田園都市の風景から

筑後地方を中心とした情報や、昭和時代の生活の記憶、その時々に思うことなどを綴っていきます。

「回想十年」新書版(毎日ワンズ)  吉田茂

2023年03月06日 | 読書・映画日記

 もう遠い過去になった人物による回想記である。人となりについては、占領軍と渡り合い敗戦後の混乱した国を安定と復興に導いた宰相であるとか、一方で貴顕を縁戚に持ち傲慢で不遜な政治家だとかの毀誉褒貶がある。ただ、当時は日本の中にもう一つの国があるような状況だったから、外交官出身の彼は宰相として適役だったのだろう。

 回想記は開戦前までの外交官としての活動、敗戦後のGHQとの交渉、そして国内の政治活動を記している。私自身はあまり好きではない人物だが、ものの見方考え方には教えられるものがある。外交官の特質なのだろうか、彼の発想の根幹にあるのは現実主義、そして平衡感覚であるように思う。親英米派として拘禁されたことがあり、マッカーサーとしても信頼できるカウンターパートだった。

 本書を読んでの感想は独善的、排他的な教条主義や精神主義は国を危うくするということである。明治初期まで、科学技術の遅れと国の非力という冷厳な事実を直視して、米欧諸国に追いつこうと行動していた国家が、隣国との戦争を経て増長していき破綻にまで至った歴史に学ばなければならない。こう書くと何だか司馬遼太郎の作品世界になってくる。彼は吉田茂をどう評価していたのだろうか。

   

 雛祭りは卒業式の季節。ショッピングモールでは、制服の胸にコサージュをつけた高校生や、卒業袴の女子大生がフードコートで談笑する姿を見かけます。みな楽しそうに笑っています。進学や就職まで、もう少し時間があります。きっと、新しい世界を前にして気持ちがふわふわしているのでしょう。私にもそういう時がありました。春の盛りに我知らず昂揚していた当時の気分を思い出しながら、ひとり片隅でコーヒーを飲んでいます。

 

 

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