KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

マラソンを愛する皆様、こんにちは。
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アーカイブス「マラソン春秋」vol.3

2006年06月17日 | 「マラソン春秋」アーカイブス
久しぶりに全国ネットで中継される海外都市マラソンである'01年のベルリン・マラソンに、高橋尚子の走り以外にも、過大な期待をかけていたのだった。


あえてQちゃんの事には一言もふれないベルリンマラソン展望
at 2001 09/30 13:06

Qちゃんが何分でゴールするかという予想はいろんなところでやっていますので、そちらをご覧ください。

今回の参加メンバーの持ちタイムで、女子で2時間30分切っているのは3人!なんやこれ、である。そして、デオデオ陸上部の主将、寺崎史記と、大塚製薬の紅一点、杉原愛。この2人、2時間30分を切るのが悲願と、以前から語っていた。彼女たちのうち、どちらが目標を達成するか、注目している人って、何人いるのかな?

完全に主役の座を奪われた感のある、男子マラソン。持ちタイムで見ると、2時間10分を切っているのは10人。その中に日本人もひとり、エドモントンのマラソン補欠代表帯刀利幸が、満を辞して登場である。持ちタイムナンバー・ワンのケニアのウィリアム・キプラガト、日本のマラソンでもおなじみの、スペインのアルベルト・フズダト、日本に在住していたエチオピアのアンデッセ・トロッサといったあたりが優勝にからんでくるところだろう。

もう1人、イタリアのダニー・ゴフィーも注目。びわ湖で2位の“濃い顔のイタリアの伊達男”(解説の谷口浩美さん曰く)、ジャコモ・レオ-ネに、エドモントン3位のスティープ・バルディーニ、と、このところイタリアの活躍がマラソン界で目立つ。一時期の、フィスやアントンらが台頭してきた時期のスペインのようだ。ここらで、メジャー・レースの優勝を狙って来そうだ。イタリアというと、今年の大阪女子で渋井陽子に次いで、2位でゴールしたのも、イタリアのフィアッコーニ。もし、エドモントンに出ていたら、古舘に
「走る川崎カイヤ」
と呼ばれてただろう。

帯刀、7月の札幌ハーフの頃の好調ぶりを今も維持しているだろうか?まさか、藤田敦史や高橋健一ら、エドモントンで故障に泣いたチームメイトに右にならえしてしまった、なんてことになってなければいいのだけど。

トラックのスピードを持つ、岩佐敏弘も面白い。短い距離ではあの犬伏もかなわないという。彼の結果が、来週のシカゴマラソンの犬伏の状態をうかがうことにもなると思うので、注目だ。

僕にとっては、箱根駅伝最高の名勝負だった'94年の山梨学院VS早稲田。その山梨のV戦士から、尾方剛と井幡政等が出場。この2人も見逃せない。

なんせ、今回、男子ランナーたちにはQちゃんに抜かれる姿を全国中継されてしまうかもしれない、というプレッシャー?がある。日本からの招待ランナーたちが皆、彼女より先にゴールできることを祈りたい。

そして、車椅子部門には、すっかりおなじみの廣道純選手が登場。本人も3位以内を目指すと、出発前にメールを受け取ったことをお伝えしよう。

男女マラソン、男子車椅子の3種目(女子の車椅子の情報はつかんでませんので、ご容赦)を日本人選手が独占、というのが最高だが。

(そして、当日の生放送を見て、僕は唖然とした。)


Qちゃんよくやった!けど、感動しなかった
at 2001 10/02 02:19

9月30日、ベルリンマラソンにて、女子マラソン史上初めて2時間20分の壁を破る、2時間19分46秒で優勝した高橋尚子選手、ならびに、彼女のトレーニングを支えた、小出義雄監督らスタッフの皆様には、最大限の敬意を表し、この陸上競技史上不滅の金字塔ともいうべき快挙を賞賛したい。

