3月の終わり。学童保育所の退所式が終わった後、スタバデビューをしようとショッピングモールへでかけた。昨年の誕生祝いに娘からスタバカードを貰っていたのだ。正直言うとスターバックスは初めてではない。家内と一度だけ入ったことがある。しかし10年以上も前のことで、今度がほとんど初体験のようなものだ。
以前に行った時、メニュー表を見て戸惑った。コーヒーだとは思うが、英語にカタカナが併記されている飲み物 . . . 本文を読む
もう遠い過去になった人物による回想記である。人となりについては、占領軍と渡り合い敗戦後の混乱した国を安定と復興に導いた宰相であるとか、一方で貴顕を縁戚に持ち傲慢で不遜な政治家だとかの毀誉褒貶がある。ただ、当時は日本の中にもう一つの国があるような状況だったから、外交官出身の彼は宰相として適役だったのだろう。
回想記は開戦前までの外交官としての活動、敗戦後のGHQとの交渉、そして国内の政治活動を . . . 本文を読む
女優の高峰秀子は読書家であるが小説は読まなかった。養女の斎藤明美によると「自分が映画というʺうそʺの世界で仕事をしてきたせいか、作り物は好きになれない」と言っていた。彼女は自らの意思とは関係なく5歳から俳優の仕事をし、また養母の芸名である高峰秀子自身を演じてきた。彼女の生涯の望みは生の自分に戻り、普通の生活を送ることであった。
だから高峰が小説を好まなかったのはよく理解できる。しかし例外があ . . . 本文を読む
「能-650年続いた仕掛けとは」 安田登著(新潮新書) 著者は下掛宝生流の能楽師。
本書の冒頭に、能が長年にわたって続いてきた理由として「初心」と「伝統」が挙げられている。人口に膾炙する「初心忘るべからず」という言葉は、観阿弥・世阿弥親子が残したもっとも有名な言葉だそうである。私達はそれを、物事を始める時の初々しい気持ちを忘れてはならないという意味で理解している。
しかし著者は「初」の . . . 本文を読む
世界の五大陸をバイクで走破した彼の最後の旅、ユーラシア大陸横断の紀行である。
2009年、ポルトガルのロカ岬をスタートし、南欧からイスラムの国を抜け、中央アジア、シルクロードを通って中国を西から東へひた走る。そして最後はロシアのウラジオストクへ。4か月、3万キロに及ぶ旅である。
土埃が舞い上がる沙漠を突っ走り、原野を駆け抜ける。そして酷寒の地でブリザードが吹く中、アイスバーンを . . . 本文を読む
「働く女子の運命」 濱口桂一郎(文春新書)
今でこそ男女共同参画社会の実現が目標となり、雇用面でも男女雇用機会均等法が施行されているが、少し前までは女性は労働力の主要な担い手とは考えられていなかった。
明治以降の日本で、長いあいだ女性は短期雇用が当然とされていた。我が国の特徴とされていた終身雇用制度は、家計を支えている男性を前提にしている。女性が社会で働くことは、昔は修養として . . . 本文を読む
池上彰が東京工業大学の先生方と行った、教養に関する公開対談・鼎談集である。池上彰は「週刊子どもニュース」で難しい社会の仕組みをわかり易く説明したことでブレイクした。しかし国立大学の教授までしているとは知らなかった。
本書は基本的には理工系の学生を念頭に置いた本である。池上は教養とは歴史から物理学まで様々な分野の知の体系を学ぶことで、世界を知り、自然を知り、人を知ることであると . . . 本文を読む
日本人は外国からどう見られているかを非常に気にする国民だそうである。外国人から見た日本論といえば、例外を除いてまずは明治初期に遡る。
日本が開国してから多くの外国人が来日し、様々な日本滞在記を書いた。その多くは外交官や政府のお雇い外国人である。それらの本を読むと当時の日本社会の様子が彷彿として楽しい。もちろん批判的に見ている面もあるが、おおむね好意的である。
後進国であ . . . 本文を読む
絵画を中心に、日本人と西洋人の美意識と技法の違いを検証した論考集である。
私は美術については門外漢なので本の解説は出来ないが、なるほどと思ったことを2点だけ紹介する。
その一つが絵文字、或いは文字絵。携帯電話やブログなどでよく絵文字が使われている。私はお遊びと思っていたが、これは日本の伝統にもとづくものだそうだ。私たちが子どもの頃に書いた「へのへのもへじ」もそうである。平仮名で書い . . . 本文を読む
「野菊の墓」を読んだのは高校生の時だったと思う。悲恋の物語である。「伊豆の踊子」「潮騒」と並んで、若いスターがヒロイン役をつとめる青春映画にもなった。
この小説を再読しようと思ったのは、雑誌に伊藤左千夫の記事があったからである。また以前、ある方のブログで矢切がこの小説の舞台であることを知った。千葉県の矢切というと九州の人間にはなかなかピンとこない。映画の「男はつらいよ」の冒頭で寅さんが江戸川 . . . 本文を読む