絵画を中心に、日本人と西洋人の美意識と技法の違いを検証した論考集である。
私は美術については門外漢なので本の解説は出来ないが、なるほどと思ったことを2点だけ紹介する。
その一つが絵文字、或いは文字絵。携帯電話やブログなどでよく絵文字が使われている。私はお遊びと思っていたが、これは日本の伝統にもとづくものだそうだ。私たちが子どもの頃に書いた「へのへのもへじ」もそうである。平仮名で書いた五重塔などの例が紹介されている。
また絵の中に文字を隠すお遊びもある。徳川家に伝わる国宝の「初音蒔絵手箱」には、源氏物語の「初音の巻」に因んだ装飾模様が描かれている。その絵の中に源氏物語に出てくる歌が隠されている。当時の人にとって源氏物語は良く知っている題材だろうが、これは教養がないと読み解けない。
もともとアルファベットと違って、中国や日本では絵と文字は相性がいいそうだ。書画と一口に言われるくらいである。書自体が美術として鑑賞の対象になっている。
もう一つは「洛中洛外図」などにおける複数の視点である。西洋の絵画は風景でも一つの視点から描かれている。だが「洛中洛外図」では町の風景は斜め上から描かれているが、人物は水平方向の視点から描かれている。この様な視点の移動は、日本絵画にきわめて多く見受けられる手法だという。「源氏物語絵巻」などの例が紹介されているが、確かに人物だけを取り出してみると、真横からみて描かれているようにも見える。
本書には、ほかにも美術鑑賞の参考になることが書かれている。素人でも一読の価値はあると思う。
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