そのうえで、あえて、申し上げる。王様は裸だとばらした子供のように。

実につまらんレースだった。

世界最高記録保持者対金メダリストの夢の対決。しかし、両者の「勝負」はスタートしてすぐに終わった。

マラソンへの知識はあまりなさそうなアナウンサーは、
「予想外の展開」
と言ったが、少なくとも、日ごろからネット等を通じてマラソン情報を収集している者にとっては、十分予想された展開だった。世界記録保持者ロルーペが、完調ではないことは、2週間前のハーフマラソンで1時間12分台でゴールするのがやっとだったことで、わかっていたことだ。

しかも、エントリーリストに、ロルーべの他にQちゃんと勝負ができうるランナーは存在しなかった。あとは、Qちゃんが2時間20分以内にゴールできるか否かが、唯一の見どころとなった。

それが、予想以上に退屈なのだ。レース途中にひんぱんに挿入されるCMに出てくるQちゃんと、ベルリンのロードをひた走るQちゃんとでは、使用前使用後のダイエット広告のモデルのごとく、ほぼ別人と化している。五輪の時よりも絞ったように見える身体をながめているだけでも、凄いが2時間以上も見つづけてはいられない。

そして、やはりテレビ中継局に文句を言わざるを得ない。スタート数時間前に僕は、今回のベルリンマラソンで、Qちゃんの世界最高以外のみどころを紹介したのだが、それらは全てテレビ局に無視されたのだ。男子のレースをほとんど省略という「暴挙」に出たのだ。

これはカメラの切り替えができなくなったというたぐいのアクシデントではなく、最初からその予定だったに違いない。どうして気づかなかったのだろう。解説者が増田明美さん1人だけだったという事で。基本的に、増田さんは男子のレースの解説はしない(できない?)。通常の男女同時スタートのレースでは男子のレースの解説者もいる。しかし、今回、伊藤国光さんも谷口浩美さんもベルリンには来ていなかった。

かつては、世界最高記録と日本最高記録を生み出している、男子のレースを日本のテレビ局は無視した。今回、日本から男子選手も一線級と呼んで差し支えないメンバーが派遣されたというのに。彼らの関係者は激怒しているだろう。

せめて、Qちゃんのレースの合間に、アクセントとして、男子のトップ争いにもひんぱんに画面を切り替えていたら、Qちゃんのレースの印象も変わっていたと思うし、男子のトップランナーと彼女の走りとの比較という楽しみも出来たと思う。

しかし、今回教えてもらったのは、マラソンにおいて、記録と勝負とどちらが大事かということである。いうまでもなく、他ののランナーとの勝負こそが、マラソンの醍醐味だったことを思い知らされた。「記録への挑戦」そのものが目的のレースがいかにつまらないものかに気づかされた。記録とは結果であり、目標にあらず、である。

最初に書いたように、これが快挙であることは否定しない。来週のシカゴ、来月のニューヨーク、東京。そして来春の大阪、名古屋、ロンドン、ボストン、ロッテルダム・・・。だれがこのタイムを破るのかが、焦点となろう。

Qちゃんの次のレースが、時計相手でなく、ランナーが相手の勝負であることを望む。彼女と勝負ができるランナーも、いずれは出てくるはずだ。

今、Qちゃんとともに、トレーニングしている、あの女性だ。

(最後の1行、どなたの事かおわかりだろうか?
当時、僕はケルン在住の日本人女性とネットを通じて交流していた。彼女より、ドイツ国内でのこのレースの評判を教えていただいた。)


ドイツ在住日本人の見た、ベルリンのQちゃん
at 2001 11/10 00:19

最近、イチローや新庄のプレイをアメリカのテレビはどう伝えたか、実況中継を訳して分析を試みた本が出たようである。(僕は未読)

それと少し似たようなことをしてみようか。ドイツはケルンに住む日本人主婦のホームページを訪れ、彼女に、
「ベルリンマラソンを知ってますか。」
と訊ねたところ、
「朝早起きして、見ました。」
というレスがありました。(現地時間で、朝9時よりスタート。)

以下、掲示板でのやりとりをまとめてみました。

フジテレビは国際映像を無視し、日本からもちこんだQちゃん専用カメラで、終始Qちゃんの走る姿のみ映したが、現地の放送局は、当然ながら、男子のレースもちゃんと映していた。
「日本から、タカハシ専用の取材班が来ている。」ということは、現地のアナもしきりに口にしていたそうである。

