先月の「週刊新潮」で横尾忠則が谷内六郎との交流を書いていた。サイケデリックな前衛画風で知られる彼と童詩画の谷内との取り合わせは奇異ではあるが、二人は家が近くで親しく行き来していたそうである。家の本棚に谷内の小さな画集があった。
「谷内六郎展覧会」 新潮文庫。
文庫のカバー絵は昭和31年発行の「週刊新潮」創刊号の表紙を飾ったものである。題して「上總の町は貨車の列 火の見の高さに海がある」。以来、亡くなるまで25年にわたり週刊新潮の表紙絵を描き続けた。年配の方なら書店の店頭で彼の絵を見たことがあるだろう。
童詩画とは谷内が自分の絵を表した言葉である。少年期から喘息で病弱だった谷内は、記憶にある子どもの心象風景を描いた。彼は手記で「極端な内気で押し入れに入って幻燈をうつす風の絵かきです」と述べている。「週刊新潮」には感謝しながらも、青い空ばかり要求されると横尾に愚痴をこぼしてもいる。
創刊号の絵は、療養のため滞在した千葉県の御宿風景を思い出しながら描いた。私は関東には全く土地勘がないが一度、所用で房総半島に行ったことがある。東京湾をぐるりと鉄道で半周し、木更津駅からは送迎の車で上総の丘陵台地を走った。車窓からの眺めは初めて見る景色であり新鮮だった。谷内の描いた御宿からも近い。
ところで、写真のボロボロになった文庫本。座卓に本を置いたまま外出したら、室内で飼っていた愛犬が私の外出中に齧ったのである。いつもは大人しく留守番をしているのに、よほど虫の居所が悪かったようだ。一緒にあった図書館の借用本は背表紙を除いた三方をきれいに齧り取られていた。
おかげで図書館の本は現物弁償となった。図書館の職員は、本の汚損は時々あるが犬に齧られた本は初めてだと笑っていた。
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