した人もいるが、あまりにも早い「戦線離脱」には、これも「箱根後遺症」かと勘繰ってしまった。実業団での競技生活が箱根を目指していた学生時代よりもモチベーションを上げるものではなかったのだろうか?以前、
「箱根駅伝の方が、福岡国際マラソンよりも視聴率が高いんだから、誰も大学を出てからマラソンを走ろうとは思わんようになるわな。」
というような事を書いたが、ヨタ話のつもりで書いたことが現実化したのか?

アテネ五輪で2人が入賞、世界選手権ヘルシンキ大会で銅メダル獲得と、ようやく明るい日差しが見えてきたところで、来年の世界選手権に向けて、不安が広がってきた。

(つづく)




コメントを投稿