日本から来たテレビカメラは、Qちゃんばかり映して、男子のレースはほとんど無視したことを伝えると、不思議に思ったようだった。

「(尾方選手の)4位なら立派な成績だとおもうし、(実際、彼のベストタイム)男子の選手の健闘ぶりもきちんと報せたうえで、
『さあ、次は女子だ。高橋選手もがんばれ』
という中継をすべきではなかったのでは?」
というレスが戻ってきた。

それと、日本のテレビでは映らなかったシーン。男子の一般参加のランナーの1人のひじが、Qちゃんのペースメイカーのひじに当たり、あわや殴りあいとなるか?と思われるシーンもあったという。

今回のベルリン、日本企業がスポンサーとなっていた。そのこと自体は、別に珍しい事ではない。これまでにも、海外マラソンのナンバー・カードに、日本企業の名前が載ることはあった。しかし、それは、当然、「RIKOH」とか「mazda」とか、横文字表記だった。今回、ナンバーカードには、日本語で「大和証券グループ」の文字が。現地在住の日本人の皆さんは、さぞ驚くだろうと思っていたが、彼女も驚いていた。日本人女性ランナーが、世界最高記録で優勝した大会の記念品として、日本語入りのナンバーカードは、地元の市民ランナーたちにも歓迎されただろう。

途中までQちゃんを引っ張っていたペースメイカーのインタビューもあり、彼女の凄さを語っていたというが、ペイスメイカーの肉声がテレビの電波に乗るなんて、日本では考えられないことだ。つい、こないだまで、日本で行われる国際マラソンには、ペースメイカーはいない事になっていた。実際はいるのに。この点は、また別の機会に。

過去のベルリンの優勝者から、Qちゃんを絶賛するコメントがあったというが、
「私は、あまりマラソンには詳しくなくて、外国人のランナーはあまり知らないんです。」
ということで、誰かはわからず。ドイツ人の女性ランナーで過去にベルリンで優勝したのは、ウタ・ピッピヒとカトリン・ドーレ。どちらかだろうか?もしかしたら、ベルギーのマルレーン・レンデルスだったかも。シドニーで、スタートからいきなり飛び出し、途中で追いつかれ、リタイアした、あの、大柄なフォームの女性だと言えば、ピンとくる人も多いはず。

Qちゃんが世界最高記録を出せるか否かが、現地の実況中継でも、メインテーマだったようで、シドニーの映像も流しながら、
「タカハシは、暑さにも雨にも強風にも強い、弱点の無いランナー」
と紹介していたようである。

そして、後半の、彼女が゛苦しそうにまばたきをしながら走っていたシーンでも、現地の実況では、顔をしかめているのは
「向かい風のせいです。この強風でもペースが落ちません。」
としていた。日本でテレビを見ていた僕は、
「スタミナ切れを起こしたか?」
と思ったのだが。

そして、世界で初めての、女性ランナーの2時間19分台でのゴール。これについては、もう説明不要であろう。たとえ、一週間後に、18分台が出ても、「初めて破った」という栄誉は不変だ。

今回の実況の模様を伝えてくださった、kristyさんは、英国人の夫とドイツに住んでらっしゃる方である。夫婦の会話は、当然英語。彼女自身はドイツ語は苦手とのことで、ドイツ語の実況を、ご主人が英訳して彼女に聞かせ、それを彼女が日本語に訳して伝えてくださったのだ。もしかしたら、若干、ニュアンスが変化しているかもしれない。しかし、この話を聞く限り、今回のフジテレビの実況は、やっはり、「大きなお世話」だったと言ってしまおう。何も、「Qちゃん独占撮影カメラ」など用意しなくても、現地放送局の映像を見ながら実況する、翌週のテレビ東京のシカゴマラソン中継の様式で十分だったではないかと思う。

来春のボストンマラソン、Qちゃんと、シカゴの優勝者ヌデレバとの直接対決が見られるのでは?と、早くも期待を集めている。しかも、その中継をフジテレビが行うという噂も既に出ている。今度は、「ボストン国際女子マラソン」
とならぬ事を祈るのみである。

kristyさんのご協力に感謝します。




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