片手袋研究のヒントになるようなものって、思わぬところにあるものです。今日は最近読んだ本の中から、片手袋について考える上で非常に大きなヒントになった本を二冊ご紹介致します。
こちらは手のひらサイズの可愛い本ですが、かなり直接的に片手袋研究と通じる本でした。
まず著者の菅俊一さんが撮影した日常生活の何気ない一コマが掲載されています。写真をじっくり眺めてからページをめくると、今度は菅さんがその風景の中に見出した小さな違和感が綴られています。それが60回ほど繰り返される本当にシンプルな構成。
でも読み終わって思ったのは、「幾つ答えを知っているかより、幾つの疑問を抱けるかが重要なのではないか?」という事。
例えばこの片手袋がある風景に、幾つの疑問を感じることが出来るか?片手袋研究を十数年続けてきて、結局当初より分からない事は多くなってしまったのですが、疑問の多さはそのまま世界へアプローチする道筋の多さに繋がるのかもしれません。
「観察」という言葉は時に、観察者と観察の対象者との間に壁が出来るような冷たい響きを持ってしまいますが、菅さんの観察は疑問を持った自分自身にも目が向けられているような、そんな印象を抱く本でした。
こちらは地元でご縁のある、東京大学大学院医学系研究科講師の孫大輔先生によるご著書です。
先生は僕の地元で屋台でコーヒーを配ったり、映画会や落語会を開催したりしているのですが、それらすべてが医療的課題に取り組む為にやられている、とお伺いしておりました。しかしその真意をきちんと理解していなかったので、新しく発売されたこちらのご著書を手に取ってみたのです。
そしたらなんと、医療や社会に対する問題提起は勿論、片手袋研究にめちゃくちゃ通じる話が満載なので驚きました!
例えば僕はこのような片手袋が発生するまでにどんな物語があったのか、論理的(片手袋分類図やこれまでに積み重ねた知見)・感覚的(物語を妄想・想像してみる)両面から追及してきた訳です。しかし片手袋が発生したその現場を目撃したわけではないので、どれだけ精度を高めていっても、最終的には不確かな部分が残されます。
こうした患者の抱える「不確かさ」をも考慮するような医療者のアプローチとして、いくつかのモデルが提唱されています。(中略)その基本をなすのは、患者の「物語(ナラティブ)」に耳を傾け、患者が病気に関してどのような「不確かさ」を抱えているのかを理解する事でしょう。(P.206)
たとえばこの部分の「患者」を「片手袋」に変えてみれば、殆ど僕が取り組んできた問題意識と一致してしまうのです。
なので本著が「不確実性」に耐える方法として取り上げる様々な「対話」の事例は、医療だけでなくそのまま片手袋研究にも(そして社会問題全般にも)大変参考になるものでした。
これから殆どの人が経験する問題について書かれていながら、映画や哲学を例に読みやすくまとめられておりますので、皆様にお勧めします。
当たり前の話なんですけど、片手袋を研究していく上で参考になる先行の片手袋研究などなかったので、映画や本やアートなど、様々な分野の考え方を取り入れながら研究を進めてきました。
それでも今回みたいに、医療問題からヒントを貰えるなんてやはり驚きでした。これからもジャンルを問わず、様々な表現、考え、に触れていこうと思います。