天皇の想い女(おもいひと)となった黒日売ですが、当然、大后「石之日売命」の執拗な嫉妬からの死をも覚悟した仕打ちが、何時有るかもしれません。その危機が眼前に差し迫ってきております。一刻の猶予の余地もありません。今は、只、「三十六計」有るのみです。当然、天皇も、その辺りの事情を察知して、その計画の肩棒は担いだだろうと想像されますが。彼女の父親は、吉備海部直と云う姓(かばね)を持つ、吉備の穴海の大支配者です。娘である「黒日売」逃亡の手助けなんかは朝飯前です。
その黒日売が、秦人が切り拓た墨江之津より、父親の船に乗ったであろう黒日売の国「吉備」に還ります。それを「古事記」には、
“船出浮海”
と書いて、布那傳須流袁<フナデスルモ>と読しております。
ゆっくりと海に浮かぶクラゲのように静かなる船出を意味します。大勢の人に見送られての華々しい出航とは違います。人に気付かれないようなひっそりとした船出です。そのような光景がこの四文字から読みとることができます。
その密かなる船出を、天皇は高台に登って、見送ります。
この事実から、黒日売逃亡の計画を事前に天皇が察知していたのだと、私が推察したのです。是が天皇の戦術なのです。
ホームの柱の影でそっと涙を流したという女の男との別れを歌った流行り歌が過去にありましたが、まさに、その通りの絵がここでも展開されました。
吉備の穴海とは
その黒日売が、秦人が切り拓た墨江之津より、父親の船に乗ったであろう黒日売の国「吉備」に還ります。それを「古事記」には、
“船出浮海”
と書いて、布那傳須流袁<フナデスルモ>と読しております。
ゆっくりと海に浮かぶクラゲのように静かなる船出を意味します。大勢の人に見送られての華々しい出航とは違います。人に気付かれないようなひっそりとした船出です。そのような光景がこの四文字から読みとることができます。
その密かなる船出を、天皇は高台に登って、見送ります。
この事実から、黒日売逃亡の計画を事前に天皇が察知していたのだと、私が推察したのです。是が天皇の戦術なのです。
ホームの柱の影でそっと涙を流したという女の男との別れを歌った流行り歌が過去にありましたが、まさに、その通りの絵がここでも展開されました。
吉備の穴海とは