日本人の宗教観の特徴は八百万の神に対してほどほどの距離感をもった信心のあり方にあるようだ。仏壇でも神棚でも手を合わし、ご神体が山であろうが巨木であろうが巨岩であっても、素直に手を合わせるゆるゆるの宗教観がどれほど日々暮らす上で快適で素晴らしいことか。どんなに美味しそうな料理でも戒律に反する食材が使われていると食べられなかったり、毎日何度もお祈りを捧げなくてはいけない宗教と比較すべくもない。
カシオ社から発売されたプレイヤー・コンパスという腕時計がヒットしているらしい。プレイヤーはスポーツのPlayerではない。敬虔な祈りを捧げるPrayer向けのコンパス付き時計だ。
人気の理由はこの腕時計のボタンを押すと世界中どこにいても聖地メッカの方角を示してくれるし、お祈りの時刻を教えてくれる機能だとか。お祈りの時刻は毎日定時ではなくて、太陽の位置によって決まるので、毎日5回、メッカの方向へのお祈りが欠かせないムスリムにとってとても便利らしい。西暦だけでなくヒジュラ暦(イスラム暦)での日付表示もできるようだ。断食などの宗教行事はヒジュラ暦に沿って行われるので重宝するらしい。
現在、地球上に16億人のイスラム教徒がいて、アジアのインドネシア、パキスタン、インド、バングラデシュなどにもイスラム教徒が多い。2030年には世界人口の26%がイスラム教徒という予測もある。その一大宗教をビジネスの対象として新製品を生み出したカシオ社もすごい。しなやかな宗教観の日本ならではの製品かもしれない。イスラム教の戒律により合法とされるハラール(Halal)に対応した食品の製造やサービス提供も増えている。大きなビジネスチャンスのあるイスラムに、ゆるゆる宗教観の日本人の強みが大いに発揮されそうだ。