夕方、カミさんから「大漁寿司」の特上巻きが食べたいと、メールが入る。腹水を4リットルほど抜いてもらったら、一気に食欲が出たようだ。会社を終えて、近所の「大漁寿司」に寄って病院に向かおうとしていたら、先に病院に着いた息子から「僕が寿司を買いに行く」というメール。
病院に着いたらまだ息子は戻っていなかった。病院食が配膳されたけど、息子がなかなか戻ってこなかったので、病院食を食べたらと勧める。
食べ終えてしばらくしたら息子夫婦が病室に戻ってきた。聞くと、近所の大漁寿司も他のチェーン店も月曜日は休日で、チェーン店のうち一店舗だけ開いていたので買えたとのこと。巻き寿司が食べたい、ではなくて、大漁寿司の巻き寿司が食べたいとカミさんが特に「大漁寿司」を指名したことに息子夫婦は忠実に応えようとしてくれたから、遅くなってしまったようだ。岡山市内を車で走り回って手に入れた寿司を、すでに満腹になっていたカミさんは、せっかくだからと、一切れだけ飛び切り美味しそうに食べた。遅れたことを詫びながらも、その笑顔を見て息子夫婦から笑顔がこぼれた。
チェーン展開している庶民的な「大漁寿司」は、元気だった頃、カミさんが自転車で買い物のついでによく買ってきていた寿司だ。だからこそ、食欲が出た今、急に食べたいと言い出したはず。そのリクエストに応えるために、夜の岡山市内を車でかけずり回って買ってきてくれた子供夫婦。そしてお腹いっぱいなのに巻き寿司の一切れだけを美味しそうにつまみ、笑顔で「ありがとう。美味しかったあ」と喜ぶカミさん。
「大漁寿司」の巻き寿司のお陰で、家族の絆、愛情をあらためて感じさせてもらった。