暗闇で
うっとうしい梅雨空のような、倦怠感が吹き飛ばすされた感じだ。
今日私の心は生気がみなぎっている。元気が出ている。気がたかぶっているのだろうか。
もあーっとしたあのけだるさが全くない。心はさわやか一色。
倦怠感がなくなれば、気分がこうまでちゃんとするものか、と感心したのは日中の話。
めったに飲まないコーヒーを飲んだ。濃い緑茶も飲んだ。そのせいか、それとも昼間の元気のせいか、床について4時間にもなるのに、なかなか寝つけない。
いつもは気にならない、腕時計のチッチッチが今日はやけによく聞こえる。よく聞こえるというよりは、いつもより大きな音を立てながら時を刻むようだ。
もう4時。あと30分もたてば夜が白む。床について寝いるまで4時間もかかるとはいったいどういうことだ。電灯を消して真っ暗闇の室内で、目だけきょろきょろさせて漏れてくる街灯の明かりをぼんやり眺めて時をやり過ごす。幾度となく寝返りを打ちながら悶々とする。
だが、頭の中は猛烈なスピードで回転している。3人乗りのボートを買って、それで海に出たらと、先ほどからしきりに考えている。
原則は、てこぎ、だが、ひょっとして船外機をつけたら、かなり沖まで出られるのではなかろうか。まずは防波堤でカサゴを釣るのに使うとしても、穏やかな日を選んで少し沖に出れば、鯛もアジもキスもつることができるだろう。テトラを牛若丸のように飛びわたる危険も無くなってよい。それに手漕ぎのために腕を使い、力を入れてこぐことによってストレスを発散できるように思う。よし、夜が明けたら、釣り道具屋を回っで値段と性能と危険性などを調べてこよう。
さて、ゴムボートをかって、それを使いきるまで、利用できるだろうか。釣りに行かなければ全く無駄になる。それどころか、かさばって保管に困る。きっと女房はぐずぐず言うだろう。そうなったらどうするか、いずれにしても説得力ある理屈を考えなきゃならん。女房っていうものは口うるさいもんだから、まともに相手にしていたら、こちらが疲れる。俺だって自分のしたいことぐらいさせてもらわなきゃ。
えーい。いつもはかわいいいびきなのに、今夜はどうしてこんなに大きいいびきをかくんだ。
女も男からこう思われるようになったらおしまいだ。女の色気のかけらもないよ。本当にうるさいなあ。起こそうか。いやいや昼間の立働きで疲れているのだろう。そのままでいいや。
ところでボートを買ったら、付属品が必要になってくる。いかりがあればある程度重くないと係留の用をなさないが、そうかといって重いいかりを付けると自宅からおりたたんで持っていくボートの重さが倍増して大変だ。海で適当な石を見つけて、それを使い、帰りにはすてればいじゃないか。それ、そうだ。けどもし錘である石が綱から外れたどうしよう。それは考えておく必要がある。もしそうなったときのために、トランシーバーを持っていったらどうだろう。トランシーバーで救助を求めたとき、受信してくれる人が陸上にいなければ役に立たないが、…
トランシーバーより携帯電話を持っていったらよいだろう。先日NTTに聞いたら関西全域はほぼカバーするというから、これなら大丈夫。ところで110番できるのだろうか。海上のことは海上保安庁かも。いや、漁協にコネをつけておけば大丈夫だろう。それにしても大袈裟な。事故を起こしたら、みんなの笑いものになるだろう。
そしたら女房は「だから言わないことじゃないでしょう。魚釣りに使うぐらいのお金を出せばもっと活きのよい高級魚はたくさん買えますよ。それに嫁入り前の娘を抱えて恥ずかしくて。隣の奥さんにも会わす顔がないでしょう。自分のことばかりせずに、もう少しみんなの手前というもの考えたら。一通りのことを言うだけ言うたら口をへの字に結んで、ふてくれることになるだろう。それも困ったことだ。ああ、何をするにも面倒なことが多い、人の世だ。
ところでいったいどうすりゃ眠れるというのだ、我がことが、こんなにままならぬとは。さあ今度こそ何も考えないで目をつぶってみる。いつの間にか寝入ったのだろう。
目が覚めたら子供達は学校へ行ってしまっていた。
