落葉松亭日記

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五輪で中国経済失速?

2008年04月10日 | 政治・外交
 世界各地で行われる聖火リレーが躓いている。「大紀元」ニュースでは「せい火」とわざわざひらがなで書いている。「聖」なる字はとても使えないという考えなのだろう。
 五輪招致で支那の近代化アピールと経済加速を目論んだにもかかわらず、チベット騒乱をきっかけに戦後中共がとってきた独裁政治の非道が世界中に知れ渡った。経済もこのところ失速してきているという。
「宮崎正弘の国際ニュース・早読み」 平成20年(2008年)4月10日(木曜日)弐 通巻第2151号 より
中国の五輪難題は、すでに次の人事確執に収斂しつつある
北京五輪後、責任転嫁の主導権争いが爆発するだろう

 上海株式は絶頂から44%もの暴落を記録している。
 チベット争乱の影で、もっと深刻なのは中国経済の失速なのである。
 昨年10月16日が上海株のピークだった。指数は6092.05-
 昨日(4月9日)のそれは3413.9。じつに44%もの暴落。4月9日一日だけでも5・5%の下落を記録した。
 北京五輪の責任者は習近平。なにしろ太子党のボスであり、江沢民の庇護を受け、上海派を代弁する。
 胡錦濤が後継を託したかった李克強をだしぬいて国家副主席にも就いた。
浙江省書記から上海市書記、そして政治局常務委員へと三階級特進。さらには四年後に党大会で胡錦濤のあとを襲うという設定されたコースに乗ったはずだった。
 そのために栄耀栄華の北京五輪を大成功せねばなるまいと、その首座に輝いた(共産党五輪責任者)。
途端に雲行きが怪しくなり、チベットで抗議活動がおこった。当局は血の弾圧で対応し、多くのチベット人が虐殺され、聖火リレーは世界各地で寸断された。「開会式ボイコット」はいまや西側の合い言葉となった。

 サンフランシスコの聖火リレー(日本時間10日午前六時頃)、第一走者が点火して倉庫に隠れ、そのまま装甲車のようなクルマに乗ってドロンしてしまった。コースは突如変更され、隠密作戦。
 だれの見物のいない道路をときどきバスから降りて走り、またバスに乗って雲隠れという醜態。
沿道の見物人もあっけにとられるという不名誉な仕儀となった。中国のメンツは丸つぶれである。
 五輪前に聖火リレーの寸断、開会式は西側から殆ど出席がない。五輪会場は合計200万人の私服も動員されて警備に当たり、北京市は警察国家となる。習近平は、責任を北京オリンピック委員会の劉棋におっかぶせるであろう。
 ▲北京五輪で景気は上向く筈ではなかったのか?
 経済失速の責任は?
 北京五輪をまたずに経済の失速が明確に始まっている。責任をかぶるのは温家宝首相だろう。
 すでに温家宝首相の失脚は時間の問題であり、降板が予定されていると北京の情報筋は推測している。なぜなら温家宝は金銭スキャンダルの絶えなかい夫人と、形式的な離婚をしたが、「前夫人」は、いまも、「平安保険」との異常な癒着状態にあり、息子の陳松(ビジネスネーム)は、ありとあらゆるインサイダー取引や腐敗スキャンダルの影にでてくるからだ。
 副首相は四人いる。実力者は王岐山(北京前市長代理)だが、広東からきた野心家の張徳江らが虎視眈々と次のポストを狙っていて、遠く重慶にとばされた薄キ来や、ライジングスター王洋(広東省書記)らも、そのつぎを狙っている。
 北京五輪直後から、中国は人事をめぐる熾烈な権力闘争に陥るだろう。
△ △
(読者の声1)北京五輪開会式は独裁者の集まりになりつつありますね。昨日発売の『サピオ』の特集号は、そういう意味で読み応えありました。パリでもロンドンでも聖火ランナーに辞退者がでました。インドでも出た。しかるに長野では萩本欽一とか福原愛とかが聖火をもって走るそうですが、恥ずかしくないのでしょうか?(UU生、埼玉)

(宮崎正弘のコメント)
北京五輪関係者に聞くと「我々のこれまでの努力、血のにじむ練習を無にする気か」とくってかかられます。個人の利益と自由と民主主義が危機にさらされている大局的危機感とは違う筈ですが。その意味で今月アルピニストの野口健氏が『ボイス』に書いた北京五輪批判、どんな政治論文より説得的でした。
 それにしても、聖火ランナーになることが名誉から不名誉になるなんて。この土壇場で。北京五輪、大丈夫ですかね。

(読者の声2) 民主党の執拗な反対で日銀総裁が空白のまま、とうとう白川さんという大学の先生が副総裁から昇格したのですが、これで日本経済は大丈夫なのですか。不安でたまらない。最近、先生の経済政策批判がきけないものですから敢えて投書します。(兜町太郎)

(宮崎正弘のコメント)
武藤さんの日銀総裁を阻止したのは政治的には小沢民主党ですが、論拠は「天下り」が行けないというそれだけの理由です。
しかし、はるか以前から武藤氏の日銀総裁就任に一貫して、政策的に理論的に反対してきた人がいます。エコノミストの植草一秀氏です。  さて日銀新総裁に棚ぼたで座ってしまった白川さん、或る意味ではお気の毒です。
経済、金利政策の理論を象牙の塔で夢想するならいざ知らず、学者馬鹿には、所詮、現場の経済は分かりませんから、日本経済が円滑に回復するなどと楽天的な事態を望まない方が良いでしょう。
 バーナンキFRB議長は学者出身ですが、抜きんでたリーダーシップがあり、数百の海千山千の議員のまえでも自信を持って証言ができ、市場を説得できる。
 国会でぼぞぼそと何を喋っているか分からない人。くわえて財務担当の大臣が「日本経済は二流になった」と平然とのべて、ではどうするのか、という対案の提示がない。野党の戦術優先、国益無視路線といい、右往左往するだけの閣僚といい、驚くべきリーダーを我々はいただいているようです。
 1950年代から支那はチベットを軍事侵略しチベット600万人口のうち120万人虐殺した。それが今も続いているわけだから侵略現行犯である。なにかにつけて「日本は過去の歴史に学ぶべき、靖国参拝はやめろ」と云ってきたが二枚舌も甚だしい。支那に対する抗議は「人権弾圧に反対しよう」というレベルだが、仮にダライ・ラマとの「対話」が実現したところで根本解決にはならず、やがてチベット、ウイグル、台湾独立運動などが顕著になるかも知れない。いずれにしろ2008年も穏やかにはすみそうにない。IOCも北京五輪の中止か、あるいは会場を分散して開催するのか検討すべき段階にきているのではないか。