うっとうしい梅雨空のような、倦怠感が吹き飛ばすされた感じだ。
今日私の心は生気がみなぎっている。元気が出ている。気がたかぶっているのだろうか。
もあーっとしたあのけだるさが全くない。心はさわやか一色。
倦怠感がなくなれば、気分がこうまでちゃんとするものか、と感心したのは日中の話。
めったに飲まないコーヒーを飲んだ。濃い緑茶も飲んだ。そのせいか、それとも昼間の元気のせいか、床について4時間にもなるのに、なかなか寝つけない。
いつもは気にならない、腕時計のチッチッチが今日はやけによく聞こえる。よく聞こえるというよりは、いつもより大きな音を立てながら時を刻むようだ。
もう4時。あと30分もたてば夜が白む。床について寝いるまで4時間もかかるとはいったいどういうことだ。電灯を消して真っ暗闇の室内で、目だけきょろきょろさせて漏れてくる街灯の明かりをぼんやり眺めて時をやり過ごす。幾度となく寝返りを打ちながら悶々とする。
だが、頭の中は猛烈なスピードで回転している。3人乗りのボートを買って、それで海に出たらと、先ほどからしきりに考えている。
原則は、てこぎ、だが、ひょっとして船外機をつけたら、かなり沖まで出られるのではなかろうか。まずは防波堤でカサゴを釣るのに使うとしても、穏やかな日を選んで少し沖に出れば、鯛もアジもキスもつることができるだろう。テトラを牛若丸のように飛びわたる危険も無くなってよい。それに手漕ぎのために腕を使い、力を入れてこぐことによってストレスを発散できるように思う。よし、夜が明けたら、釣り道具屋を回っで値段と性能と危険性などを調べてこよう。
さて、ゴムボートをかって、それを使いきるまで、利用できるだろうか。釣りに行かなければ全く無駄になる。それどころか、かさばって保管に困る。きっと女房はぐずぐず言うだろう。そうなったらどうするか、いずれにしても説得力ある理屈を考えなきゃならん。女房っていうものは口うるさいもんだから、まともに相手にしていたら、こちらが疲れる。俺だって自分のしたいことぐらいさせてもらわなきゃ。
えーい。いつもはかわいいいびきなのに、今夜はどうしてこんなに大きいいびきをかくんだ。
女も男からこう思われるようになったらおしまいだ。女の色気のかけらもないよ。本当にうるさいなあ。起こそうか。いやいや昼間の立働きで疲れているのだろう。そのままでいいや。
ところでボートを買ったら、付属品が必要になってくる。いかりがあればある程度重くないと係留の用をなさないが、そうかといって重いいかりを付けると自宅からおりたたんで持っていくボートの重さが倍増して大変だ。海で適当な石を見つけて、それを使い、帰りにはすてればいじゃないか。それ、そうだ。けどもし錘である石が綱から外れたどうしよう。それは考えておく必要がある。もしそうなったときのために、トランシーバーを持っていったらどうだろう。トランシーバーで救助を求めたとき、受信してくれる人が陸上にいなければ役に立たないが、…
トランシーバーより携帯電話を持っていったらよいだろう。先日NTTに聞いたら関西全域はほぼカバーするというから、これなら大丈夫。ところで110番できるのだろうか。海上のことは海上保安庁かも。いや、漁協にコネをつけておけば大丈夫だろう。それにしても大袈裟な。事故を起こしたら、みんなの笑いものになるだろう。
そしたら女房は「だから言わないことじゃないでしょう。魚釣りに使うぐらいのお金を出せばもっと活きのよい高級魚はたくさん買えますよ。それに嫁入り前の娘を抱えて恥ずかしくて。隣の奥さんにも会わす顔がないでしょう。自分のことばかりせずに、もう少しみんなの手前というもの考えたら。一通りのことを言うだけ言うたら口をへの字に結んで、ふてくれることになるだろう。それも困ったことだ。ああ、何をするにも面倒なことが多い、人の世だ。
ところでいったいどうすりゃ眠れるというのだ、我がことが、こんなにままならぬとは。さあ今度こそ何も考えないで目をつぶってみる。いつの間にか寝入ったのだろう。
目が覚めたら子供達は学校へ行ってしまっていた。